VIPサービス//エアポート・アンダー・ファイア
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──VIPサービス//エアポート・アンダー・ファイア
東雲たちを乗せた太平洋保安公司の軍用ティルトローター機が逃げるサンドストーム・タクティカルのティルトローター機を追いかける。
『ペンギン・ゼロ・ワンより
『
東雲たちの乗るティルトローター機が司令部と連絡を取り、装備していた短距離空対空ミサイルをサンドストーム・タクティカルのティルトローター機にロックオンした。
『FOX1!』
機体のハードポイントに下げられていた短距離空対空ミサイルが機体から離れ、ロケットが点火してサンドストーム・タクティカルのティルトローター機を追いかける。
『敵機が回避行動を取っているぞ』
『ミサイルが目標をロスト。熱源が消えた。赤外線誘導不可能。さらに機体から全方位のジャミング。アクティブステルスだ、畜生』
太平洋保安公司のティルトローター機が放った空対空ミサイルは目標を見失い、明後日の方向に飛んでいった。
『誘導装置はどれも作動しない。レーダーもノイズだらけだ』
『目視で追いかけるぞ。近接して機関砲を叩き込んでやれ』
『了解』
太平洋保安公司のティルトローター機が加速し、機体下部に装備された口径20ミリ電磁機関砲の砲口を敵機に向けた。
それに気づいたサンドストーム・タクティカルのティルトローター機が回避行動を取る。さながらドッグファイトだ。
『ガンズ、ガンズ、ガンズ』
電磁機関砲が短く火を噴くのにサンドストーム・タクティカルのティルトローター機はギリギリで攻撃を回避した。
『あまり近づきすぎるな。あの機体、近接防衛用高出力レーザーを装備してる』
『クソ。輸送機で輸送機をドッグファイトでもってして撃墜するのは無理だ。こいつは機動性が考えられた戦闘機じゃない』
『仕方ない。追跡に専念しよう』
太平洋保安公司のティルトローター機は敵機の撃墜を諦め、追跡に切り替える。
サンドストーム・タクティカルのティルトローター機はTMCの上空から離れ、地方の空域に入った。TMCの外は開発がほぼ放棄され、インフラはなく、暮らしているのはごく少数の老人や貧困層だけだ。
『TMCから出たぞ。どこに向かってる?』
『韓国か、統一ロシア?』
『流石に航続距離外だろう』
『待て。放棄された地方空港がある。敵の進路はそこだ』
『乗り換える気か』
太平洋保安公司のティルトローター機は追跡を続け、サンドストーム・タクティカルのティルトローター機は地方の運営が放棄された空港に向けて高度を落とし始める。
そこでアラームが鳴り響いた。
「なんだ? どうしたんだ?」
『レーザー照射だ! ロックオンされている! 地上からだ、クソッタレ!』
東雲が尋ねるのにパイロットがチャフとフレアを発射し、回避行動を取る。
機体が大きく揺れ、近くで爆発が生じた。
『地上に地対空ミサイル陣地! また来るぞ!』
東雲たちを乗せたティルトローター機の周りで何度も爆発が生じる。地対空ミサイル陣地から攻撃が行われている。
『
ここで太平洋保安公司の無人戦闘機2機が到着した。
『ペンギン・ゼロ・ワンよりポイントマン・ゼロ・ワン! 地対空ミサイル陣地を攻撃できる装備は持っているか?』
『ポイントマン・ゼロ・ワンよりペンギン・ゼロ・ワン。スタンドオフミサイルを装備。衛星から誘導可能だ』
『ペンギン・ゼロ・ワンよりポイントマン・ゼロ・ワン。それで空港近くの地対空ミサイル陣地をふっ飛ばしてくれ!』
『ポイントマン・ゼロ・ワン。了解。ライフル!』
後方から空対地スタンドオフミサイルが発射され、太平洋保安公司の運営する衛星によって誘導されて地方空港の傍に設置された地対空ミサイル陣地を吹き飛ばした。
『クソ。エンジントラブル発生。電気系統がイカれちまった』
『着陸するか?』
『そうしよう』
東雲たちを乗せたティルトローター機が高度を落とし始める。
「おい。空港に突っ込めよ。俺たちは連中から
『無茶言うな。地上から攻撃されたらどうするんだよ?』
「その時は何とかするさ。とにかく空港に降りろ。いいな?」
『分かったよ、クソッタレ!』
東雲が言うのにティルトローター機が加速し、放棄された地方空港のエプロンを目指して降下していく。
サンドストーム・タクティカルのティルトローター機は既に着陸しており、コントラクターたちが地方空港の滑走路に止まっていた
『敵の電磁ライフルによる攻撃を確認した。使用できる兵装を全て使って叩け!』
『了解! ぶちかましてやる!』
太平洋保安公司の軍用ティルトローター機は電磁機関砲の他に口径70ミリ無誘導ロケット弾を装備しており、それを地上に向けて叩き込んだ。
地上が炎に燃える。
『これ以上は飛行できん! 着陸するぞ! 衝撃に備えろ!』
だが、奮闘も続かず、ティルトローター機はエンジンの電気系統の破損により推力を急速に失い墜落するように地方空港のエプロンに降りた。
激しい衝撃が東雲たちを襲う。
『後は任せたぞ!』
「あいよ!」
後部ランプが開き、東雲と八重野が飛び出す。
『シルバー・シェパードよりスコーピオン・ゼロ・ワン。ゴラン作戦はフェーズ5だ。太平洋保安公司と日本空軍の防空システムをダウンさせる。その間に離脱せよ。猶予は15分だ。急げ』
『スコーピオン・ゼロ・ワンよりシルバー・シェパード。全作戦要員並びに
