73.確信できる幸せ
私は、フレイグ様とともにとある部屋にいた。
ここは、彼の部屋である。ただ、いつもの執務室ではない。この部屋は、彼の私室なのだ。
「……どうかしたのか?」
「い、いえ、なんでもありません……」
愛する人の私室ということで、私はかなり緊張していた。
そんな私と比べて、フレイグ様はいつも通りだ。彼は、特に緊張していないようである。この状況なのに、どうして彼は、そんな平静なのだろか。
「……思えば、お前と出会ってから、色々なことがあったな」
「え?」
「ラフードのことがわかり、ラムフェグの野望を食い止められた……感謝しておかなければならないな。ありがとう、お前のおかげで、人間と魔族の安寧は保たれた」
「い、いえ、私は何もしていませんから……」
フレイグ様は、私に対してお礼を言ってきた。
だが、私は本当に何もしていない。ただ、クーリアから聞いた話をフレイグ様に伝えただけである。
それは、別に私の手柄とはいえないだろう。橋渡しをしただけである。
「いや、お前がラフードやクーリアの存在を認識できなければ、もっと厄介なことになっていた。お前のその力が、俺にとっては何よりもありがたいものだったんだ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、そうだったんだ」
フレイグ様は、私に穏やかな笑顔を見せてくれた。
その笑顔を見ていると、不思議な気分になってくる。なんだか、心が落ち着いてくるのだ。
「お前に出会えて、本当に良かったと思っている。それは、二つの種族の安寧が得られたということだけではない。お前を妻として迎え入れることができるということも含めて、そう思っているんだ」
「は、はい……ありがとうございます」
私の目を真っ直ぐに見て、フレイグ様は恥ずかしいことを言ってきた。
そんなことを言われると、痺れてしまう。どうして、そんなことを冷静に言えるのだろうか。
「……私も、フレイグ様の婚約者になれて、良かったと思っています。あなたと巡り会えたから、私の人生は変わりました。ありがとうございます、本当に……」
そんな彼の言葉に対して、私も少しだけ勇気を出してみた。
私は、フレイグ様と巡り会えて本当に人生が変わった。灰色だった私の人生は、ここに来られたことで明るく色づいたのである。
冷酷無慈悲と表されていた彼は、本当はこんなにも優しい人だった。そんな彼の婚約者になれたことが、私の人生の何よりの幸福だったといえる。
「そう言ってもらえて、俺も嬉しい。そんなお前の期待をこれからも裏切らないように頑張りたい所だな……」
「裏切りませんよ。フレイグ様なら絶対に……」
私は、これからも幸せな生活を送るだろう。フレイグ様が一緒にいてくれるのだ。それは、まず間違いないだろう。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。 木山楽斗 @N420
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