2周目 最終話 破壊の魔女

最終話 破壊の魔女①

 謎の突風により、半ば強制的に洞窟の外に追い出された一行。


「一体何だったのでしょうか」

「……無い」

「無いって、何が無いのです……か」


 無くなっていた。

 先程までいた洞窟が。

 視界に写るのは、広がる海に薄気味悪い空。


「……まさかだと思いますが、私たち」

「そうかもしれないし、違うかもしれない」


 サクラとメニシア、二人そろって考えが一致していた。

 あの老人に騙されたのではないかと。


「いや、でもわかりませんよ。おじいさんも言っていたじゃないですか。薬草採取をしていたら突然洞窟が現れたって。今回もそういった類のものかもしれませんよ」

「それもあるし、本当に騙された可能性もある。でも今は、ここはどこだということと、この建物が何なのかを知る必要がある」

「建物ですか?」


 メニシアが振り向くと、そこには城のような大きな建物があった。

 とても美しい建物だった。

 実際にお姫様が住んでいるのではないかと思ってしまう程に。


「何なのでしょうか、この建物……」

「わからないけど、現状手掛かりがあるとすれば、この建物しかない」

「そう、ですね」


 正直なところ、メニシアは嫌な予感がした。

 アビルや魔鏡と戦った時以上にだ。

 それはクオンも同じようだ。


「シャー!」


 クオンは完全に警戒している。

 それを見たサクラも、人生最大級に警戒している。

 それだけ、この城には何かがあるのかもしれない。


「……行こう、メニシア、クオン」

「わかりました」


 サクラとメニシアは城に向かう。

 クオンもさくらのすぐ横に付いて行く。




 城のの入り口正面の前に立つ。

 見張りがいるような気配もない。

 そもそも中から気配そのものが感じられない。

 鍵も開いており、サクラは慎重に中に入る。

 中に入っても、やはり人の気配を感じない。


「メニシア、一応短剣を構えて」


 そう言ってサクラは刀を構える。


「わかりました」


 サクラの言う通りにして、メニシアも短剣を構える。


 サクラたちがいる場所は大広間だった。

 奥には扉がある。

 周りには左右それぞれ半螺旋状の階段があり、一階よりさらに大きな扉があった。


「一階と二階、どちらから行ったら良いのでしょうか……」

「二階じゃない? 知らないけど」


 入ったは良いが、ヒントも何もない状態で入った二人だが、クオンだけ違った。

 クオンは、大広間奥の扉に向かって走って行った。


「クオン!?」


 戸惑うサクラに対してメニシアは「行きましょう」と冷静に伝え、クオンに付いて行く。

 サクラもすぐに気持ちを切り替えて後を追う。


「ニャ―」


 クオンが扉を指すようにしてひたすらに鳴き続ける。


「この先に何かるのではないですか」

「クオンの反応を見る限りだとありそう」


 この扉も、入り口同様鍵が開いていたので、簡単に開くことが出来た。

 扉の先は長い廊下がひたすら奥まで続いていた。

 開いた瞬間にクオンは、そのまま走って行った。

 それを二人は追いかける。




 全力で走った訳ではないが、それでも走り続けるのは疲れる。

 クオンがようやく止まったのは、廊下の奥、とある扉の目の前だ。


「ここなのでしょうか、クオンの来たがっていた場所は」

「……」


 サクラは無言で扉を開けようとする。


「……開かない、鍵が閉まってる」

「どうしましょう……というより今さら良いのでしょうか」

「なにが?」

「私たちって、一応不法侵入ですよね」

「……」


 メニシアの言う通り、この城に人がいようがいなからろうが、不法侵入であることに変わらない。


「……扉切るか」

「逸らさないでくださいよ!」

「でも、僕も少し気になるかな、ここまでクオンが反応するんだから」


 そう言ってサクラは、扉を切った。


「やはりそうなりますよね」


 結局強引に鍵を開けた? ことに何故か安心感を覚えたメニシアであった。




 早速部屋に入る。

 そこは……何というか、いわゆる普通の部屋だった。

 ただ、広さ的には割と広いが、それでも中は至って普通だ。


「寝室?」

「多分そうだよ、ベッドもあるし」


 サクラはベッドに近づく。

 すると、ベッドの横にある机には写真立てがあり、一枚の写真が飾られていた。

 それを持って見たサクラは……。


「えっ?」


 今までにないくらい衝撃を喰らったような感覚に襲われ、思わず持っていた写真立てを落としてしまった。


「どうしましたか、サクラさん」


 メニシアとクオンは、サクラの元に近づく。


「写真立てですか……これは家族写真ですかね」


 メニシア、そして先程見ていた写真は家族写真。

 お父さんとお母さん。そして小さい黒い長髪の女の子が写っていた。


「この人たち、物凄く良い笑顔でとても幸せそうで羨ましいですね」


 メニシアの言う通りだ。

 本当に幸せを体現している、それを感じられる写真だ。


「あれ?」


 ここでメニシアはとある疑問が生まれる。


「この女の子、どこかで見たことあるような……」


 既視感があるのだ。

 ただ、どのタイミングだったのかはすぐに思い出せた。


「あ、もしかしてサクラさん?」


 そう、サクラの方に視線を向ける。


「サクラさん?」


 サクラはというと、下を向いて小刻みに体が震えている。

 そんな時だ。


 突如、床に魔法陣が出現した。


「え?」


 戸惑うメニシア。

 サクラは反応していない。

 だが、どちらにしろすでに遅かった。

 魔法陣が出現し、それに気付いた瞬間、すでに別の空間に転移していた。

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