第90話 そう言えばゲートなんてものがあったな
「ソラ様! この先に3体砂の中に潜んでいます!」
「俺も把握済みだ! エレノアは———」
「上空のモンスターですね! 分かりました!」
エレノアはわざと隙を見せてロック鳥を地面まで誘き寄せる。
それにまんまと掛かったロック鳥はエレノアを掴もうと足を広げて迫る。
そして後少しと言うところでエレノアが動く。
「———【世界同化】」
「クルァ?」
最初よりも更に世界に溶け込んだエレノアは、既に下位種のカンストモンスターにすらも感知できなくなっていた。
突如標的を失ったロック鳥は地面に降り立ち右往左往している。
誰の目から見ても隙だらけにしか見えない。
そんな隙をエレノアが逃すわけもなく、
スパッ、ズドン。
一瞬でロック鳥の首が落ちる。
何度見ても見事な戦いだなと思う。
相手を翻弄して戦う、正しく王道の暗殺者だ。
「ソラ様、此方は終わりました!」
エレノアは既に戦闘体勢を辞めており、自然体だ。
よし、そろそろ俺もやるとするかな。
俺は砂に隠れていると言う(蟹のようなモンスターだろう)敵は既に俺も感知済みだ。
しかしわざわざ出てくるのを待つのもめんどくさい。
「【神気】発動。———神技【
地面に向かって神技を放つ。
地面が一瞬にして消滅する。
《level UP》
俺の頭にlevel UP音が響く。
どうやらちゃんと倒せたようだ。
「お見事ですソラ様。取り敢えず近くにモンスターの気配はありません」
「ありがとうエレノア。なら先を急ごう」
俺たちは再び元来た道をエレノアを横抱きしながら【全力ダッシュ】スキルを使って爆速で戻る。
何故これほど急いでいるかと言うと、当初の原初の森滞在予想日数よりも大きく上回ってしまったので、呑気にしていたら始業式に遅れてしまうからだ。
たまに弱いモンスターが俺の垂れ流している魔力と風圧で死んだりしているので経験値稼ぎにも少し貢献している。
「ソラ様、そう言えば転移石などの転移系魔道具はないのですか?」
エレノアがふと思い出したかのように言う。
俺は急ブレーキをかける。
「ふわっ!? どうしたのですか、ソラ様!?」
エレノアが素っ頓狂な声をあげて俺に聞いてくるが、少し待ってもらいたい。
「そうだよ、あったじゃないか! ナイスだエレノア!」
「あ、ありがとうございます……? それで、な、何があったのですか? もしかして持っていたのですか?」
「いや持ってない」
俺に横抱きされているのに器用にガクッとなるエレノア。
「じゃ、じゃあ何があったのですか?」
「いやそう言えばこのエリアにはゲートって言う古代人が設置した転移装置があるんだよ。すっかり忘れてたわ」
ゲームではこのエリアが無理だと感じた人がよく使うゲートが存在した。
設定では古代人が行き来するための装置ということになっているが、この世界でも本当なのかはよく分からない。
そもそも俺は一回くらいしか使ったことがないんだよな。
「だが、あると分かれば今すぐ行こう。エレノア、再びよく掴まっていてくれよ」
「は、はいぃぃぃぃぃ!!」
俺たちはゲートのあるであろう場所へ爆速で向かった。
☆☆☆
「ソラ様の……お姫様抱っこは怖いです……」
「ごめんなさいエレノア。いやほんとにごめんって。砂漠には出来るだけいたくないと思ってたからさ。ほんとごめんなさい」
「次からは本当にやめて下さいね……」
「お、おう、やめると誓おう」
「はい……」
エレノアは俺が振り回しすぎたせいで少々グロッキーになっているようだ。
このゲートはどこに続いているかと言うと、王国のはずれにある森の中に隠れるようにして設置されている。
なのでエレノアの体調が元通りになるまで待っていても全然時間的には大丈夫だろう。
正直ちょっとどころか、結構悪いと思っている。
自分も昔苦手だったジェットコースターを周回したらこんな風になるだろうなと思ってしまった。
帰ったら何かして労おうと思う。
「もう大丈夫です」
エレノアが復活したのはここに着いて30分ほどだった時だった。
「よし、なら帰ろうか。あ、それと今度の休みに俺にして欲しいことがあったら何でも言ってくれ」
「えっ? いいのですか……?」
「いや今まで俺の都合に付き合わせすぎたと思っているから、日々の謝罪とお礼を込めて何でもしようと思う」
「は、はい……考えておきます……」
頬を若干赤くしてか細い声で言うエレノア。
これは言いそうにないな。
後でフェンリルに聞いてみるとしようかな。
俺はそんなことを考えながらエレノアと共にゲートを潜った。
それと後少しに迫ったエレノアの誕生日パーティーも進めていこうと心に決めた。
------------------------------------
次話でこの章は最終話です。
次話では久しぶりにシューマも出てきますよ。
フォローや☆☆☆→★★★にしてくださると嬉しいです。
勿論★一個でも作者は喜びますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます