第7話【前も洗ってあげようか?】
「そうだ、彩花は寝るのベッドで良いか?」
「え? なんで敷布団敷いてるの?」
「なんでって、俺を床で寝させる気か?」
「そんな事言ってないじゃん!」
そう言って彩花はベッドに向い、横になった。
「もう寝るのか?」
時刻は九時半。まぁ、今寝たら健康なのだろうけど、俺からしたらこの時間に寝るのは早すぎる。
「まだ寝ないよ」
そう言って彩花は横をポンと掌で叩いた。
「おいで、一緒に寝よ?」
「いや、狭すぎるでしょ!」
俺が使っているベッドは俺一人とちょっと余裕があるくらいだ。
俺と彩花が二人で寝る余裕は無い。
「抱き着きながらなら寝たら大丈夫でしょ?」
「暑苦しいだろ!」
「もう、文句ばっかり言わないの! 早くおいで?」
「いや、俺まだ風呂入ってないし」
「じゃあ早く入ってきて!」
「……じゃあ入って来るよ」
そう言って俺は着替えを持ち、風呂へと向かった。
「彩花が入った湯舟に浸かったなんて言ったら、学校の男子に何されるかたまったもんじゃないな」
俺は湯舟に浸かりながらそんな事口にした。
「体洗うか」
湯船に長時間浸かると熱いからな。
「失礼しまーす」
「は⁉ 彩花!?」
俺が体を洗っていると、風呂のドアを開けて彩花が入って来た。
「おい! なんで入って来てんだよ!」
「え~? 悠太を洗ってあげようかな~って」
「別に一人で洗えるから!」
「そんな事言って、本当は可愛い彼女に洗ってもらえて嬉しいくせに」
そう言って彩花は手にボディーソープを付けて俺の背中を擦り始めた。
「良いから! やらなくても良いから! てか濡れるぞ」
「大丈夫、私今服着てないから」
「……嘘つくな、鏡で見えてるんだよ」
彩花が服を着ている事は目の前の鏡を見れば分かる。
「あ、バレちゃった。じゃあ今脱いだ方が良い?」
「なんでだよ! 脱がなくても良いから!」
「本当は脱いでほしいくせに、素直になりなよ~」
そう言いながら彩花は俺の背中を洗い続ける。
「前も洗ってあげようか?」
「絶対にやめろ」
「分かりましたよ~……はい、後ろオッケーだよ」
「じゃあ流すから風呂から出ろ」
「もう、もう少し優しい言い方できないのかな~」
そう言いながら彩花は風呂を出た。
それから髪も洗い、風呂の掃除も終えて、俺はリビングに戻った。
「……って、寝てんじゃねぇか」
リビングに戻ると、ベッドの上で寝ている彩花の姿があった。
「無防備すぎだろ……」
もう少し袖が上に上がっていたら下着が見えていただろう。
「ん? 悠太、私の事襲おうとしてた?」
俺が彩花の袖を直そうとしたその時、彩花の目が開き、そう言葉にしてきた。
「違う、彩花があまりにも無防備すぎたから直していただけだ」
「またまた、本当は見たかったんでしょ? 最初から素直に言っていれば良いのに」
「……なぁ、お前。絶対に起きてただろ」
「え!? な、何の事……?」
「隠すの下手すぎだろ」
「…………むぅ。何で分かったの?」
「彩花は寝起きがこんなに良くないからな」
彩花がもし本当に眠っていたのなら、こんなに目がぱっちりと開いていないし、頭も回っていない。
なのに彩花は目がぱっちりとして瞬きもそんなにしていない。ましてや目を各仕草も見せてない。
「え、私そんなに寝起き悪いの?」
「自覚無いのかよ……」
「て、てか! なんで悠太が知ってるの!?」
「そりゃ、親同士で家に集まってるときに夜遅くまで居ることが良くあっただろ? その時大体後半は彩花寝てるじゃん。そして俺達が帰るときに起こされてるだろ? それで知ってる。何回も見たし」
「へ、へぇ~。悠太って私の事結構見てるんだね? もしかしてその頃から好きだったの?」
「嫌でも覚えてるわ! 寝ぼけながら歩くからよく頭をドアや壁にぶつけて痛がってただろ!」
「そ、そんなことないもん!」
「あるわ!」
「ない!」
「ある!」
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