第368話:異世界転移者
※三人称視点※
「ここって……どこよ?」
白浜高校に通う2年生
その街は七瀬が住んでい場所とは何もかもが違う。建物が石で出来ていて、道を行き交うのは車じゃなくて馬車だ。
そして街を歩く人たちは、とても日本人に見えないし。全然今どきじゃない服を着ている――まるでファンタジーゲームの世界のように。
「もしかして……私、誘拐された? でも、そんな感じじゃないし。ここって外国? それとも撮影用のセット?」
「もしかして君は、日本という国から来たのか?」
戸惑う七瀬が振り向くと。そこにいたの灰色の髪をオールバックにした、映画俳優のような30代のイケメンだ。
「あ、はい……あの、随分と日本語が上手いんですね?」
七瀬はテンパっていたから、気づいていなかったが。この街の住人は、みんな日本語で喋っている。
「細かい説明は後でするが、安心してくれ。近頃は君のように
ロナウディア王国諜報部第3課課長レオン・グラハムは、七瀬を安心させるように笑みを浮かべる。
『
レオンはエリクに『|伝言(メッセージ)』を送ると、七瀬を連れて王宮に向かった。
※ ※ ※ ※
エリクから、ロナウディア王国の王都に現れた異世界転移者を保護したと『伝言』が来て。俺はミリアと一緒に『|転移魔法(テレポート)』で、ロナウディア王国の王宮に向かった。
1年ほど前から、俺やミリアのような転生者じゃなくて。異世界転移者が世界中に突然出現するようになった。
「アリウス、ミリア、急に呼んで悪かったね。だけど君たちがいた方が、話がスムーズに進むと思ったんだよ」
「エリクの判断は正しいと思うよ。だけど俺とミリアは、
エリクが案内した部屋には、高校生らしい制服を着た女子がいた。髪を明るい色に染めているけど、顔立ちはどう見ても日本人だ。
『|恋学(コイガク)』の世界であるロナウディア王国の王都周辺の地域を除けば、この世界はRPGの世界で。『クスノキ商会』のリョウ・キサラギのように日本人顔の奴もいるけど。高校の制服を着ているから、異世界転移者に間違いないだろう。
だけど、こういうときは俺が話をするよりも。ミリアに任せた方が良いだろう。
「貴方が水森七瀬さんね。私はミリア・ジルベルト。この世界に転生する前の名前は○○○○。貴方と同じ日本人だったわ」
「え……転生って?」
戸惑う七瀬に、ミリアが丁寧に説明する。この世界が異世界で、理由は解らないけど七瀬が日本から転移して来たこと。ミリアと俺は元は日本人だけど一度死んで、この世界に転生したこと。
「情報量が多過ぎるから、直ぐに理解できなくても仕方ないわ。だけど安心して。七瀬さんのことは、私たちが責任を持つて保護するから」
同じ女子ってこともあるだろうけど。ミリアは相手の懐に飛び込むのが上手いからな。とりあえず、七瀬も安心したようだ。
「そうですね。全然、実感が沸きませんが……私って日本に戻れるんですか?」
「ごめんね、七瀬さん。私たちも転移者のことは、まだ良く解っていないの。だから日本に帰る方法があるかも解らないのが正直なところよ」
嘘をついて安心させないところが、ミリアらしいな。元の世界に戻る方法どころか、転移者が現れた原因も解っていないのに。下手な嘘をついてバレたら、七瀬の信用を失うからな。
「俺はミリアと同じ転生者のアリウス・ジルベルト。日本人だった頃の名前は○○○○。俺とミリアは日本で幼馴染みだったんだ」
俺が話し掛けたのは、同じような境遇の奴が他にもいることを伝えて、七瀬を安心させるためだ。問題を解決できる訳じゃないけど、自分と同じような状況の奴が他にもいると解れば、少しは不安が紛れるからな。
「俺は適当なことを言うつもりはないけど。俺やミリアは転生者だから、元の世界に戻ることはできないと思うけど。転移者の七瀬なら可能性はあると思うよ。俺に何ができるか解らないけど、七瀬に協力するからな」
俺も嘘をつくつもりはない。俺もこの世界に転生したばかりの頃は、不安な気持ちがなかったと言えば嘘になる。だけど父親のダリウスや母親のレイア、グレイとセレナも俺が転生者だと気づいても受け入れてくれた。
まずは七瀬が安心して暮らして行けることが一番だろう。七瀬は
「ア、アリウスさん……その……ありがとうございます……」
七瀬の顔が何故か赤い。さすがに俺もアリウスとして28年生きているから、原因は予想がつく。
「ホント、私が一緒に来て良かったわ。七瀬さん、一応言っておくけど。アリウスには奥さんが5人いて、私もそのうちの1人よ」
「え……奥さんが5人……」
七瀬は唖然としているけど。ミリアは七瀬を牽制するためじゃなくて、勘違いさせないために言ったことは解っている。
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