第18話 沼の主人ダンジョンの制覇

 Bランク冒険者を目指し始めて5日目。

 今日はCランクダンジョンである沼の主人ダンジョンの制覇を目指す。


 HPポーションを10本と解毒ポーション5本をナギさんにお願いして揃えてもらった。HPポーションなんてあるんだね。


 今まで蒼炎で瞬殺してきたから必要なかったからね。冒険者歴1ヶ月。はっきり言って僕はダンジョン探索の初心者だからしょうがない。知らない事がいっぱいあるや。おいおい覚えていこう。


 沼の主人ダンジョン入り口でミカのカイトシールドをマジックバッグに入れる。走り抜けてボス部屋まで行く予定だからカイトシールドは邪魔と判断した。

 ミカを見ると気合いが入っている顔をしている。


「よし! 頑張っていこう!」


「了解!」


 大きな声を出して気合いを入れ直した。

 ダンジョンに入って走り出すと右前方の沼が盛り上がってくる。泥のゴーレムだ。気にせず横を走り抜けていく。やっぱりゴーレムは鈍重だ。道に上がってくる前に余裕を持って戦闘を回避できる。


 3体ほどのゴーレムをやり過ごし落ち着いてきた。ミカは道中に襲ってくるF級モンスターのカーサスを一刀で両断している。僕にはできない芸当だ。


 1階層、2階層と問題なく走り抜けてこれた。階段の前で水筒から水を飲んで一息つく。今のところは問題ない。いつも泥のゴーレム討伐は1〜2階層でおこなってきた。3階層に入るのは実は初めてだ。


 3階層の泥のゴーレムは今までのゴーレムと違い、少し大きめだった。なんか違う種類の泥のゴーレムなのかな?スピードは普通のゴーレムと変わらないのでそのまま横を駆け抜けてきた。


 4階層の泥のゴーレムは少しスリムになっている。通常の泥のゴーレムよりスピードは上がっているみたい。それでもゴーレムのため問題無く走り抜けることができた。


 5階層は沼の色が今までより黒かった。ヘドロみたいだ。出てくるゴーレムも真っ黒。スピードは変わらないのでそのまま駆け抜けてきた。


 6階層は5階層と同じ黒い沼。そのままボス部屋まで駆け抜ける。ボス部屋の前の直前に黒い泥ゴーレムが一体出たため蒼炎で倒した。魔石を見るとC級魔石だった。ボスでB級魔石が出ると嬉しいな。


 ミカは血糊のついた剣を布で拭っている。道中、結構カーサスを討伐していたからな。

 ここまで駆け抜けてきたからそれなりに息は上がっている。水を飲んで一息ついた。腰のベルトのHPポーションと解毒ポーションを確かめる。

 ミカを見つめて頷いた。準備完了。そしてボス部屋の扉を開けた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ボス部屋の沼は赤紫色をしている。沼の底から気体が出てきているようでボコボコ泡が出ていた。変な匂いがしてくる。


 長くここにいると毒にやられる可能性があるのかな? 体調に変調が来たら逃げ出さないといけない。ミカにはボス部屋の入り口で待機してもらい、僕が動けなくなるようなら助けだせるように頼んだ。


 僕は部屋の中央まで進む。30メトル先の正面の沼が盛り上がってくる。

 僕は唖然とした。通常の泥のゴーレムは体長3メトルくらいだが、ここのボスゴーレムは5メトルを超えている。赤紫の泥を纏い、湯気(毒?)が身体から出ていた。


 慎重に沼から出てくるまでの時間、僕の心臓はドキドキしていた。5メトルを超えるゴーレムは迫力満点だ。

 それでも僕がやる事は一つ。落ち着いて呪文を詠唱する。


【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】


 真っ直ぐボスゴーレムの胸の辺りに蒼炎が当たった。物凄い水蒸気が辺りを包む。泥の成分が熱で蒸発している。少しだけえずくような匂いがした。毒はあるのかな。今のところ体調に変調はない。


 水蒸気が晴れるとボスゴーレムがいた場所には泥の成分が赤白くドロドロになっていた。数秒経つとダンジョンに吸収されC級魔石よりひと回り大きな魔石が転がっていた。


 そしてその横に宝箱が現れると赤紫の沼が通常の茶色い沼に変化する。

 空気も変わったようで変な匂いも無くなっていた。やっぱりダンジョンは不思議なところだ。


 現れた魔石を拾うと横にミカが来ていた。


「体調は問題ない?」


「今のところ大丈夫だね」


 一応ステータスカードを確認する。まさかの毒のステータスがついていた。HPも10ほど減っている。慌てて解毒ポーションを飲んだら毒のステータスは消えていた。念のためミカのステータスも確認したが大丈夫みたい。


