17.Side アキト ―幸せな一夜―

17-1 これからも龍山荘に

 マサヒロが帰った後、アキトは龍山たつやま荘に残ることを両親に伝えた。

 もうアキトに何の迷いもなかった。

「お前、正気なのか? あんなド田舎のオンボロ屋敷で人生を棒に振る気か」

 父サダオは電話の向こうで怒鳴り散らしたが、アキトはキッパリと言い切った。

「ああ、正気だよ。それにここはオンボロ屋敷じゃない。龍山荘だ」

 その後もサダオは怒り狂って何かを叫んでいたが、アキトは早々に電話を切ってしまった。


「本当にいいの? わたしのために無理して残るって言ってくれているんじゃ?」

 アケミが心配そうにアキトに尋ねた。

 アキトは笑顔で首を横に振った。

「お袋のためだけじゃない。もちろん、お袋がここにいるっていうのも一つの大きな理由ではあるけど、それ以上に俺はこの龍山荘が好きなんだ」

「そう。……よかった」

 アケミは溢れる涙を拭って小さな声で呟いた。

 やはりアケミもアキトが龍山荘に残ることを心の中では願っていたのだ。

 ずっと我慢をし続けて来た人生なのだから、これくらいの望み、いくらでも叶えてやるよとアキトは心の中で呟いた。


 全てが片付いたその夜、ケンシロウがアキトの布団の中に潜り込んで来た。どうやら甘え心を起こしたらしい。

 この所、互いの家族や生き方について悩み続けて来た二人は、ここで漸く二人切りの時間に浸る心の余裕を得たのだった。

「これで一件落着だね」

 ケンシロウはアキトの身体に抱き着きながらほっとした声でそう言った。

「ああ。でも、俺たちの人生はこれからだ。この龍山荘を盛り立てていかなきゃならないからな」

「そうだね。アキト、一緒に頑張っていこうね」

「おう」


 その時、ケンシロウの身体から愛らしくて甘い香りがほんのりと漂って来た。

「ケンシロウ、もしかしてお前……」

「発情期が来たみたい」

 ケンシロウは気恥ずかしそうに、だが甘えた声でそう言った。

 そういえば忙しい日々に追われるまま、ここ最近、アキトはケンシロウと肌を触れ合わせる機会も全く設けられていなかった。

 前回の発情期から既に一か月近くが経過している。

「アキト、チューして?」

 ケンシロウの声のトーンが一段甘くなる。

「結局それを言いたかったんだろ?」

「うっせ」


 アキトのからいにケンシロウは膨れたが、そのままアキトの唇に吸い付いて来た。

 二人は久しぶりに濃厚な口付けを交わした。

 ぷるんと柔らかい唇がアキトの唇に触れる。

 ちょっとでも歯が当たろうものなら傷付けてしまいそうなその繊細な唇を優しくはむ。

「ううん」

 ケンシロウの吐息が悩まし気になる。興奮が高まって来たらしい。その高ぶる興奮のままケンシロウの舌がアキトの口の中に押し込まれて来る。

 まるで生き物のように舌がアキトの口の中を這いずり回り、それが今目の前で抱き合っている愛しい運命の番のものだと思うとアキトの興奮も抑えきれなくなる。

 アキトがケンシロウの舌を捕え、絡ませた。

 ザラリとした舌の触れ合う感触と共に、唾液が絡まり合い、唇からピチャピチャと色っぽい水音が漏れ出す。


 アキトはケンシロウの服に手をかけて上半身を裸にした。

 つるんと露わになったケンシロウの裸体は、窓から差し込む月明りに照らされて、その輪郭の美しさが際立つ。

 すらっとした体格でありながら、薄い胸板とうっすら浮き出た腹筋の凸凹が暗い部屋の中で一際輝きを放っている。

 その美しいたいにアキトは思わずうっとりと見惚みとれた。


*本章の続きは性描写シーンとなります。エブリスタ版にアップロードしておりますので、そちらをご覧ください。

URLはこちら↓

https://estar.jp/novels/26000341/episodes

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