第2章 67 幸せを祈るだけ

 宰相とカチュアが帰った後……。


病み上がりで精神的疲労も重なったので、今日はベッドで休むことにした。


「明日からまた今後のことを考えればいいわね」


そして私は眠りに就いた――。



 

 誰かの人の気配でふと目が覚めると、リーシャが蝋燭で部屋の明かりを灯している最中だった。


「あ、お目覚めですか?クラウディア様。勝手にお部屋に入り、申し訳ございませんでした。ノックをしてもお返事が無かったものですから。」


リーシャが申し訳なさそうに謝って来た。


「そうだったの?別に気にしなくていいわよ?それにしても灯りを灯す時間まで私は眠ってしまっていたのね。今は何時なのかしら?」


「はい、午後7時を過ぎた頃です」


「え?そんな時間だったの?」


確かベッドに入ったのは午後2時を過ぎていた。それが5時間も眠ってしまっていたなんて……。


「昼寝にしては寝過ぎね」


苦笑しながらリーシャに話しかけると、彼女は首を振った。


「いいえ、クラウディア様は病み上がりなのですからゆっくりお休みになって下さい。それで食事のことですが……お召し上がりになりますか?」


「そうね……それでは持ってきてもらおうかしら?」


私が早く食事をしなければ、厨房の人達も休めないだろう。


「はい、承知致しました。すぐに伝えて参りますね?」


笑顔でリーシャは返事をすると、残っていたランプに灯りを灯すと部屋を出て行った。


「フフフ……私ったら厨房の人達のことを気に掛けるなんて、完全に主婦目線じゃない」


そしてふと、置き去りにしてしまった葵と倫のことが思い出された。


「あの子達……私がいなくなった後、御飯ちゃんと食べているのかしら?」


掃除や洗濯は出来ているのだろうか?

単身赴任中だった夫は‥…子供達と暮らしているのだろうか……?


もう二度と会えない私の愛する家族。

今の私には3人の幸せを祈るしか無かった――。



****


「お待たせいたしました、クラウディア様。お食事をお持ち致しました」


リーシャがワゴンに乗せて料理を運んできた。


「ありがとう、リーシャ。……あら?同じ料理のお皿が2つずつあるけど、貴女も私と一緒に食事をするのかしら?」


ワゴンの上に乗っている料理を見て、思わず首を傾げながらリーシャを見た。


「いえ、それが実は……」


リーシャが言いかけた時――。


「私がこの部屋に2人分の料理を運ぶように命じたのだ」


驚いたことに、アルベルトが部屋の中に現れた。


「陛下、まだお食事を召し上がっていらっしゃらなかったのですか?」


「そうだ。クラウディアと一緒に食事をしようと思ったからな。それじゃ早速用意してくれるか?」


「はい、かしこまりました」


リーシャは頷くと、テーブルの上に料理を並べていく。


一方、アルベルトはまだベッドの上にいる私の側にやって来ると傍らの椅子に腰かけた。そして私をじっと見つめて来る。それが何とも気まずかった。


「あの……何か……?」


「目覚めたときは顔色が悪ったが、元気になったようだな?よかった。安心したよ」


アルベルトは私を見て笑みを浮かべた。


その笑顔は……やはり、どこか彼に似ていた――。

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