18-2 まさかの結果

 駆け込んだ病院で検査を受けたケンシロウは、産科に行くように指示を受けた。

 また自分の子宮に何か異変が起こっているのだろうかと不安が募る。発情促進剤の副作用で子宮が収縮して激痛を催した時の悪夢がよみがえって来た。

「大丈夫だよ。きっと何とかなるって」

 アキトが不安に押しつぶされそうなケンシロウを何とか元気付けようとそばで声をかけ続けてくれていたが、どうしても不安を拭えずにいた。


 産科でもいくつかの検査を受けさせられ、ドキドキしながらその結果を待っていると、「マナベ・ケンシロウさん」というアナウンスで診察室に呼ばれた。

 緊張と不安でガクガクする膝を抑えながらアキトに支えられつつ、やっとのことで診察室に入ると、産科の担当医が驚く程ニコニコと笑顔を湛えていることに驚いた。

 医師は明るい声でこんなことを二人に告げた。

「マナベ・ケンシロウさん。おめでとうございます。マナベさんは妊娠されているようです」


「え!?」

「本当ですか!?」

 アキトとケンシロウはあまりの驚きに同時に叫び声を上げた。

 医師はニコニコしたまま頷いた。

「ええ。本当ですよ。妊娠六週間になります。お子さんの心拍も正常ですし、今のところとても順調に育たれているようです」


 あまりの驚きに、医師の説明が自分ではない別の誰かの話をしているように聞こえて来る。

 ケンシロウはアキトと顔を見合わせた。アキトもまるで信じられないといった様子でただただ唖然としている。

 だが、先に正気に戻ったのはアキトの方だった。

「あの、男の子なんですか? 女の子なんですか? いつ生まれるんですか? それから……」

 急き立てるように質問を連発するアキトに医師は苦笑いした。

「まだ今の段階では性別はわかりません。出産予定日ですが、来年の五月ごろになるかと」

「来年の五月……。うわぁ、先は長いですね……」

 アキトが思わず嘆息してそうこぼすと、医師は少し厳しい表情になってアキトとケンシロウに釘を刺した。

「そうですよ。まだまだ先は長いです。それにまだ安定期に入っていませんから、くれぐれも無理をしないように」

「はい、わかりました」

「気を付けます」

 思わず二人の背筋がピンと伸びる。


 それからエコー検査でケンシロウは自分の腹の中にいる新しい命の陰影を見せてもらった。

 白黒の映像で見にくいが、小さくも懸命に鼓動している存在が確かにそこにいた。

 その映像を見た時に、ケンシロウは初めて自分がアキトとの子どもを妊娠したのだということが腑に落ちた。

 それと同時にぶわっと涙が溢れ、止まらなくなった。


 嗚咽を漏らしながら泣きじゃくるケンシロウをアキトは優しく抱き締めた。

「ケンシロウ、やったな。ありがとう。本当にありがとうな」

 アキトも感極まったのか、涙声になっている。


 すっかり諦めていたアキトと自分の子ども。

 突然天から降って来たその素敵な宝物に、ケンシロウは胸がジーンと熱くなるのだった。

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