エピーソード7

「おい、エルト、建国記念日のパレードつまらないし、どっか遊びに行こうぜ」レオスはそう言った。


あれ?レオスって、そんなちっさいだっけ?ん?建国記念日?それに、あれは、僕?……ああ、僕、夢を見てるんだ。まだ子供の頃か、懐かしいな。でも、建国記念日?よりにもよってこの日の夢?


ウーーーーウーーーー、サイレンの音が鳴り始めた。


「なんだなんだ、空襲警報?」


突然のサイレンで、町にいる人たちはみんな、混乱してる。


「レオスくん、エルトくん!」突然おばさんに話しかけられた2人、おばさんはかなり焦ってる様子で、さらにエルトとレオスに


「うちの子見てない?どこにも見つからないのよ」


「え?ネリネはさっきまで俺たちと一緒にいたよ、おばちゃん。でも、サイレンがなった途端どっかに行っちまったみたいだぜ、なぁ、エルト」


「うん、なんかお父さんを探しに行くって」


ネリネ、僕の3歳年下で、レオスと同じ、僕のもう1人の幼なじみ…だった、7年前までは。


7年前、帝国のクラークデール侵攻作戦。ネリネは僕たちと一緒にパレードと見に行ったけど、サイレンが鳴って、ネリネは警察の父親を探しに行った。父親の事が心配だったんだろう。弱気で、泣き虫で、でもいつも警察である父を誇らしげに話をしてくるネリネ。


まだそんなに道を覚えてない幼いネリネは、北の森へ迷い込んだ。当時の森には、普段はあまり町に近付かないけど、その深部に、まだかなりの魔獣が住んでいた。だけど、サイレンの音が嫌なのか、深部に住んでる魔獣たちもストレスを感じて、町近くまで暴れまわっていた。


僕たちはネリネを探しにあっちこっち廻っていた。そして、最終的に森の近くにネリネのハンカチを見つけた。


おばさんを家に待って、僕とレオスは森に入ってネリネを探し続けた。ネリネも途中で怖くなったか、そこまで深く進んでなかった、だからすぐに見付けた。ネリネを見付けた僕たちはすぐ森を出ることにしたんだけど、その時だった!


森の出口に向かって走ってる僕たち、ネリネは僕たちより年下で、女の子でもあり、そんなに足早くなかったが、それでも精一杯僕たちの後ろに付いてきた。僕たちは走り続けて、もう町はすぐ目前だった時、イノシシ型の魔獣が突然、木々の横から出てきて、僕たちは方に向かって突進!


次の瞬間、僕の目に映る世界は、赤に染まった。ネリネのその時の顔、僕は一生忘れることはないだろう!でも、僕は何も出来なかった、どうしよもなかった、ただ座り込んで、体を震えた、泣くすら出来なかった、声も出なかった。その時、僕は初めて知った、この得体の知れない感情は、絶望というのだ。


どれくらい時間が経ったんだろ、あの時、僕の体感はすごく長く感じたが、現実は多分1分もまだ立ってなかっただろ、僕は後ろから銃声を聞こえて、その後の記憶がなかった、気が付いたら、病院のベッドの上に居た。


その事件をきっかけに、一時期、僕とレオスは顔合わすのを止めった、多分お互い分かってる、顔合わさったら、あのトラウマが蘇ると。ネリネの両親は、この事件で、別の町に引っ越し、それ以来、連絡がなくなった。


それもあってか、レオスはグレて、2年前まで喧嘩ばかりの日々を送ったそうだ。僕はしばらく部屋に引きこもり、後に姉さんに諭されて、士官学校に入った。縛られたくない、ただ世の中の不公平や理不尽、不幸な事を、例え全部は無理だとしても、自分の眼の前に起きたら、それの、ほんの少しだけでも、助力になれたらいいと思って、元自警団、現≪ガーディアン≫に志願したけど、≪ガーディアン≫クラークデール支部は帝国圧力で、この町から撤退したせいで、結局は警察になった。


ネリネ、今回、僕、頑張った、よな?…あの時、自分の無力のせいで、助けてられなくて、ごめん、ごめんなさい!でも、眼の前に、自分の手が届く範囲で、もう2度こんな事が起きないように、僕、これからも頑張るから!どこまでも自分勝手でごめん、これからも見守ってくれ。


---------------------------2週間後---------------------------


「ん…あれ?ここは、病院か。懐かしい夢を見た気がする…」


目が覚めたエルト、手と足に、違和感がある。むしろ手と足に、感覚がある?そう感じるエルトは、視線を自分の右手と両足に向ける、そして、


「なお、ってる?」

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