第六十二話④
────見えた。
テリオス・マグナスは明滅する視界の中で、確実に
ロア・メグナカルトには読み切れない底の深さがある。
戯けて器を広げようとしないが、確実に隠している刃がある。
アイリス・アクラシアとの戦いで披露した紫電を身に纏い高速移動する魔法と、それを利用した鋭く素早い斬撃。
そして、ソフィア・クラークとの戦いで魅せた空からの急襲。
ソフィアが何重にも広げた莫大な魔力の籠もった魔力障壁に衝突している最中。
ロアの右腕が、光り輝いた。
その時点でロアが勝ち上がると確信していた部分はある。ソフィアには申し訳ないが、勝ち上がってきてくれとすら願っていたのだから、一つのヒントも見逃さないと注視していた。
右腕が輝いた直後、ソフィアの展開した障壁を打ち破り切り裂いた。
確かに、そこには紫電以外の輝きがあった。
それこそがロア・メグナカルトの切り札。
身体強化か、それとも剣に威力を込めているのか。詳細はわからなかったが確かに見つけた一つの穴。
自らの身体を信じる男が、自らの身体以外を信じるその瞬間に、テリオスは賭けた。
振りかざされる光芒一閃に対し、魔力をバカみたいに込めた左腕で受け止めて、その衝撃で地面に沈み込む。
光芒一閃を握りしめ、手のひらから血が滲むことすら気にせずにテリオスは吠える。
「──
右腕にもった月光魔導剣を握りしめ、剣を封じたロアに剣を振りかざす。
受け止められることを想定していなかったのか、顔は伺えないが身動きひとつ取らないロアに勝利を確信する。奥の手は見えていたと、テリオスは自らの眼を褒め称えた。
肩口から大きく切り裂く一撃を放ち、ギリギリでねじ込まれた左腕に剣を掴まれる。
既に身体強化は使えなかった。ロアが切り札を放ったのと同じように、テリオスもまた、限界に近づいていたから。
しかし。
テリオスは身体に触れる以前に受け止めたのに対し、ロアは肩に突き刺さった剣をそれ以上深くならないように抑えているだけ。
どちらが有効打を放ったかは一目瞭然であった。
「勝つのは、
喉に絡みつく血塊を吐き捨てながら、己を鼓舞する。
少しずつ、ほんの少しずつ押していく自分の力に、さらに勝利を確信した。
捻り出した僅かな魔力──その全てを右腕に込め、決意を握り締め吠える。
「────
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