第2章 118 寝過ごした朝
コンコン
コンコン
部屋の扉がノックされる音が聞こえて私は目が覚めた。ベッドから起き上がると、カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んでいる。
それに何故か頭痛がする。
「今……何時かしら……?」
ぼんやりした頭で考え込んでいると、再びノックの音が聞こえてきた。
コンコン
『クラウディア様、起きてらっしゃいますか?』
え?あの声は!
「ええ起きたわわ」
急いでベッドから降りると扉を開けに向かった。
「ごめんなさい、リーシャ。今まで眠ってしまったみたいで」
扉を開けると、ワゴンを持ったリーシャが立っていた。
「いえ、申し訳ございません。お休みの所、起こしてしまったようで……え?クラウディア様。そのお顔……どうなさったのですか?」
「え?私の顔が……どうかした?」
首を傾げると、リーシャは目を見開いた。
「え?ご自分でお分かりにならないのですか?目が真っ赤ですよ。まるで……その、泣いていたみたいに……」
リーシャが申し訳なさげに私を見る。
「え?そうだったの?」
「はい。そうです」
「と、とりあえず顔を洗って着替えをしてくるわ。中に入って、リーシャ」
「はい、では失礼致します」
リーシャを部屋に招き入れると、私は急いでバスルームへ向かった。
****
「ふぅ……全くどうしてしまったのかしら……」
洗顔を済ませ、着替えを終えた私はリーシャが淹れてくれたハーブティーを飲むとため息をついた。
「お疲れだったのではありませんか?もしかして国のことでも思い出されましたか?」
リーシャがワゴンの中からクローシュを被せた皿を取り出し、テーブルの上に置いた。
「あら?それは何かしら?」
「はい、朝食用のサンドイッチです。今朝はダイニングルームにお越しになりませんでしたので」
時計を見れば、既に10時を過ぎている。
「あ……いけない!アルベルト様との朝食が……」
「はい。その事ですが、陛下からのお言葉だったのです。本日はクラウディア様をゆっくり寝かせてあげるようにと。朝食も別に用意する様に言われました」
「そうだったのね。ありがとう」
「いえ。本当ですと……クラウディア様が御自身で起きられるまではそのままにして差し上げたかったのですが……」
リーシャが申し訳なさそうに俯いた。
「どうかしたの?」
「はい。実は9時頃にカチュアさんが尋ねていらしたのです。明日のことでお話がしたいと言って。ですがクラウディア様はまだお休みだと言ってハインリヒ様が追い返しておりましたが」
「え?そうだったの?」
「はい。それでは11時にまた来ますと言って帰られました。それで……もうし訳ございませんが、お部屋に伺わせて頂きました」
まさかカチュアが訪ねて来るとは……。明日のことで話とは、一体どんな要件なのだろう。どのみち、憂鬱な事に変わりは無い。
「分かったわ、ならすぐに食事を済ませて準備をした方がよさそうね」
「はい。どうぞ」
リーシャがクローシュを開けると、そこには野菜や卵の具材をたっぷり挟んだサンドイッチが現れた。
「おいしそうね。頂くわ」
「はい、お召し上がりください」
そして私はサンドイッチを口にした。
「美味しいわ」
「それは良かったです。ではお部屋の換気をするために少し窓を開けさせて頂きますね」
「ええ、お願いね」
サンドイッチを食べていると、リーシャの怪訝そうな声が聞こえて来た。
「あら?」
「どうかしたの?」
窓際に立つリーシャは戸惑いの表情を浮かべている。
「いえ、バルコニーの窓が少し開いていたものですから」
「そうなの?変ね……戸締りを忘れてしまったのかしら?」
昨夜のことを思い出してみても、何も心当たりが見つからない。でも今夜からは寝る前に、もう一度戸締りを確認してからベッドに入ろう。
何しろ……この城には私の敵が多いのだから――。
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