4-9 厄介なタイプ
「生粋のα」。
アキトもそうだったのか。それなら、あのΩに対する耐性のなさも理解出来る。
「生粋のα」は、基本的にΩと絡むことはないのだ。
両親は育ちの良いα同士での交際を望み、Ωと交流など許さない場合がほとんどだからだ。
ケンシロウの親も、彼がΩと判明するまではそうだった。
「でもね、彼は正直、αとしては優秀ではない。いわば、出来損ないのαだ。そんな彼との未来など、明るいと思うかい? いくらαとはいえ、その優秀さはピンキリなんだ。どうせ付き合うなら、もっと将来性のあるαと付き合った方がいいとは思わないかい?」
男は卑しい目でケンシロウをニヤリと見つめた。
「出来損ないのα」か。アキトも随分な言われようだ。
この男はΩに対する差別意識など微塵もないというような語り口でいるが、彼の発する言葉の端々に自分の属するα性への強烈なまでの執着が垣間見える。
そもそもαの中での序列も強烈に意識しているようだ。
こういうタイプは厄介だ。言葉巧みにΩを篭絡し、遊んだ挙げ句にやり捨てる。アキトなんかよりよっぽどΩを同じ「人」として見ていないのは明らかだ。
男は続けた。
「私なら彼よりも君にもっといい生活をさせてあげられる。番を解消したって、今では発情抑制剤もいいものがたくさん出ている。それに、私なら君をもっと気持ちよくしてあげられる。彼が番であったことなんて、すぐに忘れさせてあげるよ」
やっぱりこれが目的だ。
番を得たΩは通常番となったα以外との性交渉を受け入れることが出来なくなる。
だが、そんなΩ側の事情などこの男はどうでもいいのだ。姿形のよいΩに手を出したいだけの男だ。
例え嫌がられようが拒絶されようが、自分が気持ち良くなりたいだけの男……。
ケンシロウは吐き気がした。
「いえ、遠慮しておきます」
ケンシロウはその場を立ち去ろうとした。
すると、ケンシロウの手を男が掴んだ。
「いいじゃないか。そんなに急ぎの用事でもないんだろ? 付き合ってくれたら、コレ、弾んであげるから」
男は卑しい笑みを浮かべながら人差し指と親指で丸を作ってみせた。金をちらつかせてケンシロウを
何処までもΩを舐め腐った男だ。
ケンシロウは頭にカッと血が上り、思わず「ふざけるな!」と怒鳴りそうになった。
と、その時だ。
「オカダ先生! やめてください。彼、嫌がっているじゃないですか」
そこにとある人物がまるで救世主かのように現れ、ケンシロウとその男の間に割って入ったのだった。
「アキト!」
「ニカイドウ君!」
ケンシロウと男が同時に叫んだ。
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