20:第一皇女襲来
とりあえず一日が過ぎた。
放課後、桃依先生から呼び出された俺達は保健室脇にある「健康指導室」なる場所にいた。俺と馨も平均に及ばない身長だけど、先生は本当に小さい。馨と神奈川さんで「幼児体形ガールズ」を名乗っているけど、桃依先生は間違いなく加入する資格があるし、リーダーになれるだろう。
「鬼城院君、君の精液を調べさせて貰ったけど」
保健の先生だけあってストレートな物の言い方だ。一緒に聞いている馨は顔が赤い。
「人間の感覚で言えば全然問題ないね。量も充分だし、元気いっぱいに動き回っていたよ」
そう言われると嬉しいけど、もの凄く恥ずかしいのは俺が未熟者だからか。
「これが人間相手なら沢山子孫を残せるんだけどね。エルフだとどうかはわからないわね」
個人的にはそんなに沢山子供がいても育てるのが大変だと思うから、そこそこでいいんですよ。
「でもね、人間相手じゃ何もできないものね。エルフだと……この間見た限りじゃ能条さんも普通の人間と変わらないみたいだったからきっとできないわよね」
え、馨の大事なところを見たの。当の馨はマグマのような赤い顔をしている…エルフ化してからは俺だって全然見てないというのに。
だいたい、膨らみ防止のための薬を飲んでいるのにあれからキス一つできていない。二人きりになる機会が少ないのもあるが、貧血がトラウマになってどこか積極的になれなくなっている。
「まあ、あなた方は薬さえ切れれば元に戻れるだろうから、しばしの我慢だと思うけどね。元に戻ったら避妊はちゃんとしてね」
この先生には何もかもお見通しなのだろうか。返す言葉もない。
部室に戻ると雛子先輩ともう一人、見覚えのない女子がいた。
おかっぱの髪に極太フレームの眼鏡、制服の上からはプロポーションがわからない体形、真面目そうだけど、どこか掴めない妖怪のような雰囲気を醸し出している。
「はじめまして」
彼女が挨拶をした後、俺の身体の臭いを嗅ぐように鼻をヒクヒクと動かす。続いて馨のことも。
「あの~」
「うん、ちょっと待って」
妖怪というかアブナイ感じがプンプンしている。
普通なら近寄ってはいけない人だと思っているだろう。
だが、今は俺自身がどこの誰よりも怪しい存在だからかあまり気にならない。何となればエルフの能力で相手を圧倒できる自信もある。
「俺や馨におかしなところがありますか」
だから冷静に対峙できている──はずだった。
「ううん、おかしくはないよ。でも、私の鼻は間違っていなかったね」
そう言うが早いか、俺の腰にタックルをするように手を回し、尻尾を撫でられる。
「ふふ、これが動かぬ証拠ね」
「何をするんですか」
「あなたが本当にエルフかどうか確かめただけよ」
咄嗟に体を捻り、手を振り切ろうとするが、ギュッと強い力で掴まれる。女性のそれではない。
「
雛子先輩が女性を割と強い口調で諫めると、彼女は渋々といった様子で手を離した。
「先輩、この人は何なんですか」
「鬼城院君だっけ、失礼したわ。本物のエルフの男性を見て興奮しちゃったの。何せ千年に一人生まれるかどうかと言われている貴重な個体だからね」
は、千年に一度?何訳のわからないことを言ってるんだ。大体俺は本物のエルフじゃないし。
「君を見ることができただけで、私は全ての運を使ってしまったのかも知れない。エルフの男性が最後に確認されたのは千年以上前の話だもん」
この人何を言ってるんだ。大体エルフの歴史なんて知っている人間がいるのか。
「永指さん、鬼城院君が戸惑ってるじゃない。能条さんも固まってるわよ。ちゃんと自己紹介をしないと」
「ああ、そうだったわね。私は
名前も行動も面倒な人が現れた。
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