第24話 告白の返事2
「それは、どういうこと?」
三輪は俺の言葉に何を言っているのかわからないという風に不思議そうに首をかしげている。
「そのままの意味だよ。 俺はそんなにできた人間じゃない。
だって、あの時俺が三輪をいじめから守ったのは自己満足のためなんだ」
「……………」
三輪は俺の真剣な雰囲気にきずいたのか俺の言葉に耳を傾けた。
「あの頃、確か俺たちが五年生のころだったな。 あの時確かに三輪がいじめられていてそれを助けた。 でも、その時より前の俺は小学生の低学年のころは俺は人の気持ちを考えず好き勝手していたんだ。
まぁ、もちろんいじめはしていなかったが、人に迷惑をかけること……いや、自己中心だったんだ。 あの頃は多分ほとんどの人に嫌われていたと思う」
三輪は俺の言葉に黙って耳を傾けている。
「まぁ、俺もそれからいろいろ成長して自分が今までどんなことをしてきたというのかわかった。 そして分かったんだ、今までどれだけ人に迷惑をかけてきたのか、人にどれだけ嫌な思いをさせてきたのかを。 でも、俺が今までやってきたことは変わらない。 そんな何とも言えない罪悪感を持っていた時だった。 三輪と会ったのは」
俺は三輪に過去の自分のことを語る。
それは、自己満足のために三輪のことを利用していたことを懺悔するかのように。
「俺は自分で言うのもあれだが、人に嫌われるのが怖い。 まぁ、それは俺だけじゃないとは思うけど、俺は低学年のころのこともあってその辺のことに人一番敏感に、トラウマになっていた。 それは今でもそうだ。 人と違うことをしたり、調子に乗ったりいろいろな理由で、人は人のことを嫌う。 そう、同調圧力だ。 でも、あの時、三輪のことを知った五年生の時に奇跡的に俺たちの組に俺の友達が全然いなかった。 だから、あの時俺は三輪のことを助けようと思ったんだ。 それは昔にさんざん人に嫌な思いをさせてきた俺の贖罪だったんだ」
俺は懺悔するかのように語った。
「俺はあの時自己満足のために三輪のことを助けたんだ。 もしあの時、クラスに友達が一人でもいたら多分三輪のことを助けなかったと思う。 見て見ぬふりをしていたと思う。 だからな三輪、俺は三輪が思っているほどにできた人間じゃないんだよ」
「…………………」
俺の言葉を聞いた三輪は俯いて黙っていた。
まぁ、そうだよな。
自己満足のために人助けとか、最低だ。
昨日のサッカー部の田中のことを言えないな。
「ごめんな、幻滅したよな。 三輪の気持ちは嬉しかったよ、それに三輪はそんなに美人になったんだし俺なんかよりもっといい人がいると思うよ。 じゃあな」
俺は身をひるがえしゆっくり屋上のドアに向かった。
三輪も俺のことを幻滅しただろうな。
はぁ、嫌われるのは嫌いなんだけどな。
まぁ、最初から答えは決まってるんだけどな。
そんなことを思いながらドアノブをひねった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます