第55話
「やっぱりヒロキくんか。たった2人でストーンアントに手をだした冒険者がいるって通報があったからこんなことになってるんだからね?まぁ、勝算があって手を出したんだろうけど、せめても事前に冒険者ギルドに連絡しておかないと…。普通の冒険者からしたらストーンアントの大群なんて脅威でしかないんだから」
そういう事。だからこんなに冒険者がいっぱいいるのね。
「この巣から1匹も取り逃したりしてないからそれに関しては心配しなくて大丈夫な筈だよ」
「ヒロキくんのことだから本当に巣を殲滅しちゃったんだろうけど。一応確認しておかないと行けないから。案内してもらって良いかな」
迷惑かけちゃったわけだし、案内ぐらいやらないとまずいか。
開けた宝箱を見られると、絶対中身はなんだったのかとか。ストーンアントの巣には本当に宝箱はあったって話が広がって、無謀に挑戦する冒険者が増えたりとかしたらやだな。
「ところで。わざわざストーンアントを狙った理由ってなんで?」
「手っ取り早く魔石を大量に集めたかったから」
俺のストーンアントを狙った理由に一緒に巣穴に入った冒険者のほとんどは、だとしても割に合わないだろうって顔をしてるけど。
カエデさんはなるほどねという顔をしていた。
俺がスクロール用に魔石を集めているって思ってるんだろうな。
魔石の消費が結構激しいからね。スクロールを作成するには。
その代わり妖術でもスクロール化しない限り魔石の質は関係ないから、俺がストーンアントに目をつけたと思ったんだろう。
今回は自分のスキルを強化するためだったんだけどね。
「ここが最後の小部屋です」
宝箱があった場所までたどり着いたが。
宝箱は既に消えていた。これで俺とパニーが黙っていれば宝箱があったことはバレないだろう。
コレで普通の冒険者からしたらストーンアントは更に敬遠されるはずだ。
「巣の最奥には宝箱があるって噂も一時期流行ってたけ…現実はそんなものはなかった訳だ」
カエデさんの言葉にほとんどの冒険者たちは落胆したような反応をしている。
もしあったとしても、あんた達の利益にはならないのになんでそんなに落ち込んでるの?
と思っていると。
ドワーフの冒険者が大声をあげた。
「待ってくれ!この壁微量だけどミスリルが含まれているぞ!」
は?確かにここはダンジョンだし魔法金属の鉱脈があってもおかしいことは無いけど…まじで言ってんの?
ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンと言った魔法金属と言われる金属たちは自然界には存在せず。
ダンジョンで生成される鉱脈を見つけるか、ゴーレム系の魔物を倒す。後は宝箱からインゴットを手に入れる。これぐらいしか入手手段が存在しない。
なのでこの世界で魔法金属を手に入れるのはかなり難しい。
どれもかなり出現率が低いし。
それにしても良くミスリルが含まれているってわかったな。
体力と鍛冶才能を持って生まれるドワーフだからこそか。
ランタンを壁に近づけて凝視してみるとほのかに緑色の部分があるかも?って思うぐらいで、ミスリルが含まれてるなんて全くわかんない。
ぶっちゃけ宝箱よりお宝見つけちゃったな。
ミスリル鉱脈を見つけるなんて。
正直これが知れ渡ったら宝箱よりストーンアントに手を出す連中が増えるぞ確実に。
「カエデさん。ドワーフが見間違えることは無いでしょうし。一刻も早くアディルさんにここの事教えた方が良いですよね?」
「ちょうどまだ家に居るはずだし。ヒロキくんに頼んでいい?私はここで採掘の指揮をとるから」
何時、ストーンアントのリポップと巣の再生が始まるかわからなからな。
1秒でも早く採掘を始める必要がある。
採掘によって削られた箇所の再生から始まるはずだし。突然ストーンアントがリポップしだして地獄絵図ってことにはならないだろう。
短くても1ヶ月ぐらいはリポップしないだろう俺の予想だけど。
サテツに早く進化の実を使いたいしちょうどいいな。
カエデさんが見ているのにネコババとかしようって考える冒険者もいないだろうし。
ネコババしたとしても鉱脈から手に入れたミスリル鉱石は不純物を取り除くために精錬する必要があるから、直ぐにバレるし。
この場はカエデさんに任せて大急ぎで家に向かった。
ノックもせずにドアを開けてリビングに向かう。
リビングではアディルさんとジュリアナさんが紅茶を飲んでいて。
サテツがそのお世話をしていた。
「ストーンアントの巣の最下層が含有率は低いそうですが。ミスリル鉱脈になってました」
予想外の報告にアディルさんとジュリアナさんは紅茶を吹き出した。
「後、サテツ!宝箱から進化の実がでたから進化できるぞ!」
流石のサテツも驚いたようで手に持っていたトレイを地面に落としかけていた。
「想像以上すぎる。ストーンアントの巣には宝があるとは昔から言われてたけど…」
「俺もびっくりしましたよ。今はカエデさんが指揮を取って採掘を開始しています。時間がもったいないですからね」
「それに関しては流石ね。いつまで採掘できるか分からないし。それにしても国王に報告したり一気にやることが増えた。その結果、発見者としてヒロキくんも王族と会うことになると思うから今から覚悟しておいてね」
ミスリル鉱脈が見つかったってなるとやっぱりそうなっちゃうか。
まぁ、もしやな奴だったらカエデさんにどうにかしてもらおう。
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