第5話

 その後、思いを伝えあった私たちはトントン拍子で婚約・結婚まで進んだ。

 式は王都の大きな教会ではなく、村を治める伯爵領にある教会で挙げることになった。

 そして、結婚式当日。私たちの結婚式になんと王都から聖女様とそのお相手の神官様、そして魔法使い様に騎士団長様がお祝いしに来てくれた。

 金髪に青い瞳を持つ聖女様は可憐という単語が似合う、儚げな顔立ちのお方だけど話すと結構ズバズバ言う性格で、自分たちも早く結婚したいとぼやいていた。

 アシュトンも隣で「ほら、中身こんなんで全然タイプじゃない」と私に囁いてきて、耳が良い聖女様が身体強化をしてアシュトンに制裁を加えていた。

 そして、どういうわけか聖女様と友だちになってしまった。

 距離が遠いのに連絡を取り合ってはたまに会って聖女様から直々に光魔法を教わっている。

 世界を救った一人なのに村娘の私にも優しくて、光魔法の教授でも「ルーシィは才能もあって物覚えが早いわね」と褒めてくれて嬉しく感じる。


 アシュトンは勇者という肩書きがあるのにただの村の兵士というのは体裁が悪いということで、今は伯爵様の屋敷で騎士として働いている。

 本当は褒賞として貴族になることもできたけど、アシュトンが貴族になるのを断ったからだ。

 その結果、報酬金をたくさん貰い、今は騎士をして働いている。

 結婚した私は、定期的にエーメル村へ行って畑に祈りを捧げながらその珍しい光魔法の使い手として伯爵の長男・サミュエル様の侍女をしている。


「あっー! もうー! またアシュトンに負けたー!!」

「坊っちゃん、まだまだ隙がありすぎますよ」


 そして廊下を歩いていると大好きな人の声が耳を通る。


「あ、ルーシィ」

「アシュトン、またサミュエル様に稽古を?」

「だって坊っちゃんが何回も言ってくるんだよ」

「だからと言って村の頃のように本気はダメだよ? 大人げないよ」

「はい…」


 そして、サミュエル様の方に目を向けるとサミュエル様が私の方へ駆け寄ってくる。


「ルーシィっ! アシュトンったら容赦ないんだよ! ほんとだよ、大人げなくない!?」


 きっと十分手加減しているはずだ。だってアシュトンは魔王を倒した勇者様だもの。

 でもまだ六歳になったばかりのサミュエル様にはよくわからないだろう。


「ねぇねぇ、ルーシィ。怪我治して?」

「坊っちゃん……?」

「ふふ、いいですよ」


 そして、私はしゃがみ込んで、魔法を唱える。


「光よ、どうか癒してください」


 すると金色の光がサミュエル様の怪我を包み込んで癒していく。


「わぁっ……! やっぱりルーシィの魔法すごいや! ねぇ、大きくなるまで待っててくれる? 僕アシュトンより強くなるから!」

「坊っちゃんー?」


 サミュエル様の言葉にきょとんとしてしまうけど、アシュトンの反応を見ると、そういうことか、と理解する。

 ここは申し訳ないけど期待させない方がいいだろう。


「ごめんなさい、サミュエル様」

「ええっ!? なんでさ!?」


 抗議するサミュエル様に苦笑しながら微笑みかける。


「申し訳ございません、サミュエル様。だけど私、アシュトンだけの奥さんですから」


 そう言って私は一番素敵な笑顔を大好きなアシュトンに向けたのだった。

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幼馴染の彼は世界を作った勇者様、私は彼の―― 水瀬真白 @minase0817

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