第7章:「選択せよ~Alternative」
07-01:「長引かせるとよくないかも知れん」
ミロたちが管制室へ向かう最中にも、ギルに煽られた生徒、学生達が学園宇宙船の中でテロリストたちと交戦していた。
しかし所詮は素人。相応の訓練を経て、必要な装備を持って侵入して来たテロリストに、ただの学生が太刀打ちできるはずも無い。
無謀な戦いは常に悲劇を生むだけだ。
◆ ◆ ◆
「良し、追い込んだぞ」
トーマス・ブリッジスは倉庫内を映し出す空間投影式の立体ディスプレイを見て満足げに肯いた。
「テロリストめ。こちらの縄張りに入ってきたのが迂闊だったと後悔させてやる。絶対に仲間の仇を討つぞ! なぁ、みんな!!」
「おお!!」
背後にいる仲間たちにブリッジスは声を掛けた。ブリッジスの呼びかけに歓声が返ってきた。
ブリッジスの仲間である生徒、学生たちは手に手にギルから渡された武器を持っていた。
トーマス・ブリッジスは士官候補生コースの学生。主に戦術を得意としており教師からも目を掛けられている。だからこそ皆着いてきたのだ。
「テロリストたちはいくつかのグループに分かれて行動しているが、そのうちの一団を完全にこの倉庫へ追い込んだ」
そう言いながらブリッジスは皆に見えるように立体ディスプレイを指し示した。倉庫に通じる通路に詰めかけた生徒、学生たちは先を競うように立体ディスプレイを覗き込んだ。
「この倉庫は扉も壁も作りが頑丈だ。奴らの装備では簡単に突破できない。袋のネズミだ。そこでそいつをぶち込む」
そう言いながらブリッジスは学生の一人が担いでいたロケットランチャーを指さした。
「広い空間や複雑な通路では、威力が拡散して奴らに効果的なダメージを与えられない。しかしこの倉庫なら別だ。テロリストを追い込んで一斉発射で一網打尽に出来る」
ロケットランチャーを担いだ学生は三人。ブリッジスはその三人を順番に見つめながらそう言った。
「テロリストたちは帝国軍が正式採用しているボディアーマーを着用してるが、いくらなんでも三発の一斉発射なら耐えられないだろう。奴らが対人制圧手榴弾を使う前に一気に勝負を決めよう!」
「帝国万歳!」
「皇帝陛下万歳! ギル皇子より賜った武器で、テロリストを殲滅するんだ!!」
ブリッジスの言葉に武装した学生、生徒たちは応えた。
若さと言ってしまえばそれまでだが、誰もが熱に突き動かされ、冷静な判断が出来る人間が一人もいない事が、彼らにとっては致命的失態だったのである。
◆ ◆ ◆
「アナコンダリーダー、完全にこの倉庫に追い込まれたようです」
アナコンダ2がそう言ってきた。
「分かっている。入ってきた方の扉は開けられるか?」
アナコンダリーダーに他の兵士が答えた。
「こちらアナコンダ4です。いまやっています。どうやら電子的なロックの他に、何かやられているようです。こりゃ難物だ」
「難物というと?」
鸚鵡返しに尋ねるアナコンダリーダーにアナコンダ4は言った。
「物理的なロックですよ。バリケードです。要するに。連中、俺たちが中に入ったら扉を閉じて裏から机やら何やらを積んで動かないようにしたんでしょう」
「なるほど、そりゃ原始的且つ効果的なロックだ」
そう言いながらアナコンダリーダーはもう一度、倉庫内を見回した。
最初に突入した
他のチームより先行しているわけだが、その分、孤立に近い状態になってきているのも確かだ。
「扉は二つだけか。学生連中、あの扉を突破したところで俺たちを袋だたきにするつもりだろう」
アナコンダリーダーは奥にある扉を指してそう言った。倉庫内には使われてない机や椅子、そして金属製のシェルフが並んでいた。シェルフの上には古い機械類や様々な備品が置かれていた。かぶっている埃から察して何年も放置されていたようだ。
学校が備品を保管している倉庫にしては、壁や天井がやたら頑丈そうな作りになっているが、それももともとこの宇宙船が軍艦だった為だ。資料によればこの倉庫ももともと弾薬庫だったらしい。
「へえ、懐かしいな。俺、この教材使ったぜ」
兵士の一人が宇宙船の緊急脱出装置用教材を手に取りそう言っている。
「ここいらで一つ後続を待つってのも手ですかね」
アナコンダ2がアナコンダリーダーにそう言ってきた。
「ふむ……、それも悪くはないが。個人的にはちょっと引っかかる事が有るんでな。今回の任務、個人的にはさっさと終わらせたい。余り長引かせるとよくないかも知れん」
「ああ、別働隊がいるらしいって話ですか。まぁ、上がどう考えようと俺等の知った事じゃありませんが……」
その時だ。ボディアーマーの動体センサーに反応があった。奥にある扉の方だ。アナコンダチームは銃を構え、奥にある扉の方へ向き直った。
開いた扉から武装した学生たちが何人か倉庫の中へ駆け込み、そして荷物の後に隠れた。
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