50.見抜かれるやり取り

「ラフードは、俺をずっと見ていたのか?」

「あ、それはそうみたいです」

『ああ、その通りだな……まあ、この姿になってからしばらくは困惑したりしていたから、すぐに見守れていた訳ではないが』

「えっと……すぐに見守っていた訳ではないそうです。彼も、精霊になって困惑したみたいで……」


 フレイグ様の質問に合わせて、ラフードは答えを教えてくれた。

 そんな私の様子に、フレイグ様は少し驚いたような表情をしている。だが、その表情はすぐに笑みに変わった。


「なるほど、そういう風にやり取りをしている訳か」

「え?」

「今、お前はラフードとやり取りしていたのだろう?」

「あ、はい……もしかして、目線が向いていましたか?」

「ああ、ほんの少しではあるが、明後日の方向に意識が向いていたぞ」

「そ、そうですか……」


 フレイグ様は先程言っていた通り、私とラフードのやり取りを見抜いていたようである。

 私としては、ラフードの方に視線を向けたつもりはまったくない。しかし、ラフードが喋るとどうしても自然とそちらに意識が行くのだろう。

 そんな私の些細な動きを、フレイグ様は読み取ったようだ。こういうのは、やはり戦士の勘的なものなのだろうか。


「それで、あいつは俺のことをお前になんと言っていたんだ?」

「え?」

「どうせあいつのことだ。あることないこと吹き込んだのだろう」


 フレイグ様の質問に、私は言葉を詰まらせた。

 ラフードが何を言ってきたかは、よく覚えている。彼は、とても熱くフレイグ様のことを語っていた。

 しかし、それをフレイグ様に伝えていいものなのだろうか。そう思いながら、私はラフードの方に目を向ける。


『お嬢ちゃん、余計なことは言わなくていいからな……』

「え、えっと……」

「あいつはなんと言ったんだ?」

「余計なことは言わなくていいと……」

「ふっ……そうか」


 ラフードも、流石にあれをフレイグ様に伝えられるのは恥ずかしいようだ。

 それはそうだろう。きっと、本人に聞かれるとは思っていなかったので、あんなことが言えたのだ。わかっていたなら、あそこまでは言えなかっただろう。


「だが、あいつは俺のことを聞こえない所であれこれ言っていたのだろう?」

「え? それは……まあ、そうですが」

『いや、別にひどいことは言っていないだろう?』

「で、でも、悪くは言っていませんでしたよ」

「……そうか」


 私の言葉に対して、フレイグ様は笑っていた。

 その笑みは、あまり信用ならないと言っているような気がした。

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