17-4 心と身体の変化

*17-2及び17-3はエブリスタ版にて公開しております。カクヨム版では性描写における制限が大きいため掲載することができません。ご理解の程よろしくお願いいたします。

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https://estar.jp/novels/26000341/viewer?page=117

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 汗と唾液と精液と、あらゆる互いの身体から分泌された液体を風呂でサッと洗い流し、二人は裸のまま抱き合って布団にくるまった。

 先程までの狂おしい程の熱烈な欲情が冷めて来ると、秋の訪れを感じさせる夜の冷え込みは身体を芯まで冷やしてしまう。

 だが、こうして互いの身体を抱き合って温め合っていると、ちょうど心地良い温度になる。

 真夏の暑い時期に抱き合うよりも、今のような少し涼風の立った季節の方が、エッチな行為に勤しむのには適しているのかもしれない。


 アキトにとって先程の交わりは、ケンシロウと出会ってから最も熱く官能的なものであった。

 ケンシロウの息遣いや身体の反応にまるでぴったりと呼応するように、アキト自身の身体も熱を持ち快感を高めていった。

「なぁ、ケンシロウ。俺、やっぱり今夜のお前は何かいつもと違った気がする。いや、お前だけじゃなくて俺自身もだ。こんなに一つになったという感覚を覚えたのは初めてかもしれない」

 アキトが呟くと、ケンシロウがグイッとアキトに身を寄せて来た。

「オレも実は、自分でもこの身体の変化に驚いているんだ。こんなに幸せなエッチをしたのは生まれて初めてだ」

 生まれて初めてこんなに気持ちよくなってくれた相手が自分だなんて。

 アキトは思わずニヤケが抑えきれなくなった。

 幸い、月の光はアキトの背後から差し込んでおり、そのだらしのないニヤケ顔を逆光のおかげでケンシロウにバレずに済んだ。


「これってもしかして、運命の番としてオレとアキトがきちんと結ばれたって証拠なのかも」

 ケンシロウがそんな仮説を立てた。

「きちんと結ばれたって、俺たちはもう新宿二丁目で既に番を成立させたはずだ」

 アキトがツッコむと、ケンシロウは

「違うんだ。そのこととは別にさ」

と言って自説を展開した。

「例え番になったとしても、それが運命の番であったとしても、アケミさんとアキトのαのお母さんみたいに別れてしまうこともある。エツコママも昔、運命の番と出会ったんだけど、家族によって引き裂かれてしまったって訊いた。だけど、オレたちは一生こうして添い遂げる覚悟を決めた。何があってもずっと二人で人生をこの龍山荘で歩んでいこうって」

 そのケンシロウの説にはアキトも大いに同意する所があった。

 アキトは大きく頷いた。

「確かにそうかもしれないな。俺たちはマサヒロ君や俺のお袋のことをきっかけに、きちんと自分たちがどう生きていくかの決心をした。今までよりももっとケンシロウとの絆が深まった気がする」

「うん。番ってさ。ただαアルファΩオメガうなじに噛みついて成立するだけのものじゃないと思うんだ。それだけで全てがうまくいく訳じゃない。結局、オレたちは番となっても、互いの愛はその後の過程で育てていくものなんだなって」

 アキトはそのケンシロウの話にドキッと心を動かされた。


 だが、こんな真面目くさったことを真剣に語るケンシロウが可愛くもあり、思わず笑ってしまった。

「何だよ。ケンシロウ、やけにいいこと言うじゃん」

「はあ? オレ、真面目に話してるんだけど」

 ケンシロウが再び頬をぷくっと膨らませて文字通り膨れた。

「そんなケンシロウが可愛い!」

 アキトはケンシロウをギュッと抱き締めた。

「ああもう! アキトのバカバカバカ!」

 ケンシロウはアキトの腕の中でバタバタ暴れた。

 そんなバタつくケンシロウの身体の感覚も全てが愛おしくて、アキトは余計に強くケンシロウを抱き締めた。


 しかし、暫くすると、ケンシロウはポツリとこんなことを言った。

「ねぇ。こんな幸せなエッチが出来たんだし、オレ、アキトの赤ちゃん、身籠ったり出来ないかな……」

「俺はそんなのケンシロウに求めてないよ。俺はケンシロウがこうしてそばにいてくれたらそれだけで十分だ」

 アキトはそう言って優しくケンシロウの髪を撫でた。


 そんなことを口では言ったものの、その実、ケンシロウとの間に子どもが出来たらいいなとアキトは少しの期待を抱かないでもなかった。


 でも、ケンシロウにそんな負担をかけるのは申し訳ないとアキトは思った。

 子どもを授かるというのはそれだけで母体となるΩや女性には多大な負荷がかかるという話だし、ケンシロウは発情抑制剤の影響で妊娠を期待させること自体がケンシロウに重荷としてのしかかるような気がしていたのだった。

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