斬られることを望むあやかしと、その頼みを請け負ったとある学芸員の、不思議な共同生活のお話。
人と人ならざるものとの友情を描いた現代ファンタジーです。
本当に友情譚と呼ぶのがふさわしいお話。とにかく主人公の内面というか、複雑な葛藤や煩悶がとてもよくて……。
彼を斬る約束はしたものの、共同生活のおかげで情が湧いてしまったこと。
それはそれとして、刀剣の研究者として、斬ること自体に興味があったりもする。
己の胸中にある欲や迷いのすべてと向き合い、その上でできる限り誠実な答えを出そうとする、その内心の流れにとても読み応えがありました。
あやかしである穂村さんに対しての態度というか、かけるべき言葉を選びに選ぶところなんかもう本当に好き。
相手を尊重するというか、本当に思っているからこそというのがしっかり伝わる、とても綺麗な作品でした。