第39話 五日目の昼
「お姉ちゃん。あたし、禁欲中だって言ったよね?」
「ほんっとうにごめん! いつもお願いしてるアシちゃんが急病で! 今回はいつもより原稿が遅れちゃったし、締め切りがマジでピンチなのぉ!?」
「はいはい。その話はもう聞いたから。いつもお小遣い沢山貰ってるし。別にお姉ちゃんのお手伝いするのは嫌じゃないから」
そういう訳で日曜日、青葉は急遽紅葉の仕事場兼自宅のマンションに呼び出されていた。
禁欲中にエロ漫画家の手伝いなんかしたらムラつくに決まっている。
でも、大好きなお姉ちゃんに頼られたら断れない。
手伝い自体はよくある事だし、いつも雫達との事で愚痴を聞いて貰っている。
お小遣いだって沢山貰っているから、こんな時こそ力になるべきだと思う。
「で、なにしたらいいの?」
修羅場でお風呂に入っていないのだろう。
姉の身体からはむわっと熟れた女の匂いが漂って部屋中に充満していた。
もう! お姉ちゃんエッチ過ぎ!
雫の体臭を思い出し、早速青葉はムラついてきた。
「取り込んだ原稿のゴミ消しと台詞チェックお願い! 変なセリフがあったらアドバイスくれると嬉しいんだけど……」
「いつもの奴ね。ていうか、前から思ってたんだけど、素人のあたしがチェックして意味あるの?」
「大ありだよ! 読者さんはみんな素人なんだから! 青葉ちゃんはムッツリだし、すごく参考になってるんだよ?」
「……そんなの褒められても嬉しくないから」
言葉とは裏腹に、大好きなお姉ちゃんに褒められて青葉の口元はニヤけていた。
本人は中卒とか引き籠りとかエロ漫画家の癖に処女だとか色々気にしているが、青葉は姉を尊敬していた。
だってそんなに歳が違わないのにプロのエロ漫画家として立派にお金を稼いでいるのだ。
世間体は悪いかもしれないけれど、自分らしく自由に好きな事をして生きている。
普通に格好いいしすごい事だと思う。
変態だけど優しいし、本当は自慢の姉なのだ。
エロ漫画の台詞チェックを褒められるのは微妙な気分だが、青葉は昔から姉の作品やコレクション、資料用のエロ漫画を読み漁って知識だけは豊富だった。
……あれ? あたしが変態になったのってお姉ちゃんのせいなんじゃ……。
一瞬そんな疑問が頭を過るが、お姉ちゃんを嫌いになりたくないので考えない事にした。
ともあれ、いつも通り仕事場のパソコンに姉妹で並ぶ。
パソコンは二台あって、一台は姉用、もう一台はアシスタント用だ。
作業フォルダに入った画像を開いて青葉はギョッとした。
「ちょっとお姉ちゃん!? これ、あたし達じゃん!?」
背後には青葉と遊馬をモデルにしたと思われる二人の男女が目隠しやギャグボールを噛まされた状態で拘束されて浮いている。
「そうなの! 遊馬君からもお話を聞けたし、寝取られ純愛物をテーマに描いてみたくなって!」
「だからって、実の妹をエロ漫画に登場させる!?」
「お姉ちゃんちゃんと確認したよね? 青葉ちゃんから聞いた話、漫画にしてもいい? って。青葉ちゃん、大丈夫だって言ったよ?」
「そ、そうだけど……」
何万円も貰っているのだ。
青葉だっていつかこんな日が来る事は分かっていた。
でも、建前でも怒っておかないとダメな気がした。
そういう所が凡人なのだろう。
青葉には、姉や雫達のように自分は変態だと開き直れる程の勇気はない。
「嫌だった?」
しょんぼりと、心配そうに姉が聞く。
本気で青葉が嫌だと言えば、姉はこの原稿を没にするだろう。
「……嫌ではないけど……」
本当に全然嫌ではない。むしろ嬉しい。
だって大好きなお姉ちゃんの漫画に出して貰えたのだ。
青葉の特徴をしっかり捉えた、ものすごく可愛くてエッチなキャラクターだ。
それが成人誌に載って日本中のスケベ達のオカズになる。
日本のエロ本はワールドワイドだから、世界中かもしれない。
そう思うと、見えない触手に犯されまくっているようでめちゃくちゃ興奮する。
そんなの変態過ぎて、姉が相手でも言えないが。
「青葉ちゃんならそう言ってくれると思った。世界中の人にオカズされると思って興奮してるでしょ?」
ニコニコしながら姉が聞いてくる。
変態でドMなくせに、姉はドSな所もあった。
そんな所は雫に似ている。
あるいは、雫が姉に似ているのかもしれない。
……もしかしてあたし、雫にお姉ちゃんを投影してる?
そんな考えが頭を過ってゾッとした。
そんなの変態過ぎる。
でも、あながち間違いではない気がした。
そしてやっぱりゾクゾクした。
あぁもう! あたしのバカぁ!?
「するわけないでしょ。お姉ちゃんじゃないんだから」
「ほんとかなぁ?」
「ひぃぁっ」
いきなり股間を揉み揉みされて、青葉はビクリと仰け反った。
普段はパンツルックの多い青葉だが、擦れたら中途半端に気持ちよくなってしまうので今日は珍しくスカートを履いていた。
「青葉ちゃんの嘘つき。ぐちょぐちょだよ?」
香しそうに姉が指先を嗅ぐ。
「か、嗅がないでよ!? もう! 禁欲中だって言ってるでしょ!?」
「そんなの破っちゃえばいいのに。だめだと分かっててするチョメチョメが一番気持ちいいんだよ? はぁ、羨ましいなぁ。お姉ちゃんもそういうプレイを強制してくれる彼氏が欲しいよぉ……」
「負けたら罰ゲームなんだってば!? 雫が相手じゃなにされるかわかんないし!」
「そんなのむしろご褒美でしょ? お姉ちゃんが言い訳になってあげるからしちゃいなよ。青葉ちゃんだって雫ちゃんにこってりお仕置きして欲しいでしょ?」
青葉は段々後悔してきた。
エロ漫画家として、姉は青葉が罰ゲームを受けた際の体験を聞きたいのだろう。
「そ、そんな事、ないもん……」
「甘えん坊になってるのは嘘ついてる証拠だよ? それに、いいの? もし勝っちゃったら、遊馬君が一人だけ罰ゲームを受ける事になっちゃうんだよ?」
よくない……。
あたしだって雫にお仕置きして欲しい!
喉元まで出かかった言葉を青葉は必死に伸び込んだ。
「もう! 意地悪しないで! あたしは変態じゃないの! それに、滝沢に勝ってあいつに恥ずかしい罰ゲームやらせるんだから!」
「でも――」
「でもはなし! それよりお仕事! 時間ないんでしょ!?」
「は~い」
なんとか姉を黙らせると、二人で作業を開始した。
……ムラムラする。
……もう、はちゃめちゃにムラムラする!?
隣からは雫を想起させるエッチな姉の体臭がプンプン香る。
さっき揉まれた股間はじくじくと熱をもって腫れたみたいに疼いている。
目の前には自分そっくりのキャラクターが雫の手によってはちゃめちゃにブチ犯されて罵られて調教されて喘ぎ散らかしてイキ潮を噴いて嬉ションを撒き散らしてアヘ顔を晒している。
「って、ちょっとお姉ちゃん!? なんであたしが滝沢とやってんの!?」
暫くページを進めた先。
雫の陰謀により、目隠しに耳栓を付けられた青葉と遊馬は、お互いに相手を雫だと思って騎乗位でチョメチョメしていた。
ちなみに青葉のキャラは、雫が男役を演じていると誤解している。
しかも、途中で目隠しと耳栓を取られ、ショックで同時に絶頂してしまうのだ。
こんなの絶対あり得ない!
「いいでしょこの展開。めっちゃエロいでしょ。お姉ちゃん、我ながら天才かなって思っちゃった」
誇らしげに姉が言う。
自分の原稿で興奮したのか、左手がチュクチュクと股間を弄っていた。
それについては毎度の事なので今更言う事はない。
「そ、そうだけど……あたしは滝沢と寝たりしないし!?」
「青葉ちゃん。現実は現実、フィクションはフィクションだよ。青葉ちゃんをモデルにして、体験談も参考にしたけど、そのまま使うわけじゃないから」
「……わかってるけど」
「うん。青葉ちゃんの気持ちは分かるよ。青葉ちゃんはお姉ちゃんに似た変態ドスケベの雫ちゃんが大好きで、彼氏の遊馬君なんか大大大嫌いなのに、そんな彼とチョメチョメしてる所を想像したらものすごく興奮しちゃったんだよね。あぁ、なんて背徳的なんだろう! こういうの、逆寝取られっていうのかなぁ?」
「知らないし!? そんな事ないから!? もう、変な事言わないで! 怒るよ!」
「は~い」
それで姉も黙り、暫くはお互いに無言で作業を続けた。
くちゅくちゅ。
「おほ、ぉほ……」
ちゅくちゅく。
「ぉ、おほぉぅっ」
「お姉ちゃん! 喘がないで!?」
「いつもの事だよ?」
「そうだけど!? あたしは禁欲中なの!?」
「だってムラつくんだもん。今回は青葉ちゃん達がモデルだから超気合入れて描いたし。自分でも興奮しちゃうくらい神回になったの。そのせいで手が止まっちゃって作業が遅れちゃったんだけどね」
「知らないから!? もう、ムラムラするなら一回向こうでスッキリしてきて!」
「効率悪いしそうしよっかな」
あっさり認めると、姉は隣の寝室に引っ込んだ。
「……あーもう!? ムラムラする!?」
姉がいなくなると、青葉が叫んだ。
姉の言う通り、寝取ラブ3ピースはめちゃくちゃにエロかった。
導入などの大枠は青葉達の実体験をベースにして、より淫らで変態チックに描かれている。
特に雫にハメられてからは、青葉と遊馬はタガが外れたようにお互いに求め合い、そこに雫も加わって三つ巴のドスケベ3Pが繰り広げられる。
学校で、ホテルで、家で、プールで。
拘束プレイ、野外プレイ、リモートバイブの絶頂管理にペニバン二輪挿し。
こんなの見たくない!
でも見たい!
エロい!
エロ過ぎる!
やっぱりお姉ちゃんは天才だ!
ドラマパートだってしっかりしていて、変態の雫によって青葉と遊馬の倫理観が少しずつ狂っていく様がやけにリアルに描かれている。
まるで、違う世界線の自分を見ているような気分だ。
そこには青葉の本音があった。
そう思うくらい共感していた。
それ以上に興奮していた。
気付けば手伝いそっちのけで熱中していた。
もう、どちらの自分が本当の自分なのか分からなくなってきた。
「ぉほぉお! いぐ、いぎゅうううぅっ!?」
寝室の壁をぶち破って姉の喘ぎ声が響いてきた。
それで青葉はキレてしまった。
パンツに手を突っ込み、一心不乱にチョメチョメした。
お姉ちゃんの言う通りだ。
ダメだとわかっててするチョメチョメは最高に気持ち良い。
もう、色んな汁が噴き出しまくりで、ヤバい声が出まくった。
「あ~あ~。青葉ちゃん、いけないんだ~」
「ひぁっ!?」
いつの間にか後ろに姉が立っていた。
「お、お姉ちゃん!? こ、これは、違うくて……」
「ねぇ青葉ちゃん。お姉ちゃんと良い事しない?」
ドキッとして、青葉は何も言えなくなった。
「お姉ちゃんじゃいや?」
ノーパンにTシャツ姿の姉が両手を広げた。
体臭の代わりにシャンプーの匂いが香った。
青葉の為にシャワーを浴びたのだ。
もう変態でいい。
青葉は大きな胸に飛び込んだ。
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