第50話 あなたの小説はなぜ読まれないのか
「あなたの話はなぜ『通じない』のか」(山田ズーニー ちくま文庫)
という本があります。単行本が出たのは20年近く前の古い本ですが、コミュニケーション論として一読の価値ががあるとわたしが太鼓判を押す一冊なので、興味があったら図書館などで探してもらうといいと思います。
この本の冒頭は、会心の書き出しではじまります。
【「何を言うか」よりも「だれがいうか」が雄弁なときがある。例えば、同じニュースでも、どのメディアが言うかで、ぐっと印象は変わる。
ついに宇宙とのコンタクト(日本経済新聞)
ついに宇宙とのコンタクト(東京スポーツ)
いかがだろうか? 右の二つは同じことを言っている。でも違う意味に見えてしまう。】(前掲書10ページ)
ここまで読んだわたしは、膝を打ってなるほどと唸りましたが、みなさんはどうですか。ふたつの意味は同じですか? 違って見えますか?
日本経済新聞は、かつて経済立国を標榜していたこの国の「サラリーマンの一般教養紙」的な側面がありました。10数年前は、通勤電車の中で相当数のサラリーマンが、小さく折りたたんだ日本経済新聞を読みながら通勤していたものです。
かく言うわたしも一時、日経新聞を読みながら通勤していたことがあって(一般紙とは視点が違う[経済面から事件を読み解く]のでおもしろい)、そこで一般紙ではまだ影も形もなかった。アメリカのサブプライムローン問題が取り上げられていて、あのリーマンショック起こった後になって、
――やっぱり日経は経済紙だけあって、情報が早いわ!
とめちゃくちゃ感心したのでした。
一方の東京スポーツですが……。
東京スポーツは、東京スポーツ新聞社が発行する日本の夕刊スポーツ新聞である。その誤報・ガセネタ・飛ばし記事の多さから、「飛ばしの東スポ」の異名を取る。(Wikipediaより抜粋)
【飛ばし記事……事実確認していない記事】
軽く「東京スポーツ」で画像検索かけると、
「UFO大群 八王子に出現」
「衝撃写真 カッパ発見」
「プーチンをロケットで木星に飛ばせ」
などという見出しがヒットします。もちろん、東スポを読む人は、その記事を「おもしろいなあ。何割かでもほんとだったらいいのになあ」と楽しみながら読むわけです。だから、嘘を書いているのではない 笑
こういう風ですから、同じ「ついに宇宙とのコンタクト」という見出しが踊る記事ではあっても、日経なら「本当に?」と信じたくなりますが、東スポなら「いつもの飛ばしだろ」とハナから疑ってかかるでしょう。日経の記事は読んでもらえるけれど、東スポの記事は読んでもらえない(信じてもらえない)のです。
同じニュースなのに。どうしてか? 日経と東スポでは何がちがうのか。
山田ズーニーさんは、それを「メディア力」の違いだといいます。メディア力とは、すなわち読み手から信頼されている度合いのことです。読者は、信頼している発信者から発信されて、はじめて受け取ろうという意思を作るもの――なんですね。
いくら正しい記事や、ためになる記事を書いたところで、発信者である書き手が読み手から信頼されていなければ、その記事は読み手のもとに届かない――あなたの話を聞いてもらうためには、あなたと相手との間に信頼関係を作りましょう――という内容の本なんですね。
☆☆☆
こんなにおもしろいオレの小説が、なんで読まれないんだよ〜。カクヨムのあちこちから日々ため息が漏れ聞こえてきますが、要はこういうことなんですよね〜。
それは、あなたにメディア力がないからだ。……いや、あなたにじゃない、わたしにだな! なかなか読まれないからね〜小説、大変失礼、自分のことでした。
メディア力、信頼度を上げる?
いつも読んでくれる人以外を相手に?
エッセイではなく、小説で?
うーん、難題だ。六年やってきてこれですからね。爆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます