第20話 司令室での決断
「了解しました――――――総督室へ繋ぎます」
オペレーターが告げると、数秒してメインモニターに総督ジョルディ・エイセルが映し出された。
『マルキン、ディーヴァから通信なんて珍しいな。なにかあったか?』
「問題が発生したため、私が繋ぎました」
『ディーナが?』
ディーナが行ったことだと告げると、総督の雰囲気は一段階険しくなった。
「現在我々はFランクバトルフィールドにて戦闘中ですが、二六分後にDランクのアスラ二二体と接敵します」
ディーナの説明を受けると、総督もこの緊急性にすぐ気づいたようだった。
『どうしてそんなことになっている⁉』
「隣国クラリオンのバトルフィールドで右翼が瓦解。クラリオンは後衛部隊を投入することで立て直しを図ったようですが、その際にDランクのアスラが我が国に離脱した結果です」
ディーナの説明は短く的確なもので、優先すべき必要な情報をすべて伝えていた。
『シュティーナを出して間に合うか?』
総督もディーナと同じ考えを持ったようで、司令室にいる者たちはSランクソルジャーの名前が出たことで表情が明るくなる。
だがそれも、一瞬のことだった。
「現着する頃には手遅れかと」
『まぁ、そうだろうな……。お前が連絡してきた時点で、選択肢がないってことだな?』
「そう思っていただいていいかと」
総督にしては珍しく苦悩した表情になっていた。眉間には深いシワを刻み、視線は横に逸れてなにかを考えていることが見て取れる。
『ディーナ、ディーヴァの離脱もできないんだな?』
「文字通りディーヴァ
『――――――わかった。現時刻を持って、バトルフィールドの指揮権をディーナ・リュシールに預ける。ディーヴァはディーナ・リュシール指揮の下アスラを殲滅せよ』
「「「「「「「「「「ハッ! 了解であります」」」」」」」」」」
『ディーナ、そこの者たちのことはお前の方で頼む。クラリス女王陛下へは俺から報告しておく』
こんなところでクラリス女王陛下の名前が出たことに、司令室にいた者は耳を疑うような目をしている。
だが総督はそれに触れることはなく、ディーナに念を押していた。
『わかっていると思うが、Dランクフィールドなんかで消耗させるわけにはいかん。Dまでだ』
「わかっています」
『ならいい。ビットの映像は……いや、いい。意味がないな』
「そうでしょうね」
総督との通信が切れ、すぐにディーナは命令を出していく。
「現時刻をもって、バトルフィールドの指揮は私が執ります。司令室の出入りは禁止。出入り口をロックして封鎖しなさい」
「は、はい! 了解であります」
出入り口が封鎖されたのを確認し、ディーナは言葉を続ける。
「これからここで私が口にすることは軍事、国家の最高機密に該当する。
貴君らはここで目にするもの、聞いたことに関する言動の一切を禁止。
当然詮索することも含め、これを破った者は如何なるものでも軍法裁判にかけられることを心するように」
「「「「「「「「「「っ!――――了解しました」」」」」」」」」」
一瞬ディーナの言葉に息を呑み、みな表情を硬くしていた。
「出撃しているソルジャーで、Dランクフィールドに出撃履歴がある者をすぐに抽出して」
「は、はい!」
ディーナはイヤーデバイスでシオンと回線を繋ごうとして、それを一旦中断する。
そしてシオンではなく、先にソフィアと回線を繋いだ。
「話せないでしょうから応答はしなくていいです」
『~~~~~~~~~~~~~』
「今から私はシオン様と話します。ソフィアさんからは話すことはできませんが、チャンネルを合わせて話の内容が聞けるようにしてあげます。
以前シオン様が特別なソルジャーだとあなたに言いましたが、それを現段階で話すことはできません。
ですから、ソフィアさん自身で見てください。今私があなたにしてあげられることはこのくらいです。
ですが、私はあなたの味方でいたいとは思っています……」
ディーナはソフィアとの回線を維持したまま、シオンへと回線を繋いだ。
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