60.兄弟の優劣
「うぐっ……馬鹿なこの私が」
跳ね返った自分の光線によって、ラムフェグの体には穴が開いていた。
その強固なる鋼の体でも、耐え切れない一撃はとても強力なものだったのだろう。今はそれが、自らの首を絞める結果になった訳だが。
『ラムフェグの奴は、普通の生物とは違う。まだ倒れはしないだろうぜ。まあ、このダメージは確実に響いてくるだろうがな』
「そ、そうなんだ……」
ラフードは、私にそんなことを教えてくれた。
確かに、あの鎧の体は普通の生物とは思えない。だが、体に大穴が空いてただで済む訳でもないようだ。
それなら、この戦いはフレイグ様が圧倒的有利ということになる。先程までは実力は拮抗していたが、あの傷が勝機を分けるだろう。
「ラフードめ、忌々しいことを……まだ、そんな力を隠し持っていたとは」
『ははっ! この姿になったからといって、いざという時には俺も力を使えるんだよ。というか、それはお前もわかっていたことだろうが』
「ぬうっ……」
ラフードの言葉に、ラムフェグはその目を細めた。
その表情に対して、ラフードは少し驚いたような表情になる。どうやら、彼は何かに気づいたようだ。
『まさか、お前は知らなかったのか? この姿でも力が使えることを……』
「黙れ……この私を見下すな!」
ラムフェグは、かつてラフードと同じく精霊の姿になっていた。
そんな彼が先程のバリアをわからなかったというのは、考えてみればおかしな話だったようだ。
だが、そもそも彼が精霊の姿で力を使えるということを知らなければ、その前提は覆る。ラフードにできたことが、ラムフェグにはできなかったのだ。
二人の間には、差があった。同じ兄弟でありながら、優劣があった。それが、ラムフェグは気に入らないようだ。
『そういうことか……よく考えてみれば、狡猾なお前が気づいていなかったということは、そういうことなんだな』
「私を哀れむような目で見るな、ラフード。貴様のそういう所が、私は一番気に食わないのだ」
ラフードは、ラムフェグに対して少し哀れむような目を向けた。それが、彼にとっては、かなり気に食わなかったようである。
恐らく、ラフードは別に彼を貶める意思はなかっただろう。先程の会話から考えると、ラフードはまだ兄弟の情を捨てきれていないような気がする。それが、そんな表情を引き出したのだろう。
ただ、その目を向けられたラムフェグからすれば、たまったものではないはずだ。その心情だけは、想像することができなくもない。
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