三話 【目的を見失いそ〜♡】

惣一郎は紹介状を握りしめ、奴隷売買所の前で二の足を踏んでいた。


見学だけは許されるのだろうか? 


そんな雰囲気ではない物々しい建物に戸惑っていた。


「奴隷をお求めですかな?」 


突然、後ろから声をかけてきたのは背が低く、黒い髭が地面につきそうなほど長い、樽の様な男だった。


「お悩みなら、見学だけでもしていかれるとよろしい。私はこの奴隷売買所を営んでいる、[ゴルゾ]と申します」


いきなりトップのお出ましでした。


笑って誤魔化そうとするが、やや強引に中まで連れ込まれてしまう惣一郎。


中に入ると従業員らしい柄の悪そうな男達が、次々とゴルゾに挨拶し、横の俺をチラッと見ては去っていく。


ジュグルータさんにもらった服を着て来ればよかった......


惣一郎の手に握られた封筒を見つけたゴルゾは、「そちらは?」っと、コレまた強引に封を開け読み始める。


「ジュグルータ氏の紹介でしたか、では私めが直々に案内せねばなりませんなぁ」 


ニヤリ。


コレ逃げられないヤツだ。


「それで、どういった奴隷をお探しですかな?」


「はい、えっと、商人を目指してまして、守っていただける方をその...... ゆくゆくは他の国なんかも行ってみたいものでして...... あはは」


黒い髭を撫でるとゴルゾは、直接見に行こうと地下へ案内し始めた。


普段は応接室で、条件に合った奴隷を数人ずつ紹介するらしいのだが、ゴルゾは奴隷が待機している牢へ、直接案内してくれるそうだ。




衛兵が守る階段を降りていくと、武器を持った従業員がゴルゾに驚き、挨拶をしていく。


歩きながらゴルゾに予算や、俺自身の経済状況を聞かれ、相場がわからないので予算は500ギーぐらいを言って置いたが、奮発したつもりだったが甘かった…… 条件が合う者だと3000ギーからが相場だそうだ。


他人の人生を買うんだ、安い訳がない。


ただ、訳ありでよければ500ギーでも買える奴隷はいるそうで、今はその訳ありの牢へ向かっている。


訳ありとは、年のいっているも者や四肢が欠けている者、戦えない働けない者と、ここでお荷物になっている売れ残りだそうで……


なら見る意味もないのだが「まぁ見るだけでも」っと強引に、連れて行かれる。


二つの大きな牢の前に着くと、売れ残ってる奴隷達が一つの牢に20〜30人づつ男女に分かれ、力無い目でこちらを見ていた。


「こちらがお客さまのご予算に合った者達です。ごゆるりとご覧くださいませ。ただ質問はこちらに、決して奴隷に直接は話しかけぬ様、ご注意下さいませ」


ん〜 正直戦えないなら買う気は無いし、多少予算が出来てからでも......


牢の中には、こちらを睨むボサボサの埃っぽい灰色の髪に、猫の様な耳がついた汚らしい少女がいた。


獣人らしいが、なぜ睨む。


隣では、全身に鱗をまとったガタイのいい男が力なくこちらを見ている。


戦えないのか? 強そうだが......


ゴルゾに聞くと争いを好まないらしい。


この見た目で......


高齢の男に両足のない獣人、睨む娘、傷だらけの細いエルフの男に、睨む娘と一通り物色したが、やはり条件に合う人はいなそうだ。


そして、なぜ睨む!


「すいません、この子は?」


聞くとこの娘、見た目に反して元冒険者で、しかも相当強かったらしいのだが、ある日を境に全く依頼をこなせなくなり、その違約金で奴隷落ちしたらしい。


女なので、性奴隷契約なら小綺麗にして高額で売れるのだが、獣人は認めた相手にしか体は許さないので、ここで売れ残っているとの事。


あっは、性奴隷いるのですね♡


2000ギーも出せば、旬を過ぎた者なら買えるらしい。


考えちゃうな〜♡


まっ、今回は見送ると伝え、地下室を後にする。


性奴隷か…… ウフッ♡








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る