『シルバー・シェパードよりスコーピオン・ゼロ・ワン。離脱せよ』
サンドストーム・タクティカルが運用する軍用輸送機が4発の強力な電動エンジンで稼働するプロペラを回転させ、滑走を走り始める。
『
『ポイントマン・ゼロ・ワンより
東雲たちの上空に太平洋保安公司の無人戦闘機が現れ、レーザー誘導爆弾を投下していった。空港に爆弾が降り注ぎ、滑走や管制塔が破壊される。
『クソ。滑走路が。離陸をやり直す。アーマードスーツに足止めさせてくれ』
『了解』
放棄された地方空港の施設内から8体のアーマードスーツが現れた。どれもゴースト機だ。無人運用されている。
「飛び立たれたら流石にどうにもならんぞ。離陸する前に乗り込まなきゃな」
「アーマードスーツがいる。あの輸送機の離陸を支援するつもりだ」
「じゃあ、ぶっ壊してやるよ!」
八重野と東雲がアーマードスーツと交戦状態に突入した。
東雲が“月光”を高速回転させて電磁機関砲の砲撃を凌ぎつつ、アーマードスーツの火力を自分に引き寄せる。
「行け、八重野!」
そして、その隙に八重野がアーマードスーツに突撃した。
『警戒! 敵はサイバーサムライだ。可能な限り近接させるな。近接された近接防衛火器を使用せよ。友軍離脱のための時間を稼げ』
ゴースト機を遠隔操作するサンドストーム・タクティカルのコントラクターたちが接近して来た八重野に火力を向けようとする。
「甘い。一閃」
だが、アーマードスーツの動きよりも八重野の動きの方が遥かに早く、アーマードスーツに近接し超電磁抜刀でアーマードスーツを真っ二つに破壊した。
「いい調子だ。この調子でぶっ潰そうぜ!」
東雲も“月光”を高速回転させながらアーマードスーツに肉薄し、至近距離からアーマードスーツに向けて“月光”を投射しようとする。
しかし、東雲の場合は普通にアーマードスーツの近接防衛火器が作動。アーマードスーツから射出されたサーモバリック弾によって内臓が潰れる。
「それぐらいで死ぬかよ!」
東雲は強引に身体能力強化で傷を癒し、アーマードスーツに“月光”の刃を突き立てた。アーマードスーツの制御系が破壊され、アーマードスーツは沈黙。
「スクラップにしてやるぜ!」
東雲が次のアーマードスーツに襲い掛かる。
『
『ポイントマン・ゼロ・ワンより
そこで上空を飛行中だった太平洋保安公司の無人戦闘機が火を噴いた。
『ポイントマン・ゼロ・ツーより
『
もう1機の太平洋保安公司の無人戦闘機は攻撃を避けるために高度を上げ、それを追いかけるようにステルス仕様のドローンが上昇していった。
『東雲。偵察衛星の情報だよ。ステルスドローンが2機、そっちに向かった。けど、このドローンがどこから離陸したのかが分からない。太平洋保安公司と日本空軍の防空システムはダウンしてるし』
「戦闘機に輸送機をどうこうしてもらうってのは無理か」
ロスヴィータの報告を聞きながら東雲がアーマードスーツを撃破していく。
そこでもう1機の太平洋保安公司の無人戦闘機も突如として現れたドローンによって撃墜されてしまった。
『シルバー・シェパードよりスコーピオン・ゼロ・ワン。敵の戦闘機は撃墜した。急いで離陸せよ。既に太平洋保安公司が増援を送り込もうとしてる』
『スコーピオン・ゼロ・ワンよりシルバー・シェパード。すぐに離脱します』
サンドストーム・タクティカルの軍用輸送機が再び離陸アプローチに入り、滑走路上で加速していく。
「クソ! 連中が逃げるぞ!」
「流石に地対空ミサイルでもないとどうにもならない」
軍用輸送機は短距離で離陸し、上空に舞い上がった。
「逃げられた」
「畜生。どうする?」
「どうしようもない。もう太平洋保安公司の無人戦闘機もいないし、日本空軍の防空システムもダウンしているのだろう?」
東雲が地面を蹴るのに八重野がそう返した。
「ベリア。飛行機を調達してくれないか?」
『無茶言わないで。逃げた輸送機については衛星で追跡中。民間航空会社のIDで韓国に向かってる。フライトプランによると仁川国際航空宇宙港が目的地だね』
「韓国か。外国に逃げられたらどうにもできないな」
輸送機は既に上空から姿を消し、飛び去ってしまっていた。
「東雲。ジェーン・ドウから連絡は?」
「ない。そもそも帰りの飛行機もないのにここからどうやってTMCに戻ればいいんだ?」
八重野の問いに東雲が肩をすくめてため息を吐いた。
東雲たちが放棄はされた地方空港のエプロンで途方に暮れているところにティルトローター機のエンジン音が響いて来た。
大井統合安全保障のロゴが入ったティルトローター機が空港上空を旋回したのち、東雲たちの傍に降下してくる。
「あんたらが太平洋保安公司の非正規作戦要員か!?」
「そうだよ!」
ティルトローター機から大井統合安全保障のコントラクターが下りてくるのに東雲がエンジン音にかき消されないようそう叫んで返した。
「あんたらをTMCまで送り届けろって請け負った! それから太平洋保安公司の連中もだ! 乗り込んでくれ!」
「あいよ!」
東雲と八重野、そして東雲たちをここまで運んだ太平洋保安公司のティルトローター機の乗員たちが大井統合安全保障のティルトローター機に乗り込み、ティルトローター機はTMCに向けて飛行する。
「あーあ。
東雲は憂鬱な気分でTMCまでのフライトを体験した。
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