「B級魔石かしら?」


「どうだろうね。ギルドで調べてもらうしかないね」


 2人してニコニコして会話を続けている。2人共ニコニコが止まらない。


「それではいよいよメインイベントです!」


 高らかに僕は宣言する。

 ミカも拍手で応えてくれる。


 E級ダンジョンを制覇した時の宝箱はお金しか入っていない。D級以上からは迷宮武器や装備、魔道具などが出てくる時があるのだ。

 D級以上のダンジョン制覇の宝箱を開けるのはダンジョン探索の醍醐味と言われている。

 僕もミカも初めてのことだ。


 ドキドキしながら宝箱を開ける。


 宝箱の中には青色の刃の剣とダンジョン制覇メダルが入っていた。

 青色の刃の剣を見つめるミカの目が期待に溢れている。


「剣は冒険者ギルドで鑑定してもらおう。ダンジョン産の剣だからどんな特殊効果がついているか楽しみだね」


 僕はそういうと青色の刃の剣とダンジョン制覇メダル、大きめの魔石をマジックバッグに入れた。

 青色の刃の剣をマジックバッグに入れるのをミカは少し悲しそうな顔をしている。早く使ってみたいんだね。


「帰りは6階から3階は駆け抜けていって、2階からは泥ゴーレムを倒しながら行こうか」


「分かったわ。それで行きましょう」


 準備ができたので出発だ。帰りの道中は特に問題なく走り抜けていく。2階層に戻るといつもどおり泥ゴーレムを討伐して行った。


 MPを限界まで使ってダンジョンを出ると夕方になっていた。

 やっぱりボス部屋まで行くと時間がかかるなぁ。

 剣術の練習は朝に早起きしてやろうかと思った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 帰宅して毒泥ゴーレムの魔石をナギさんに見てもらったら嬉しい事にB級魔石と言われた。これでギルドポイントが溜まりやすくなる。


 宝箱から出た青色の刃の剣は冒険者ギルドに鑑定に出す。鑑定は専用の魔法陣でおこなうそうだ。すぐに結果が出て名前が【昇龍の剣】。特殊効果は剣速が上がる効果とのこと。これはミカに使ってもらう事にした。今使っている剣帯に合って良かった。


 今日の収穫を確認する


昇龍の剣

B級魔石  1個

C級魔石 65個

C級ダンジョン制覇メダル


 レベルは僕もミカも1つ上がっていた。


 E級ダンジョンのオークダンジョンのボスモンスターは半日ほどで復活していたけど沼の主人ダンジョンはどうなんだろ? 明日もボス部屋に行って確認してみよう。

 毎日毒泥ゴーレムを倒せるなら魔石と宝箱がおいしいからね。


 今日は疲れていたようでベッドに入るとすぐに眠りに落ちた。


 頑張っていつもより少し早く起きる。今日から剣術の練習はダンジョンに行く前にする事にした。朝露が残る空気が心地良い。

 いつもの決まった素振りの型をやっているとミカが起きてきた。

 僕の素振りを見て一言。


「だいぶ見れるようになってきたわね。でもまだまだかな」


 そう言って僕の型を直してくれる。直してくれた型で素振りをすると確かに剣速が上がった感じがした。基本は大事だね。


 ナギさんが作ってくれた朝ごはんを食べて沼の主人ダンジョンに向かう。ダンジョンまでの道中も走る。何か走ってばかりだ。


 今日のダンジョン探索は昨日と同じ予定だ。

 まずはボス部屋まで行って、ボスが復活しているか確認。復活しているようならそのまま討伐。2階まで戻って泥ゴーレムを討伐していく。


 まだまだBランク冒険者までは遠いなぁ。


 結論から言うと毒泥ゴーレムは復活していた。昨日と同じように討伐し、宝箱を開ける。

 今日は青色の盾が出てきた。これも優れた装備なら良いな。C級ダンジョン制覇メダルは出なかった。一度制覇したところのダンジョンではもう出ないそうだ。


 【昇龍の剣】を装備したミカは嬉々としてカーサスを血祭りにあげていた。

 一度泥ゴーレムとも対戦してみたが切ったそばから傷を埋めてしまうため全然ダメージを与える事ができなかった。ゴーレムが大きすぎてコアまで届かないんだね。

 改めて蒼炎の魔法の破壊力を思い知ることになったよ。

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