クリスマスの予定は?①
蓮が言いにくそうに切り出す。
「ちょっとそこに予定が入っちゃって。クリスマスに生徒会主催の老人ホームの慰問をやることになったらしくて、それを手伝うことになったんだ」
「蓮が自分でやるって言ったの?」わたしは訊いた。
「いや」首を横に振った。
「実は生徒会の選挙の前に、吉武に副をやってくれないかと頼まれてたんだ。でも興味もなかったし断った。それならって交換条件を出されてさ。いくつか考えてる企画があるから、それを手伝ってくれって言われて、断りきれなかった」
初めて聞いた話だった。万華さんは蓮に副会長を一緒にやろうってお願いしてたんだ。
さすが万華さん。宣言通り有言実行の人だ。
ライバルではあるけれど感心する。
「・・・・・・ふーん。何で蓮なんだろ」とぼけて訊いてみた。
蓮が万華さんに告白されたことを、わたしが知ってるなんて蓮は知らないはずだ。
ちらりと蓮の表情を観察するけど、何の感情も見えない。
「さあな」肩をすくめた。
さあなって・・・・・・。今だって彼女は蓮のこと好きだからに決まってるでしょ。心の中で呟く。
「具体的には何をやるの?」
「何をやるかはまだ考えてるみたいだけど、おそらくクリスマスソングの合唱とか演奏とか。あとはちょっとしたプレゼントを渡すみたいだね」
「それはいつ?」
「二十五日」
「ちょうどクリスマスなのね。でもそれ二が終わったら会えるかな」
「学校に戻ってきて片付けして、反省会もあるみたいだから、ちょっと遅くなるかもしれないな」
「そう。じゃあ、その日は無理そうだね」
「前日のクリスマスイブは?」
クリスマスに会えなくても、せめてイブだけでも・・・・・・祈るような気持ちで訊いた。
「それが・・・・・・リハーサルなんだ」
「そっか」ため息をついた。
今年は付き合ってから初めてのクリスマスなのに、蓮と一緒にいられないなんて。
一人で落ち込んでいると、蓮がわたしの表情に気が付いたのか顔を覗きこんでくる。
「ほんと、ごめん」蓮は謝った。
「仕方ないよ。蓮のせいじゃないもん」
ということは、イブもクリスマス当日も万華さんは蓮と一緒にすごせるってことだ。もちろん、二人で会うわけではないけれど、二人きりになる機会は作ろうと思えばいくらだってある。
落ち込んでる場合じゃない。積極的な万華さんのことだから、クリスマスという特別な日にドラマチックな演出をして、二回目の告白をするかもしれない。
絶対、ふたりきりにはさせたくない。わたしは必死に考えを巡らせた。
・・・・・・そうだ。
「さっき演奏って言ってたけど、もう誰がやるのか決まってるの?」
「決まってないはずだよ。多分、ボランティアを募集すると思う」
ボランティアに参加できれば、万華さんの告白を阻止できるし、わたしだって蓮と一緒にいられる。
こうなったら、やるしかない。
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