4期生デビュー決定!?
「じゃあ湊月、ここでちょっと待ってて。もし長引いてたら……つまりそういう事だから……」
「おっけい。大丈夫だって、絶対翔馬が考えてるような内容じゃ無いから」
他愛のない会話をしている内に到着した職員室前で、顔を強張らせる翔馬とそれを見て苦笑気味に頷く湊月。
翔馬は「それじゃ、行ってくる」と、さながらこれから戦場に向かう兵士が別れを告げる時のような重々しさでその場を立ち去り、ゆっくりと職員室の中へと入って行った。
「さてと。俺は何をして待ってようかね~」
緊張で職員室に入るまで手と足が同時に出ていた翔馬とは対照的に、のんびりとした心持ちで廊下に立っている湊月は、持て余している数分の暇を潰す為に携帯を取り出しツイッターを開く。
オタクの悪い癖というか習慣というか、暇さえあればツイッターを開き推しの情報を更新し続けようとしてしまうのだ。そして、更新する為にタイムラインの一番上まで行き下へフリック。「シュポッ」という音が鳴るのは良いものの、その頻度があまりにも多く、結局最新で表示されるツイートは先程と全く同じというのは、もはやオタクたちの中では伝統行事とさえ言えよう。
そもそも、何故湊月がここまで呆気からんとしているか。他人事というのは勿論そうなのだが、流石に親友が本気で苦境に立たされている時にこんな落ち着いていられる程呑気な性格では無い。どちらかというと、本人よりも慌てふためき逆に
しかし、湊月の中で翔馬への信頼は富士山よりも高くマリアナ海溝よりも深い。いや、それはちょっと言い過ぎたかもしれないが、絶大な信頼を置いているのは事実であり、そんな友人が退学になる程の何かをしでかしたというのは微塵も想像が付かないのだ。ネットで、制服を着たままあれだけ
特段何の心配もしていない湊月が、ボーっと作業的にタイムラインの更新を行っていると、突然最新のツイートが表示された。それは二秒前に呟かれたものであり、湊月が推している大手VTuberグループ『EnCouragE』通称ECE《イース》の公式垢からのツイートであった。
「お!何かツイートされてんじゃん!とりまイイネだけ押してと。えーっ、内容は…………マジ!?新人
シンとした静寂な廊下に、湊月の嬉々とした声が響く。歩いていた女子生徒から怪訝な視線を向けられたが、そんな事は気にもならない程湊月の意識はECEのツイートした内容に注がれていた。
「え、マジ!?てか、ツイッターも開設されてんじゃん!!へー!
携帯の画面を凝視しながら、一人でぶつぶつと喋り続ける湊月。
というのも、
そんな停滞気味だった四期生デビューに風穴を開けた一人目が、たった今ツイートでデビューを発表された胡蝶蘭というわけだ。
「そっかぁ~!とうとう四期生か~!胡蝶蘭ちゃんを初めに何人かデビューするんだろうな~!これは忙しくなるぞ~!」
湊月は、そう言いながら自分が初めてECEに所属しているVTuberの配信を見た日を思い出し、そこからの経過した年月に何だか心に染み入るような感情を抱いた。
まだ一期生しか所属しておらず、配信に来る視聴者も今よりずっと少なかった時代のECE。
心が完全に憔悴し、何をしても楽しさを感じる事の無かった湊月に、日常のちょっとした楽しみを与えてくれたあの
「またいつか配信してくれたら嬉しいなぁ……。まぁ、今はとにかく四期生が待ち遠しいっ!!」
「何が待ち遠しいの湊月~?」
一人で感傷に浸っていた所で、突然横に現れた翔馬から声を掛けられた湊月。
「え、あぁ翔馬。いつの間に」
「いや声掛けてたよ。湊月が遠い目で無視ってくるから」
「あ、そうだったんだ。ごめんごめん。てか、どうだったの?」
「もう全然余裕!心配してた事なんて何一つ掠らなかったわ!」
「ほら言ったじゃん!でもまぁ、良かったよ。翔馬が退学とかじゃなくて」
「何お前ツンデレ?」
「違うわ!」
「……あーでも、一つだけ」
翔馬は、若干バツの悪そうな表情で言う。
「ん?なに?」
「え~っと……まぁとりあえず、先生が湊月の事も呼んできてって言ってたからコッチ来て!」
「え、ちょ!なになに!?」
「良いから良いから!!」
今度は自分が職員室に連れて行かれるという意味の分からない状況に、本気で困惑している湊月だが、そんな様子を意にも介さない翔馬は腕を引っぱり、半ば無理やり職員室の中へと連行して行くのであった。
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あの〜、ほんとすみません。。。体調崩して数日ダウンしてました……
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