第48話 彼女のためなら待ち時間も退屈しない
僕達は早速、海水浴場に移動すると水着に着替えて、明日香達、女性陣が更衣室から出てくるのを一樹と浜辺で待っている。
「なあ、一樹」
「何だ?」
「僕は今までこうやって浜辺で彼女が着替えてるのを待ってる男を見て、何が楽しいのか分からなかったけど、いざその立場が来ると分かる。こうやって待ってる時間が全く苦じゃなくて楽しいもんだなって気づいたよ」
「だろう」
時々吹いてくる潮風が気持ちいい。こんなに清々しい気持ちは初めてだ。それにしても一樹は余裕そうだ。僕は明日香がどういう水着で来るか気になってしょうがないのにやっぱり一樹はこういうことになれてるのか。
「やっぱ一樹はこういうのに慣れてるのか?」
「そう見えるか?」
「見えるね。それに一樹は今までこういう経験したことありそうだし」
「確かに過去に女友達と海やプールに遊びに行ったことはある」
「このリア充めっ!!」
僕は思わずツッコんだ。
「話は最後まで聞け。それにお前も今は十分にリア充だからな」
僕が黙ったのを見て一樹が一つ咳ばらいを挟んだ。
「とにかく、何とも思ってない奴はどうってことないんだが、翔琉も知ってるっと思うが、加奈は初めてできた彼女だ。その彼女が俺のために水着に着替えるのを待ってるんだぞ。緊張してるに決まってるじゃないか。そう見えないように見せてるだけだ」
僕は一樹も同じ気持ちなことにホッとした。
「おまたせ~!」
更衣室から加奈が手を振って出てくる。
一樹は加奈の全身を見るように下から上を見て緊張のあまり固まっている。
やっぱりさっき言ってた通り好きな人のあられもない姿で緊張するんだ。水着でこれだとその後が大変そうだな。
固まってる一樹を見て面白そうに頬角を上げると加奈は一樹に聞いた。
「私の水着、どう? 似合ってる?」
「あ、ああ、似合ってるよ」
「そう。ありがとう」
加奈の水着は、胸元をセクシーに強調するクロスデザインで、スカート部分はショートパンツと一体型のデザインで色は黒だ。胸元を大胆に強調するデザインの所為か、一樹が目のやり場に困っている。加奈も分かっててやってそうだが。昔から大胆な格好してたからな。
「お兄、私たちはどう?」
そう言って現れたのは、葉月とひよりちゃんだ。二人とも、柄が違うだけで同じ水着のようだ。葉月は、ワンピースのオールインワンで淡いパステルカラーと小花柄、ギャザーとフリルが付いている。そして後ろ姿は大胆なレースアップで可愛らしさの中にちょっぴりセクシーさが同居するデザインだ。ひよりちゃんは葉月と同じタイプの水着でピンクの花柄を着ている。唯一違うところは、ひよりちゃんは大きい胸が強調していることだ。服の上からでも分かるぐらいだった胸が水着だとさらに強調することに。それに比べて葉月は・・・・・・
「お兄。考えてること分かるからね」
僕の視線に気づいたのか葉月がジトッとした目で見てくる。
「別に気にしてないからいいけどね。まだまだ成長途中だし」
葉月は自分の胸をモミモミしている。その動作ちたいが気にしてるのではと思ったけど野暮のことは言うまい。
後は明日香だけだ。
「加奈。明日香はまだかな?」
僕は待ち遠しくて聞いた。
「着替え終わってるはずだけど確かに遅いわね」
「加奈ちゃ~ん」
明日香の声がしてみると更衣室のところから顔だけ出して恥ずかしそうにしている。
「何かあった?」
加奈が明日香のところに向かっている。
「何だ。着替え終わってるじゃない。早く来なさいよ」
「だけど恥ずかしい」
「見た目はギャルなのに中身は純情過ぎない。だけどこのギャップがかえていいのかな。後で翔琉に聞いてみよう」
「変なこと言わないでね!!」
加奈の呟きが聞こえたのか明日香は翔琉に変なことを吹き込まれると思っただろうか。
そんな明日香を見て加奈は仕方ないという顔をして、水着の上から着れるカーディガンを渡す。
「恥ずかしいなら上から羽織っておきなさい」
明日香は加奈から渡された花柄のロングカーディガンを羽織ると恥ずかしそうに僕達の前に来た。
「じゃあ遊ぶわよ。何する? 向こうにバナナボートのレンタルあるみたいだから行ってみる?」
「私も乗ってみたいです」
「私もやりたい」
「じゃ、行きましょう!」
加奈の鶴の一声でバナナボートに乗ることが決まり、加奈たちが歩き出した。僕も行こうかなとしたとき明日香に手を掴まれる。
「どうしたの?」
「(翔琉君には後でちゃんと私の水着姿見せるからね)」
そう言って耳元で囁いた明日香は耳を真っ赤にしながら加奈達の後を追いかけていった。僕はあまりの出来事にその場を動けずに明日香の後姿を眺めることしかできなかった。だけどこれだけは言える。僕の彼女は今日も可愛い!!!
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