第62話 圧倒的な差
シオンとクィーンの戦闘が始まっていたが、ヴァレリオたち連合軍も戦線の立て直しを図っている。
後衛に配備されていたAランクソルジャーは全員戦闘に加わり、半分のBランクソルジャーは負傷したソルジャーの救助班と加勢する班とにわかれていた。
ヴァレリオが
「またいつクィーンの影響下に入るかわからん。いいかっ! B以下には最低限であたって、Aランクのアスラを先に叩け!」
前衛はシオンによってクィーンの影響下を外れ、一気に形勢を立て直している。
だがいつどのタイミングで影響下に入るかわからない。
そのため最悪また影響下に入ってしまったとしても、対応できるように高ランク帯を多少強引にでも倒していく方針をヴァレリオは取っていた。
「おい、Bランクを伝令に一人飛ばせ。クィーンの影響を想定して、B以下は最低限で抑えてまずはAランクから潰せと伝えさせろ。
あとSランクのアスラは残り少ないはずだ。だがクィーンの影響下に入ったらよくてカイザー、下手したらシオンくらいしか対応できなくなるかもしれん。
無理をしてでも早いうちに叩くように伝えろ。あとAランク五人、Bランクを五〇人連れてクィーンが出た場所の援護だ」
「了解しました」
シオンは周回することでクィーンの動きを制限し、少しずつその輪を小さくしていく。
輪が狭まっていくことでクィーンとの距離は縮まっていき、クィーンが触手でその動きを妨害してきた。
(――――――)
それを待っていたシオンは、鋭角に進路を変えて一気に距離を詰めに行く。
クィーンの攻撃範囲に構わず侵入し、さらに向かってくる触手をスピードで振り切って接近する。
完全に互いの間合いになりクィーンが迎撃してくるが、ここまでの動きはすべてシオンのフェイントであった。
シオンはクィーンが迎撃してきたタイミングでさらに空間転移をして消える。
さっきまでクィーンの右側へと向かっていたシオンへクィーンの右腕は空を切り、次に現れたのはクィーンの左側面であった。
ここまでの動きによって、クィーンの手数は一時的にではあるが使えなくなっている。
それは確かな隙きであり、シオンはスピードに乗ったままクィーンの左腕に向かって斬り込んだ。
二本の触手が迎撃してくるが一本は回避し、もう一本はミスリル製の
その間にクィーンは左腕で応戦してこようとするが、その前にシオンの
今までと違い、
アダマンタイトの
クィーンの腕を斬ってうしろへすれ違ったはずのシオンが、クィーンの正面から斬り込む。
シオンの動きを追っていたクィーンはその分だけ反応が遅れることになった。
さっきまで左腕の爪でシオンを切り裂こうとしてきていたのもあり、考えられるのは上からの鎌と右腕の攻撃。
ここまで連続した動きであるため、クィーンの手段もかなり限定的になっている。
クィーンが背中にある鎌を振り下ろしてくるが、これもまたシオンが消えてしまい地面に突き刺ささることになった。
そしてクィーンの斜めうしろ上空から空間転移でシオンが斬り込む。
うしろから鎌を斬り落とすつもりでシオンは斬り込んだが、質量的にあり得ないほどクィーンが体勢を倒してかわした。
シオンの
シオンはほぼ同じ高さになっているクィーンと一瞬にらみ合う形になるが、その一瞬でシオンの姿は消えてしまう。
アスラに苛立ちというものがあるのかは不明だが、クィーンは同じようなタイミングで触手を四方八方へと放った。
それは狙いなどあるとは思えないほどデタラメに放たれ、そのなかのいくつかはシオンが現れた先にも攻撃されている。
だが闇雲に四方八方へ分散してしまっている数ではシオンの足止めになりはしない。
触手を斬り落として突破するシオンを見て、クィーンが距離を取るために身体を沈めた。
案の定クィーンが跳ぼうとした瞬間、シオンは魔法を行使する。
一度力を溜めて跳んだ直後であるため、クィーンは動くことができずに右腕を振り下ろしてきた。
「――――」
振り下ろされたクィーンの右腕が落ちる。
側面に空間転移したシオンの
ただでさえシオンはスピードで優位であったが、そこに空間転移も使っているため圧倒的な状況。
さらにシオンは慎重に戦闘を進め、厄介であった手数を削っていく戦術を取る。
そこには油断など一欠片もなく、確実にクィーンを追い詰めていっていた。
「ディーナ総督代理、いけますぞっ! あのクィーンに圧倒的だ!」
ザイオンの司令が興奮気味に言っている。
さっきまでバトルフィールドは全滅してもおかしくはない状況。
ソルジャーの損耗率も現時点で三九%にまでなっている。
そんな状況からクィーンがいるバトルフィールドで立て直しているのだから、興奮しても不思議ではない。
「ええ。焦らず確実に追い詰め、前線も立て直すことができています。第三波の反応はどうですか?」
「はい、増援の反応はありません」
「ここでクィーンはなんとしても倒さなければなりません。第三波が出た場合、残りの後衛の部隊もすべて投入しましょう」
ディーナもさらに可能性のあることを予測し、この状況が動かないように出来得る限りの備えを持って状況を見守っていた。
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