君の音色をみんなは待っている

素敵な友情を感じる作品。

書き出しの碧のセリフにはカギカッコがない。
声が耳に届いていなかった表現を、カギカッコの有無で表しているところにこだわりを感じる。

ドリアの上にかかったチーズの平原を丁寧に崩している雫。
口では強く言っていないけれど、主人公の頑なな気持ちを削ぎ落とすように削っているのだ。
この辺りの描写が良い。

雫とのやり取りがあって、主人公の心はぐらついたのだ。
なので、このあと碧がグイグイと来たとき主人公は地面に水滴に似た染み、涙をこぼし、出場を決めるのだ。
後輩の碧が、いくら出てくださいと言っても、出なかったはず。
中学の頃から一緒にやってきた雫が、主人公の心の壁を崩しやすくしておいてくれたから、碧の言葉が届いたのだと思われる。