第41話 創作の秘密

 またNHKプラスからネタをひいてきます。

 昨日、「アナザーストーリーズ」で往年の人気マンガ「北斗の拳」が取り上げられていたようです。あと、「NHK特集『手塚治虫 創作の秘密』」という昔のドキュメンタリーを6日に放送されたようですね。昨日の夜から今朝にかけて、NHKプラスで観てました。


 まず「手塚治虫 創作の秘密」は、漫画の神様といわれた手塚治虫、晩年の創作の様子をテレビカメラが追ったドキュメンタリー番組です(1986年)。


 どういう風にマンガを描くか、漫画家のペン先を追ったドキュメントというよりは、手塚治虫が24時間、マンガ(アニメ)を描いてばかりいる、寝る時間を削って締め切りギリギリまで妥協せずに、良いマンガ(アニメ)を作ろう苦闘している姿を追った番組でした。


 45分という短い番組ですが、手塚治虫の創作の「凄み」が伝わってきます。移動中のタクシーの中でも、飛行機の中でも、自身が出席するパーティの会場ですら、連載中のマンガの原稿を描いているのをカメラは追い続けていました。


 死ぬ前の最期の言葉も「仕事をさせてくれ」だったそうですから、手塚治虫の創作に対する熱意には鬼気迫るものあったと言えるでしょう。真似することはとてもできませんが、なにかとても感動しました。結局、「神様」手塚治虫の創作の秘密というのは、ずっと創作のことを考える、だれよりも創作し続ける――ということなんですね。


 ――おれも、もう少しがんばってみよう。


 そう思いました。





「アナザーストーリーズ」で取り上げられた「北斗の拳」は、「週刊少年ジャンプ」で1983~88年に連載された人気マンガです。


 無政府状態となり暴力が支配する核戦争後の世界を舞台に、伝説の暗殺拳・北斗神拳の伝承者ケンシロウが、兄でもあるラオウら強敵たちと拳を交え、成長していく姿を描いた格闘マンガです。


「おまえはもう死んでいる」


 当時、「北斗の拳」のセリフを口にしながら友達同士「経絡秘孔」を指で突き合う遊びが、中高生に流行りました。もちろん、わたしもさんざん秘孔を突きましたよ(爆)


 作画担当・原哲夫さんの絵には驚きました。核戦争後の荒廃した世界で、人間離れも甚だしいキャラクターたちが繰り出す超人的能力の数々。下手をすればギャグマンガにしかならなかったはずですが、説得力のある緻密な作画と物語をマンガに落とし込む抜群の再構成力で「北斗の拳」はリアリティを失わなかったですからね、すごいです。


 原作担当・武論尊さんの物語には泣きました。めちゃ泣ける。「北斗の拳」を通して読むと、物語には長期的な視点に欠け、行き当たりばったり、設定や理屈は強引な後付けであり、物語創作の「悪い見本」でしかありませんが、異様な熱量で描かれるキャラクターの情感に読者は引き込まれてざるを得ません。無理矢理感動させられる感じ(笑)主人公・ケンシロウの最大のライバルであるラオウなんて、初登場時と連載終了時とでは善悪反転の別キャラみたいですから。


 物語が破綻しているのは明らかだけど、おもしろい。支持するし納得できるっていうのは、創作者にとって最大級の賛辞ではないですかね? わたしは武論尊さんにそれを惜しみません。




 マンガってすごいなあと、思ってる土曜の朝でした。

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