第49話 最終話 魔獣少女、その後

 フードコートに着くと、見知った顔を見つける。


「あれ? この屋台って!」


 小さなお好み焼き屋で、アキさんが厨房に立っていた。黒いTシャツを着て。彼女は大学で授業をしつつ、こちらを手伝っているそうだ。


 どおりで、今日は車で登校していなかったわけである。


 店の名前も、加瀬カセの名前が使われていた。


「わたくし、屋台からやり直すことにいたしましたの」


 加瀬家を守りつつ、自身はお好み焼き屋を始めたらしい。そういえば、お祖父様がお好み焼き屋から事業を始めたと言っていたっけ。


「失敗するかもしれません。ですが、加瀬のやり方がそもそも失敗続きだったのです。それでも、おじいさまの教えに従って、自分の力で経営しようと思います」


 イヴキさんは、わたしの母がやっているタコス屋をライバル視しているそうな。これは、あっと言う間に追い抜かれちゃうかも。


「アタシも、実家のバイク屋で働き始めたんだ」


 マナさんは将来、レーサーを目指すそうだ。整備の仕事で手が汚れるから、ネイルはやめたという。


「でも、やっぱバイクは楽しいな。それにしてもアタシのバイク、他の人が乗ると動かなくなるんだよ。なんでかな?」


 おそらくマナさんの使い魔だったユニコーンは、バイクに憑依したのかも。


「ヒトエは将来、白バイのドライバーになりたいんだろ? マラソンの警備とかしたいって。整備は任せろ」

「ありがとうマナさん!」


 わたしたちは、それぞれの目標を語り合う。


 ドラゴン巫女とケツアルカトル巫女の氷皇ヒョウオウコンビは、巫女として今も活動している。このまま巫女として、この地を守り続けるという。


「私は、カウンセラーになります」


 臨也イザヤさんは、人の悩みを着てあげる人になりたいとか。とはいえ、もっぱらアプリソフトに頼りきりだそうだ。


 そのアプリ、もしかしてサキュバスが乗り移っているのでは? 臨也さんの使い魔は、サキュバスだったもんね。


「ユキちゃんは?」

「お姉ちゃんのバイトを手伝うよ。今まで苦労させたもん」


 お好み焼きを食べ終えると、ユキちゃんは店頭に立つ。エプロンを借りて、呼び込みを始めた。


「おお、俺もやる! うっふ~ん、いらしゃ~い」


 なんと、ヘカトンケイルまで客引きを始めたではないか。制服のスカートを、限界までたくし上げる。もともと短いから意味がないけど。大量に男性客を呼び込めたのはいいが、警備員さんに連れて行かれた。


「やれやれ。なにやってやがんだ、あのヤロウ」


 バロール先輩が呆れている。


「先輩は、どうしたいんです? 人間になって」

「おいおい、もう同い年って設定だ。先輩はないだろ?」

「わたしからすれば、先輩ですよ。これで慣れちゃったので、今更タメ語で会話なんて無理です」

「しゃーねーなぁ」


 呆れながら、バロール先輩はお好み焼きをつつく。


「そうだな。ヒトエの近くにいてやる。お前は危なっかしいから。オレサマが見てやらねえと」

「ありがとうございます」

「でも、心残りはある」

「なんです?」

「刀を失った。子種を得るチャンスだったんだが、オレサマも結局、女に転生しちまった」


 魔獣と魔獣少女が結ばれればトラブルになりかねないからと、運営は魔獣をすべて女性に転生させたとか。


「でもまあ、これはこれで」


 バロールが、わたしに抱きついてきた。


「ちょ、ちょっと、何を発情してるんですか!?」

「いやだって、溜まってんだよ。いいだろ?」

「よくないです! 溜めないでくださいよっ!」


 これじゃあ、魔獣少女時代と変わらなくない!?


「よし、ヤリたいことができた! オレサマ、男に性転換するぞ! ヒトエをヨメにする!」

「ヤリたちの字が違うから!」




 だが数年後、バロール先輩はガチで性転換を済ませる。

 バロール先輩と結ばれたわたしは、夫婦ともども白バイの警察官兼、大家族の母になるのだった。


(おわり)

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メカクレ根暗少女が、サイクロプス魔王と契約して魔獣少女になり、魔界の頂点を目指す! でも、キャットファイトだなんて聞いてませんが!? 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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