第10話 ゼオンの目標は?
「目標かぁ……」
言われてみれば、特に考えたことなかったな……
「ウォルクはどうなんだ?」
思いつかないので、取り敢えず聞き返してみる。
「俺は……孤児院に恩返しを続けて、普通の家庭を築いて生きる……かな」
「結構、曖昧な答えだな」
「将来のことなんてそんなもんだろ? 今からこの答えを持つ必要なんてないし、大体でいいんだよ」
ふむ……そういうものか。
「それなら……このまま冒険者を続けて色んな経験をするとかかな」
「冒険が好きなのか?」
「いや、『男といえば冒険者だろ!』みたいな?」
「あはは、なんだよそれ」
結局、冒険者になった頃と俺の思考はあんまり変わってないな。
「それにしても、俺、初めてウォルクが年上っぽいこと言ってきたなと思ってる」
「反論できねぇ……」
「……クククッ、ハハハッ」
「プッ、ハハハッ」
俺たちは一頻り笑いあったあと、眠りについた。
♢
翌朝、宿の裏庭でノーラさんと雑談しながら、木剣でのウォルクとの軽い手合わせを終える。
その後、部屋に戻って少し経つと、部屋にノック音が響き、ドア越しに隣の部屋にいたサラが冒険者ギルドに行く準備を終えたと伝えてきたので、俺たちは食堂で食事をとってから、冒険者ギルドへとやってきた。
「ん? なんかギルドの中が騒がしいな」
「何かあったのかな?」
ギルドの中へと入ると、いつもよりも緊迫した空気が漂っていたので、事情を聞きにおっさんの受付へと向かった。
「おっさん、これは何の騒ぎだ?」
「おぉ、お前らか。まだ知らなかったのか、実はな……ドラゴンが、出たんだよ」
「ドラゴン!?」「マジかよ……」
ドラゴン———。
それは魔物の中でも最強種と言われている。
強靭な身体、鋼鉄よりも硬い鱗、そして強力なブレスを持つ。
また、寿命の概念がないとも言われている。
圧倒的な力を持つ故に、人間も魔物も等しく虫ケラ程度にしか思っていないらしい。
「それはドラゴンと戦う理由があるってことですか?」
そう。突然、理由もなくドラゴンが襲ってくることなどあり得ない。もしそうだったら、とっくにこの街はドラゴンたちに滅ぼされているだろう。
「一ヶ月前にな、魔の森にCランク冒険者たちのパーティーがある薬草を取りに行ったんだが……」
「ん? Cランクなのに薬草ですか?」
「ああ、森の奥に行くほど多く生息している薬草でな……だから、その冒険者パーティーが行方不明になったのは珍しいことじゃなかった」
あぁ、欲張って魔の森の奥深くまで行って、強い魔物に殺されたんだと思われたんだろうな。
「だが、その後その依頼を受けた冒険者が何人も行方不明になってな……そこで、その薬草の主な群生地とされている、ある大穴の下への調査の指名依頼をギルドから隠密の得意な斥候に出したんだよ」
そこでおっさんは小さな溜息を吐いてから再び話す。
「それでだな、慎重を期して離れた所から観察していたら、ドラゴンが飛来してきてその大穴に入っていったらしいんだよ」
「ドラゴンか、見てみたいなぁ……」
「そんなこと言っていられるような状況じゃなくてな。しばらく観察していると、ドラゴンはそこを何度も行き来していたんで、その大穴を巣と断定したそうだ」
おっさんが神妙な面持ちで告げる。
「でもさ、ドラゴンって俺たち人間なんてどうでもいい存在なんだろ? 別にドラゴンを気にする必要はないんじゃないのか?」
俺の言葉に同意するように、隣のウォルクとサラが頷く。
「ああ、普通はドラゴンが巣から去るのを待つものなんだが……最初にヤツを見た時、ヤツの口には既に事切れた冒険者が咥えられていたそうだ」
「そんな……」
サラが動揺した声を漏らす。
「ドラゴンに殺されたのはその斥候が可愛がっていた後輩冒険者だったらしくてな。その日は魔の森の手前で活動していたらしいんだが……」
「つまり、ドラゴンは魔の森の浅い地点まで来ていた、ということか……」
「そういうことだ」
一度人間を殺した以上、またやらない保証はない。だから、早めに対処———今回の場合、討伐———をしなければならないというわけだな。
「今のドラゴン討伐への参加状況を教えてくれ」
「ああ、ちょっと待ってくれ———」
おっさんがテーブルの上の書類の山を漁り始める。
その間に俺はウォルクとサラの意見を聞くことにした。
「俺たちはどうする? 俺はBランクになったことだし一人でも参加するつもりだが……」
「俺たちはパーティーだろ! ゼオンが行くんなら付いて行くぜ! ドラゴン討伐は男のロマンだしな!」
「私たちがランクアップしてからの初陣だね!」
聞くまでもなかったか……
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