第103話 この程度でやられるわけないじゃないか①

 俺は仲睦まじいエレノアとサラを横目に残りの奴らに説明していく。


「今回はlevelを上げる効率を取ったからまだ体が自分の思い通りに動かないだろう。だから俺との模擬戦で強化された体に慣れてくれ。皆んなも体を動かしたいだろ?」


 俺がそう言うと、皆んなが頷く。


 どうやら大分自分の思っているように体が動かないことに苛立っていたのだろう。


 皆んな早く体を動かしたいようでムズムズしている。


 かく言う俺も今は兎に角八つ当たりをしたい気分だ。


 だって俺やエレノアはめちゃくちゃ頑張って強くなったのにさ、皆んな簡単に強くなっているんだぞ?


 それもめちゃくちゃいい魔道具を使って楽にさ。 


 まぁサラは良いんだよ?元々そのうち強くする予定だったし。あとぎりぎりシューマも。


 でもアランとかは正直俺を苛立たせてしかしてないじゃん?セリシア先生はともかく。


 そんな奴らのためにわざわざいい魔道具を使わないといけないなんて。


 まぁ勇者たちを強くするのが後々俺達の得になるのは分かっているけどさ、嫌なものは嫌じゃん?


 こいつら全く俺に感謝していないし。


 なので体を慣らすという名目の元、俺の八つ当たりに付き合ってもらうことにした。


 後俺がどのくらいの力を出せばいいかを知るためでもあるが。


「それでソラ君、いつから始めるんだい?」


 何も知らないアランが俺に聞いてくる。


「ん? 俺はいつでも良いぞ」


 俺はサラとエレノアの方を見ながら答える。


 今サラとエレノアが訓練?みたいなのをしている。


 まだ動きはぎこちないものの、level UP前よりも動きにキレがあり、身体能力も上がっていた。


 よしよし、これでサラも大抵のことなら自分の身を守れるな。


 まぁ出来ればその機会は訪れないで欲しいものだ。


 俺がそんなことを思っているとシューマから声をかけられる。


「俺たちは準備出来たぜ☆ 早くやろう!」


 俺はもう少し見ていたかったなと思いつつも後ろを向くと既に皆んな装備も着ていて準備万端だった。


「……早くやるぞ。お前は準備しなくていいのか?」


 そんなことをレオン阿呆が抜かす。


「別に俺はいつでもいいと言ったはずだぞ。やるならとっとと来い」


 俺は八つ当たりよりサラとエレノアの訓練を見ていた方がいいことに気がついたんだよ。


 と俺は思っていたのだが、どうやらめちゃくちゃ煽りに聞こえたらしく、レオンに青筋が立っている。


「ッ! アラン!」


「そうだね。流石に装備なしではソラ君でも危ないと思うけど……。でもソラ君がそう言うんだしもう始めよう」


「よ、よ~し、俺もが、頑張るぜ~」


「…………」


 アランとレオンはやる気のようだが、シューマは完全にビビっている。


 そしてセリシア先生は隙なく剣を構えている。


 どうやらアランとレオンは俺の実力を舐めているようだな……。


 あそこで見せた筈なんだけど……。


 まぁあんなので怖気付いてたら勇者なんてやってられないか。


 ———だがムカつく。


 やっぱりここは八つ当たりさせてもらおう。


 主にアランとレオンに。


「それじゃあ始める。いつでもこい!!」


 俺がそう言うとまずシューマが【シャイニングレイ】を放ってきた。


 こいつはガチだな。


 更に魔法に隠れてセリシア先生が接近してきた。


 中々いい連携だ。


 しかしこの程度では俺に傷なんてつけれんな。


 俺はなんの強化もせずに少し右にずれる。


 それだけで魔法は俺に当たることなく、セリシア先生の不意を付ける。


「なっ!?」


 俺は先生の剣に魔力を当てて跳ね返す。


 それで大きくのけぞった先生の腹に蹴りを入れ、すぐさまシューマに近づく。


「くっ———【オーロラレイ】ッッ!!」


 シューマが最上位魔法を撃ってくるが、魔闘気を纏わせた拳で消し飛ばす。


 そしてそのままシューマの背後に回るが———


「分かってんだよっ! はっ!!」


 シューマが振り向き様に短剣を横薙ぎしてきた。


「ッ——やるじゃないかシューマ」


 俺は一瞬で後方に避けて言う。


「俺にばっかり気を取られていてはダメだぜっ!」


 シューマがそう言った瞬間。


「はぁああああああ!」


 後ろで先生が剣を振りかぶっており、振り返った時には既に振り下ろされている最中だった。


 確かにシューマばかり気を取られていではダメだな。


 まぁ———


「勿論把握していたんだが」


 俺は先生の剣をいなし足を引っ掛ける。


「うわっ!?」


 先生が体勢を崩したところで再び腹に蹴りをお見舞いする。


 今回は先程よりも強く蹴っているため、先生は一瞬で吹き飛び壁に激突する。


「せ、先生!」


「呼んでも無駄だ、既に気絶している。そしてお前も終わりだ」


 俺はシューマが先生に気を取られているうちに背後に周り、めちゃくちゃ格下でなければできない首トンをして気絶させる。


 この攻防に費やした時間は僅か数十秒ほど。


 俺はシューマと先生を回復ポーションで治して壁にもたれかける。


 それを終えると俺は後ろを振り返って、


「さて、次は——お前達だ」


 先程全く動いていなかったアランとレオンに向かった。



---------------------------

 フォローや☆☆☆→★★★にしてくださると嬉しいです。

 勿論★でも作者は喜びますのでよろしくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る