第24話:企み
アランとジェイクの件が片づいたので、俺の当初の提案通りに150階層に移動する。
ちなみに失禁したジェイクの服はヒーラーのサラが『
ジェシカたちは200レベル代後半から300レベルそこそこ。もう少し詳しく言うと一番上がマルシアの312レベルで、一番下がジェイクの285レベルだ。
それに対して150階層に出現する
「俺が数を調整するから、後はおまえたちで何とかしろよ」
玄室に入るなり出現した魔物を確認して、ジェシカたちが対処できる数だけ残して瞬殺する。
実力の違いを思い知ったアランは意気消沈していたから、初めは戦力と考えなかった。
だけどそんなことを言っていられる状況じゃないことが解ったのか、アランは意外と早く復活する。まあ、腐ってもS級冒険者ってことか。
復活したアランは真面目に魔物と戦っている。ちなみにアランは大剣使いで攻撃重視のスタイルだ。だけど力押だけじゃS級になるのは無理だからな。フルプレートの鎧の他にスキルで調整するなど防御にも意識を向けている。
5度目の魔物との戦闘が終わった後、俺はサラに回復魔法を掛けて貰っているアランの隣に座る。
「これは独り言だけどな。アランは自分に甘いから敵の強さを見誤るんだよ。自分と敵の強さを冷静に分析できないと『ギュネイの大迷宮』は攻略できないからな」
比較的攻略難易度の低い『ビステルタの門』だから今の『白銀の翼』でも攻略できた。
だけど『ギュネイの大迷宮』の下層に出現する魔物の攻撃はシビアだからな。戦力の見極めを間違えると即全滅に繋がる。
「俺が自分に甘い……確かにそうだな。俺じゃ最下層の魔物に手も足も出なかったのに、あんたとの実力の差を全然解っていなかった……」
アランは意外なほど素直に認める。ジェシカに良いところを見せようとしたのか、俺に変な対抗意識を持っていたけど。普段のアランはもっと真面なんだろう。あそこまで馬鹿だったら、ジェシカがパーティーに入れる筈ないからな。
「これも独り言だけどな。自分は負け犬だと諦めるか、力の差を埋めようと足掻くか。強くなる奴となれない奴の差はそこだからな」
自分だけで方法が見つからないなら、知ってる奴に訊けば良い。下らないプライドで頭を下げないなら、その程度の思いだってことだ。
「俺は……どんなことをしても強くなりたいんだ。だから……今さらだけど、アリウス……いや、アリウスさん。俺に戦い方を教えてください!」
「ああ。本当に今さらだし、何を都合の良いこと言ってるんだよって感じだな」
こんな奴の面倒を見てやる必要はない。散々俺に突っ掛かって来たんだからな。
「そうですよね……俺に都合の良いことばかり言ったって……」
「まあ、俺はこの2日間ジェシカに付き合う約束だからな。勝手に見るなら仕方ないし、パーティーメンバーとの連携も教える必要があるからな」
「アリウスさん……それって……」
「もう、アリウス君は素直じゃないな。でもそういうところにジェシカは……」
「マ、マルシア! だから余計なことは言わないでよ!」
いや、俺は必要だと思うことをするだけだ。勘違いするなよ。
ジェシカたちと2日間掛けて150階層を攻略した。時間が掛かったのは俺が散々ダメ出ししたからだ。
まあ、150階層辺りで戦うなら『白銀の翼』は及第点だけど。さらに下の階層に行くには色々と問題があった。
そもそもスキルや魔法のレベルが足りない。つまり使い方もタイミングも甘いんだよ。それに俺に言わせれば連携もイマイチだな。仲間の動きが完全には予測できていない。
俺だからこれくらいで済ましているけど、グレイとセレナの指導はもっと厳しいからな。
結局、連携に絡むからジェシカ以外の奴にも教えることになった。色々と甘いアランにダメ出しが1番多くなったのは仕方ないだろう。
ジェイクの奴も態度を改めたけど、あいつは上を目指す意識が薄いから伸びないだろうな。
「アリウスさん、今回のことは本当に済みませんでした。そして、あんたの寛大さに俺は心から感謝しているんです。本当にありがとうございました!」
日曜日の夜。冒険者ギルドで『白銀の翼』と打ち上げって感じで一緒に夕飯を食べた。
アランの態度の変化に他の冒険者たちが驚いているのは、土曜の朝の俺とのやり取りを目撃した奴がいたというだけじゃなくて。普段からアランが横柄な態度を取っていたからだ。
今カーネルの街を拠点にしているS級冒険者は『白銀の翼』だけだし、A級冒険者も年上ばかりだからな。調子に乗ってたんだろう……って、ゲイルが言ってたんだけどな。
「なあ、アラン。普通に話せよ。その言い方は気持ち悪いからな」
「いや、無理ですって。アリウスさんは俺の馬鹿さ加減を教えてくれた恩人ですから。あのまま馬鹿やってたら、いつか俺はジェシカたちを危険な目に遭わせていたと思うんですよ」
「まあ、その通りだけどな。仲間を死なせたくないなら、今日みたいに必死にやれよ」
「はい。解っていますよ」
「アランの豹変ぶりは、あたし的にも気持ち悪いけどね……ねえ、マスター。料理とお酒のお代わりをジャンジャン持って来てよ」
マルシアは相変わらずマイペースだな。
「なあ、マルシア。今回はしてやったと思っているだろうけど。おまえの思い通りにはならないからな」
「うん? アリウス君、何のことかな? あたしには解らないよ」
こいつ、惚けやがって。マルシアが企んでいたことくらい解っているからな。
俺とジェシカがパーティーを組むことを、アランたちに教えたのはたぶんマルシアだ。目的はアランを噛ませ犬にして、俺とジェシカの仲を取り持つためだ。
「アリウス、あんたには私も感謝しかないわよ。あの……色々と教えてくれて、ありがとう。やっぱりアリウスは……ううん、何でもないわよ」
隣でずっと俺の顔を見ているジェシカの視線を感じる。まあ、今回は約束だからジェシカの面倒を見たけど、俺に他意はないからな。
学院の生徒に比べれば、20歳のジェシカの方が俺のストライクゾーンに近い。だけどジェシカは今でも子供っぽいところがあるし、俺の精神年齢は40歳だからな。下手をすれば俺の子供でも可笑しくない年齢だし……
いやいや、そもそも俺とジェシカはそういう関係じゃないからな。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 15歳
レベル:????
HP:?????
MP:?????
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