第12話 雨が走る

 すいた電車で目の前は横一列の窓。

 雨が降りはじめる境目を見た。

 進行方向側の半分はまだ。後ろの半分はもう、車体を濡らす水滴に景色が霞む。

 電車は走っている。

 ずいぶん長いこと「半分」のままだ。


 馬の背を分ける雨という言葉がある。

 ごく狭い地域のなかで降る所と降らない所に分かれる雨という意味なので、この場合に相応しいかどうか知らない。

 

 けれど見えない馬が雨を率いて電車に並走するようだ。


 雨は、走る。

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