第47話 冒険するから冒険者【ミカの視点】
【第35話〜第46話のミカの視点】
ボムズに着いた次の日、明日はファイアール公爵の人と会う日だ。
アキくんとボムズの街をぶらついていたが、アキくんはやはり少し上の空……。早めに宿に戻ったほうが良いかな。
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ボムズの冒険者ギルドの会議室。
ファイアール公爵家との会合の直前のアキくんは落ち着かない雰囲気だった。
私はアキくんの手を握り話しかける。
「アキくん。私は何があってもアキくんの味方だから。またアキくんから離れることもないからね」
私は想いを目に込めて、アキくんを見つめる。
「まぁ最悪はまた家出するから大丈夫だよ」
軽い調子で言葉を返された。
その後、アキくんは立派にファイアール公爵家の人達と相対していた。
15歳なのに本当に凄い。本当に感心してしまう。
私は父親や継母、妹と会って、冷静でいられるだろうか?
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その後2日間、アキくんがボムズ観光に連れて行ってくれた。
アキくんも行った事のない場所がたくさんあったみたい。
喜んでいるアキくんを見れたのが嬉しかった。
ボムズからアクロまでの帰路。アキくんはずっと私の身体を求めてきた。それを全て受け入れる。私もボムズ遠征で少し頭がおかしくなっていたと思う。
アクロに戻ったら、また元の関係に戻りそうな予感がした。
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アクロに帰ってきてからは穏やかな生活を過ごしていた。
ある日、私がリビングで寛いでいるとアキくんが水宮のダンジョンの攻略方法を説明を始める。なんとダンジョンのボスを討伐した後に、ボスが復活するまでの時間を使って休憩をするなんて。
なるほど、可能性としては私とアキくんの2人だけで攻略ができるかもしれない。
ただ
それこそ望む事じゃないか。私の心が喜びで震えている。
アキくんもヤル気に満ちている。そうね、冒険するから冒険者だ。そして私は冒険者だ。
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水宮のダンジョンは何とか攻略ができた。
ボス戦では少しヒヤッとしたが、アキくんを守る事ができた。
私は自分の存在意義を感じて嬉しかった。でもアキくんのピンチが無いと存在意義を感じられないのでは困ったもんだわ。
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水宮のダンジョンを攻略したあとはゆっくり過ごしていた。私がいつものようにリビングでくつろいでいるとアキくんが唐突に話しかけてきた。
「ねぇミカ、提案があるんだけど」
「なぁに?」
「僕達はアクロ周辺の主要なダンジョンは全て制覇した。そろそろ他の街に行って、そこのダンジョン探索しない?」
私はアキくんさえいれば問題がない。
「あら唐突ねぇ。私の居場所はアキくんの側だからどっちでも良いわよ。あ、やっぱり冒険者なら移動かな」
「よし、それなら準備ができ次第移動しよう。これから寒くなるね。だったらボムズで冒険者活動してみる?こないだ行ったから新鮮味はないけどね」
なんて素敵な提案なんだろう。この気やすさが冒険者の醍醐味かもしれない。
「良いわよ。そうしましょうか、冬の間はボムズにいるのが良いわね」
こうしてあっさりと私達の拠点移動は決まった。
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ボムズに移動して焦土の渦ダンジョンの攻略を開始する。
ここのダンジョンは私が活躍できる場所だった。
出現するサラマンダーと【昇龍の剣】と【昇龍の盾】の水属性の装備の相性がとても良い。
サラマンダーを斬って斬って斬りまくる。
冒険者になって初めてやり甲斐を感じる事ができて満足だ。
私達2人は大した障害もなく焦土の渦ダンジョンを制覇した。
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それからは、焦土の渦ダンジョンを1日おきに攻略する。
アキくんはダンジョン攻略をしない日は冒険者ギルドの鍛錬場に行って槍の練習をしたり、王都の魔法学校の試験勉強をしていた。
あまり街中を出歩かない。ボムズの街を出歩くと結構、無遠慮な視線を感じる。それが煩わしいのだろうな。
焦土の渦ダンジョン攻略のおかげで私は気がつくとBランク冒険者になっていた。
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私はBランク冒険者に昇格した。
1年前には考えもつかない状況。
冒険者ギルドから黄金のギルドカードを渡されて初めて実感が湧いた。
皆んなからお祝いの言葉をかけられ、それに愛想笑いを返していく。
昇格祝いを辞退する。何か気恥ずかしさがあった。間違いなく私はアキくんがいなかったらBランク冒険者にはなれていない。
その後、ボムズのギルド長に呼ばれ、Bランク冒険者についての説明を受ける。
これはアキくんから聞いていたため、確認をする感じだ。
もう終わりかなっと思っていたら、私の奴隷解放の話になる。
いろいろと言っていたが、冒険者ギルドの体裁がよろしくないって事だ。
簡単に断っても良いが、真剣に話しているギルド長に悪いと思い、私は返事を保留した。
返答の内容は既に決まっているのに……。
最近、たまに隷属紋を通して、アキくんの熱い感情が流れてくる時がある。その熱い感情は私の心を癒やしてくれる。
奴隷から解放されたら、この感情が味わえなくなってしまう。鼻から私は奴隷から解放されようとは考えもしなかった。
私は奴隷の証のチョーカーを触りながら帰宅した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
12月の半ばに、ファイアール公爵家から新年祝賀パーティーの招待状を送られてきた。
私の胸が高鳴る。
私はカンダス帝国のエンジバーグ公爵家の長女だが華やかなパーティーに今まで出席した事がない。
パーティがあると、いつも着飾った父親と義理の母と妹を見送ってきた。
広い屋敷で一人で食べるご飯は味気ない。
それがアキくんと2人でパーティに出席できる!?
どうしても出席したい。
気がつくと私は感情の赴くままにアキくんに懇願していた。
アキくんは微笑みながらパーティの出席を了承してくれる。
そんなアキくんを見て私はハッとした。
パーティの主催者はファイアール公爵家だ。アキくんの事を考えれば、自分を
アキくんの心情を失念していた。これでは奴隷失格じゃないか。それでもパーティへの憧れは大きかった。
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