第50話 嫁がないといけない理由

 再び家に戻った俺は、フェンリルを膝に乗せて座る。


「あ"あ"あ"ぁ、疲れたぁ……」


『何か大変なことがあったのか?』


 俺はフェンリルをモフモフしながら言う。


「いや本がありすぎて目が疲れたんだよ…… 。ざっと1000冊以上の表紙を読んだし」


『なるほど……?』


 どうやらわかっていない様だ。


 まぁ話ができると言っても本とかみたことないと思うししょうがないか。


「まぁ分からなくてもいいから。兎に角疲れたからモフモフさせて~」


『もうしているではないか……』

  

 俺がモフモフで疲れ切った心を癒していると、エレノアもやってきて椅子に座った。


「それでは報告を始めたいのですが……大丈夫ですか?」


「うん、全然大丈夫~」


 俺はフェンリルの体に頭を埋めながら返事をする。


 少し息が苦しくなるけど、素晴らしい肌触りだ……。


「……それでは始めますね。第2王子の部屋やその他使っている場所を探してみたところ、色々なものが出てきました。クリスティーネ公爵令嬢との婚約は、やはり第2王子が公爵家を脅していました」


 俺はやはりか……と思うと同時に、公爵家ともあろうものが、たかがニートの第2王子に弱みなど握られるのだろうか? と言う気持ちになる。


 だって公爵家の当主ともなれば、相当揉まれていると思うんだけど。


 それをボンボンの王子が脅迫なんて出来るもんなのかね?


「公爵家はどんなことで脅されているんだ? 権力的には公爵家の方が第2王子よりは強いだろ?」


「どうやら第2王子の派閥に他の公爵家がいるらしく、昔その家の次期当主を、大勢の前でクリスティーネ公爵令嬢がボコボコにして恥をかかせたことへの賠償として、嫁がせることを強制させられたそうです」


 なんだよ、めちゃくちゃこじつけじゃないか。


 どうせボコボコにされた次期当主の方がクリスティーネに絡んだんだろうに。


 しかしその程度で嫁がせるか?


「公爵家はどうして嫁がせるのに同意したんだ?」


「そこで第2王子が次期当主ではなく、俺に嫁がせれば、後で回してやろうと言ったらしく……」


 エレノアが顔を顰めて拳を強く握っている。


 俺の顔も今きっと酷いことになっているだろう。


 やはり知ってはいたが、第2王子はクズだな。


 今後サラに目を付けられたらいけないから、本格的に潰すか。


「エレノア、第2王子の弱みは握っているか?」


「勿論です。それは……ごにょごにょ……」


 俺はそれを聞いて思わず笑みが漏れる。


「ナイスだエレノア! これさえあれば必ず奴をぶっ潰せる!」


 ゲームでもめちゃくちゃ美人な嫁をもらっていたから、プレイヤー達がどうにか奴をぶっ潰せないか調べていたのだ。


 俺はそれを知っているが、言うだけでは聞く耳も持たれない。


 だから証拠が必要だったのだ。


 ゲームでも奴の自室にあったから探してみると、案の定あったらしい。


 あいつは基本馬鹿だから、こう言う書類はちゃんと隠しておかないといけないのに、無造作に置かれているのだ。


 しかもその他の証拠もエレノアが見つけており、正直全部出せばオーバーキルできる。


 俺は学院に来るのを楽しみしていた……。






☆☆☆







「やっぱりお前は邪魔だ。ここで退場してもらおう」


「ひぃぃぃぃぃぃ!? やめてください!」


「お前が隣国の皇女様やクリスティーネを脅したのは知っている……。それだけでもお前を殺してやりたいほど腹が立っていると言うのに、サラをお前の召使いにするだと? 寝言は永眠してから言え」


「ごごごごごごめんなさいぃぃぃ」


 俺が第2王子にキレるまで、あと1日。





--------------------------------

 面白い! まぁまぁかな? ソラ、エレノアがんばれ! などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

 また、フォロー、感想、応援コメント、誤字脱字や改善点などの報告を頂けると作者の励みになります。

 

それと【カクヨム甲子園】用の短編を出しました!


『君を失った俺が、再び君に会いに行くだけの物語』https://kakuyomu.jp/works/16817139557638398973


です!


1話しかないので是非読んでみてください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る