第32話 誘惑
下半身丸出しで勃起した遊馬がオナホをはめた穴あきクッションを前に呆然としていたのと同じ夜。
青葉は悶々とした気持ちで寝返りを繰り返していた。
めっちゃムラムラする。
もう既にめっちゃムラムラする。
なんで禁欲プレイとか言い出しちゃったんだろ。
早速後悔していた。
早漏の遊馬のピンチヒッターとして、毎日のように雫の性処理係を務めている青葉である。
雫がS化したせいで以前よりも攻められる事が多くなった。
全身色々開発されて、変態プレイにも手を出して、青葉だって雫の事を言えないくらいド淫乱になっている。
急に禁欲プレイなんか始めたら辛いに決まっている。
でも悔しかったんだもん!?
青葉は自分をSだと思っていた。
実際、遊馬にバレるまでは性欲を持て余した雫を完璧にリードして手の中で転がしていた。
支配欲を満たし、万能感に酔いしれて、寝取り女をエンジョイしていた。
それが今や完全に形勢逆転だ。
遊馬に対する嫉妬と劣等感を抱えながら、ピンチヒッター役も満足に努められず、雫にはいいようにイカされ、性癖の扉をぶち破られて開発され、浅ましく喘ぐメス豚に成り下がっている。
ブヒィ……。
しかもそれが嫌じゃないから始末に負えない。
クールぶっているが、その実青葉は見栄っ張りの意地っ張りの格好つけのビビりの弱虫の甘えん坊のクズのヘタレなのだ。
シンプルダメ人間である。
それがわかっているからダメな所を隠そうと必死に背伸びして歩いている。
雫はそれを全部見透かして本性を曝け出す事を要求してくる。
そしてそんなダメな自分を丸ごと全部受け止めて愛してくれる。
SMプレイは信頼がなければ成立しない。
苛烈な言葉攻めも限界すれすれの暴力も、信頼があってこそだ。
そうでなければただ悲しいだけ、苦しいだけ、痛いだけの虐待である。
そこまで雫が自分の事を理解して愛してくれる事はとても嬉しい。
だからこそ怖い。
正味な話、雫は青葉が本当に嫌がる事は一切していないのだ。
遊馬の前で恥ずかしい性癖を暴露される事すら、本当は嫌ではない。
むしろ羞恥心が掻き立てられて超濡れる。
そんな自分が恐ろしい。
このままじゃメス豚一直線だ。
それでいいじゃん? と思う自分と、それじゃダメだって!? と思う自分がバチバチに争っている。
青葉はなんとか抗う道を選んだ。
こんな関係永遠には続かない。
遊馬と雫はお似合いのカップルで、どうあがいても自分は約束された負けヒロインだ。
だから、本当の本気になってはいけない。
一線を引いて雫の手綱を握らないと。
それはそれとして、一方的にお尻ぺんぺんでギャン泣きするまでイカされたのが悔しい!
痛いって言ってもやめてくれなかったし!
雫の膝の上で漏らしちゃったし!
嫌じゃないけど……。
でも悔しいじゃん!?
それで仕返しがしたくて禁欲プレイを言い出したのだ。
綺麗ごとなんか建前みたいなものだ。
本当は衝動的で突発的な思いつきだった。
雫に禁欲プレイを強いて反省を促し、泣きながらごめんなさいもう無理ですチョメチョメさせて下さい! と懇願させたかっただけにすぎない。
メス豚の青葉にもまだ一欠けらのS心が残っている。
想像するだけで青葉は切なくなり、猛烈にチョメチョメしたくなった。
あぁもう、めっちゃムラムラする!?
今すぐめちゃくちゃチョメチョメしたい!
でも出来ない。
したら負けだ。
嘘をついても雫にはきっとバレる。
変態に磨きのかかった雫は、遊馬にはリクエスト出来ないようなプレイを青葉に色々せがんでいた。
しかもされる側ではなくする側としてだ。
「ね~青葉ちゃん。オムツ履いてみない?」
「ね~青葉ちゃん。おしがまプレイしてみない?」
「ね~青葉ちゃん。お外でローター入れてみない?」
ダメダメダメダメ絶対ダメ!
そんなの気持ちいいに決まってる。
絶対ハマっちゃう!
これ以上あたしを変態にしないで!?
元々はドMの雫だ。
青葉に変態プレイをさせる為なら、一週間の禁欲にだって耐えるかもしれない。
いやきっと耐える。
最悪だ。
こっちは今まで思うがまま雫を貪り、アヘアへになってお漏らしするまで雫に貪られてきた。
一週間もチョメチョメできない。
いやいや、流石に一週間くらい大丈夫でしょ? と楽観的に考えていたが。
思っていた以上に辛い一週間になりそうだ。
「うぅ……あたしのバカぁ……。なんでいつもこうなっちゃうの?」
疼く腰をもじもじして、無意識に手が伸びそうになるのを必死に抑える。
携帯アプリでパズルゲームでもやって気を紛らわせるかと思ったら、雫からラインが来た。
『やっほー。禁欲一日目の感想はどう?』
『雫じゃないんだから余裕に決まってるじゃん』
『あー、酷いんだ』
『じゃあ雫は平気なの?』
『平気なわけないでしょ? もう既にムラムラがヤバいよ』
『別にしたかったらしてもいいけど。その分罰ゲームが増えるだけだし。あたしにやらせようとしてたプレイ、雫にやって貰おうかな』
『どれどれ? 野外露出? ノーパンプレイ? お尻に尻尾?』
『……嫌がってくれないと罰ゲームになんないじゃん』
『しょうがないじゃん。エッチなんだもん。するのもされるのも私はばっちこ~い! だよ?』
『……いいよ。そしたら罰ゲームになりそうなの考えるし』
『余裕ぶってるけど本当は辛いんじゃない?』
『そんなことないし』
『ふ~ん』
雫の冷笑が頭に浮かんで青葉はゾクゾクしてしまった。
大好きな雫である。
ラインしているだけでムラついてしまう。
なんて思っていたら、急に雫が画像を送ってきた。
仰向けの状態でパジャマの胸元をはだけ、真っ白いたわわなおっぱいの片方を見せつけるように露出させている。
「ちょ!?」
裸なんかしょっちゅう生で見ているはずなのに、ものすごくエッチに見えた。
それはそれ、これはこれだ。
むしろモロ出しよりもエロいまである。
『どういうつもり?』
『ムラムラした?』
『するわけないじゃん』
『ふ~ん』
今度はお腹をめくって真っ白いおへそを見せつける画像が送られてくる。
一見すれば先ほどの画像よりもエッチ度は低いが、青葉は雫のおへそに顔を突っ込んでクンクンするのが大好きなのだった。
『やめてってば。禁欲プレイ中だよ』
『誘惑があってこその禁欲プレイだと思わない?』
ゾッとして、青葉の手が止まった。
『二人にはお願いしたい事がい~っぱいあるんだ。もうすぐ夏休みだし。夏休みと言えば冒険でしょ?』
『もう携帯見ないから』
携帯を伏せて青葉は頭を抱えた。
雫は完全にこちらを狩る気でいる。
やり返したいが、エッチな画像を送るなんて恥ずかしくて出来ない。
それに、今の自分の画像を撮ったら、欲情しているのがモロバレだ。
失敗した。
雫が相手ならこうなる事を予想しておくべきだった。
きっと地獄みたいな一週間になるだろう。
絶望したいのに、ものすごく興奮している自分がいる。
もうバカバカバカ! それじゃあ雫の思うつぼだから!?
リアルでポカポカ自分の頭を叩き、とにかく青葉は眠ることにした。
ブブブ。
携帯が震える。
無視だ無視。
雫の手には乗らない。
…………やっぱり気になる!?
スケベ心に負けて携帯を見ると、アップでベーっと舌を出している画像だった。
既読が付いた瞬間メッセージが届く。
『青葉ちゃんのエッチ』
雫にだけは言われたくない。
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