第2章 68 生き残る確率を上げる為に
食事が並べられ、リーシャが部屋から去ると早速私とアルベルトの夕食が始まった。
「やっぱり、どんなに忙しくても夕食位は2人で一緒にとりたいからな」
アルベルトは何か良いことでもあったのか、笑みを浮かべながら語りかけてくる。
「そうですね……ところで陛下。何か良いことでもあったのですか?」
「ああ、もちろんあった。クラウディアの目が覚めたからな」
「え……?」
あまりにも予想外の台詞に、フォークを持った手が止まってしまう。
「どうした?食欲でもないのか?」
ナイフとフォークで、肉料理を切り分けながらアルベルトが尋ねてきた。
「い、いえ。何でもありません」
ごまかすために、サラダを口に運んだ。
「そうか?まだ体調が良くないのではないのだな?」
どこか心配そうな眼差しで私を見つめるアルベルト。
「はい、大丈夫です」
「ところで今日、宰相と『聖なる巫女』が尋ねてきたそうだな?」
突然アルベルトは話題を変えてきた。
「はい、そうです」
「部屋に入れたそうだが……何故、彼らを招き入れた?」
「え……?」
「お前は今日、目が覚めたばかりなんだぞ?体調だって本調子ではないのに……それなのに、奴らを部屋に入れるなど……」
「陛下……?」
アルベルトは何だか苛ついているようにも見える。そして、ふと気づいた。
そう言えば……アルベルトは今までにカチュアの名を口にしたことがあっただろうか?
「何か2人から言われたりしなかったか?どうせ奴らのことだ。ろくな話では無かっただろう?」
そしてアルベルトはワインを口にすると、じっと私を見つめてきた。いつもなら話の内容を報告する気は無かったけれども、今回ばかりはそうはいかない。
何しろ私について、良くない噂が流れているのだから。
「あの、陛下。お伺いしたいことがあります」
「何だ?」
私をじっと見つめるアルベルト。
「リシュリー宰相とカチュアさんから話を聞きました。城中で私の悪い噂が流れていると」
「何?病み上がりのお前に、あの2人はそんな話をしたのか?」
アルベルトが眉をしかめた。
「その反応……つまり、事実ということですね?」
「隠していても仕方が無い。確かにそうだ。だが事実無根だ。何も気にすることはない」
そして再びアルベルトはワインを口にした。
「ですが……気にするなと言われても私はただでさえ、敵国の王女だということでこの城の人々から……いえ、恐らく国民からよく思われていないと思うのです。その噂を払拭させる為には何か行動を起こさなければと思っています」
「クラウディア……お前……」
「カチュアさんが気になることを口にしておりました。今はあの問題が起きているせいで陛下も大変忙しい時だと。一体何が起こっているのですか?私に陛下のお手伝いをすることは出来ませんか?」
ここで私が役立れば、この城の人々の私を見る目が変わるかもしれない。
アルベルトに協力すれば、私が生き残れる確率が上がるに違いないだろう――。
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