11:病院へ
「ねえ、起きて、起きてよぅ……」
この声は、馨か…
「良かったぁ、目が覚めた」
もの凄い下半身の違和感と共に意識が戻った。
身体を起こせば馨と先輩がいる。しかも二人は涙目をしている。
「んっ」
下半身はモロに裸だ。そして臍の辺りが濡れている感覚がある。漂っている臭いはモロに白濁液のそれだから、状況は何となく察した。
「待ってて、今綺麗にするから」
馨がタオルで俺が出したものを拭き取っていってくれる。前屈みになると目の前に巨大なモノが揺れていて、否が応でも意識してしまう。
「ああ、ダメ、また気絶するわよ」
ちょっとだけ元気になったところで、気絶というパワーワードを聞いたら一気に萎えた。それと当時に猛烈な尿意を感じたので、急いでトイレに駆け込んだ。
裸だから間に合ったが、パンツを穿いていたら中から出すのが大変で粗相をしていたかも知れない。毎日がこれかと思うと頭が痛くなる。
「良かった…グス…意識が戻って本当に良かった」
トイレから出ると馨が抱きついてくる。スポーツブラで隠れてはいても巨大なそれがフニャリと俺の胸に当たる。もちろん経験したことのない感覚で、またまた下半身が元気になりそうになる。
「能条さん、それ以上は」
先輩に止められ、離れたらお互いの体に目をやる。
馨の胸は昨日よりも大きく感じるし、そのせいもあってウエストの締まりが半端なく見える。腹筋が強調され、胸の周辺で感じる柔らかい印象と臍の周りにある鋼のような筋肉とのコントラストが凄い。
「また一段と凄くなってる」
「悠生だって」
よくよく見れば胸以外が全身筋肉質になっているようで、足も腕も太く逞しくなっている。今までの馨を知っている人間が見れば、間違いなく別人だと思うだろう。
自分自身に目をやれば、ぶら下がっているモノは別としてカラダ全体に筋肉が太くなっている。特に二の腕は以前の倍くらいはあるだろう。握力など詳しくはわからないが、今までよりは遙かに強くなっているだろうこと位はわかる。
更に言うと俺も馨同様頭髪以外の毛は全て抜け落ちている。ツルツル状態と着いているモノの巨大さがアンバランス過ぎると感じる。子供が書いたおかしな漫画のようだ。
「コホン、二人とも聞いて欲しい」
先輩が真顔で話しかけてきた。
「今日は二人のことを色々と調べさせてもらいたい。私の家の病院を予約してあるので朝ご飯を食べずにそちらに移動するから、よろしく」
「先輩の家って病院なんですか」
「うん、本宅はそっちだよ。今はあまり帰らないけどね」
そう言えば、誰かが先輩のことを大病院のお嬢様だと言っていたことを思い出した。
「だから悪いけど隣の駅前にある病院まで来て貰いたい」
駅前の病院って、確か界隈一の病床がある所だったはず。それとあそこはかなり大きな医療法人チェーンの本部があった…まさか。
「あの~、つかぬ事を伺いますが、先輩の親御さんは、あの『医療法人 疫学・理学・易学研究会』の関係の関係の方なのですか」
「うん、父親が理事長で母親が会長をしているけど」
あっさりと言われたけど、この人とんでもないお嬢様じゃないか。だから学校にも無理が利くし、病院なんかも自由になるのだろう。確か俺が通う学校の筆頭理事が先輩と同じ名字だったことを思いだした。
そんなこんなで軽い朝食の後、面倒な着替え(既製のズボンだととにかく股がキツいし、突起が目立つ)をしてからタクシーで検査会場に向かった。
一般の入り口ではなく、通用口のような所から建物のドアを開けると白衣を着た人達が整列し、一斉に頭を下げた。
「「「「お嬢様、いらっしゃいませ」」」」
綺麗にハモって、挨拶をされると普段そういうことに慣れていない人間としては非常に気まずい。どこにでもいるような高校生の俺なのだからそんな気遣いはしないで貰いたいのだが、
「出迎えありがとう。お仕事に支障が出ないようにほどほどにして下さいね」
「お気遣い有り難うございます」
挨拶をした人の中で一番偉そうな人に対して先輩は一切物怖じせず堂々としている。
「それでは行きましょう」
先輩に促され、とても場違いな雰囲気の中、俺達は病院に案内されたのだった。
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