第147話本番前バレは最悪なの


湊視点


 周平の自由にさせるとあまりよくない、と眞子ちゃんに伝えるのを忘れてた。


「うん、今回は三人とも怒ろうかな」

「お手柔らかに・・・」

「弁解も出来ないです」


 二人は後悔も反省もしているから軽めで許してあげよう。


「コンクリの上の正座はめっちゃ痛いんだけど」

「周平は反省の色が無いね。そこにある石でも膝の上に置こうか?」

「このままでいいです」


 今の私はちょっと怒っている。

 文化祭前日、自分のクラスと生徒会も手伝っている私は休む暇なんてない。なのに忙しい真っ只中の放課後の時間に、いつも昼食を食べる中庭のテーブルにいた。

 私の座る反対側には眞子ちゃんと友人君、二人共申し訳なさそうな顔をしている。

 周平はお誕生日席で地面に直で正座させた。

 

 普通なら罰を受けている周平を見にくる生徒がいるはずなのだけど周囲には誰もいない。

準備で忙しく走り回っているから、中庭で正座の男子なんてすぐに知れ渡るはずなのにだ。

 

「周平達のクラスだからなにかやらかすと思っていたけどさ、もう少し大人しく出来ないかなぁ」

「はい・・・」

「マジごめん」

「いや予定では服だけ預かって当日バーンッと驚かせ」

「黙ろうか周平」


 きつめに言うと周平はふてくされる。

 周平達六組の出し物は教室でカフェをすると提出されていた。それは文化祭を運営をする生徒会と先生達にとっては再提出求めなくてすむ良いクラスと普通は判断されるはずのものだ。

 体育祭で具視というお笑い軍団を生みだした六組でなければというのがつけば。


 提出された内容には何も不審なものは見当たらなかったので許可するしかない。ただし梅田先生は尋問され、一年六組には監視体制がついた。

 尋問の結果は学校側からの資金を最低限にするかわりに外部から多めに物資援助を受けるというもの。

 その言葉通り教室の飾り付けなどの資材のグレードが良かった。

 私が周平を強制的に吐かせると閑名家から持ち出したと白状した。確かに友人君がいる時点でそういう面では強い。

 それでも監視されていた六組は一年にしては少し豪勢な飾り付けを作っていたぐらいだった。それは私も見たので間違いはない。

 そこで生徒会も教師陣営も緩い監視に留めることにした。


 私も自分のクラスへの指示と、生徒会では下っ端なので仕事が多くて注意を緩めてしまった、周平の。

 もし私に余裕があったら気づいたろう、だが文化祭の忙しさは体育祭や球技大会の比ではなかった。

 疲れてそういう気も起きないので夜は抱きしめられ寝で我慢したぐらい。

 

 だから、やけに楽しそうな周平は文化祭を楽しんでいるんだなと思っただけで、眞子ちゃんとはスマホでのやり取りで準備期間の二週間を過ごした。

 このときに一回でも眞子ちゃんと会っていれば周平が何かやらすのかわかっただろう。友人君とは違い眞子ちゃんは顔に出る普通の精神を持つ女の子なのだから。


 そして見逃されたやらかしは文化祭前日にしゃれにならない規模でバレることになったのである。

 大量のメイド服と執事服を持たせた人達を後ろに歩いてきた犬耳メイドの校門降臨によって。


「まさか彼氏さんのお力を借りるなんて・・・」


 私達の間では彼氏さん=秋夜姉さんの彼氏、貴光さんになっている。

 隙あらば秋夜姉さんを通してお金の偉大さを教えてくれる超お金持ちの人だ。私の家もそこそこのお金持ちなんだけど、比較にならないほど上のお金持ち。

 そして財布の紐がゆるゆるなお人である。


「周平君が純ちゃんとレオさんに連絡しろって」

「周平が姉貴から貴光さんに連絡をつけろって」


 うん全部周平が原因なんだね。


「周平は誰に連絡したの」

「・・・ショタさん」


 あ~夏休みの旅行の時に名刺貰ったもんね。

 旅行の最終日に純ちゃんとレオさんという記憶に確実に残る二人を短い間で抜き去り強烈な印象を与えた人物が犬耳メイドのショタさんである。

 美少女顔に犬耳メイドだけでも情報過多なのに奴隷と男の娘という上乗せをしてきた化け物へんたいさん。


 二度と会うことはないと思っていたのに、まさか自分の恋人が召喚するとは神様でも驚く案件だ。


 六組が内装のわりに自分達でエプロン持ち込みというのはおかしいはずなのに忙しくて見逃していた。

 周平がショタさんに連絡を取ったのはメイド服と執事服だろう。ショタさんが大量に所持していることを周平はどこかで知ったに違いない。だから借りるために秋夜姉さんから彼氏さんに連絡してもらい、純ちゃんだけでなくボディーガードで近くにいそうなレオさんにの縁を使って彼氏さんを落としたのだ。

 いったい何を交換条件にしたのやら。

 

 なぜショタさんがメイド服と執事服を持っているのを周平が知っているのかは文化祭が終わった後に鳴くまで絞る。


「眞子ちゃんと友人君は加担はしているけど反省しているので無罪・・・」


 嬉しそうにする眞子ちゃんと友人君だけど甘い。


「とはいかないからね。今から教室に戻って事態の収拾をするように」

「「ううっ」」


 校門に現れた犬耳メイドショタと服を持った集団は最初は教師が止めていたのに、校長が出てきらすんなり通されて一年六組の教室に向ったらしい。

 その後は準備している生徒達に見られまくりなので、現在六組教室前の廊下には生徒の山だかりが出来ていた。

 犬耳メイドがいたら見たくなるよね、わかるけど出店をするクラスや部は間に合うのかの瀬戸際のはず。泊まりは許可出来ないので早く自分の現場に戻ればいいのに。


「二人だけでは無理だろうから副会長には出て来てもらうようにするから、あと梅田先生は?」

「教室までそのショタさんを案内して、その対応でてんやわんやしているかと」

「服のサイズ合わせと着付けの為に来てくれたらしい」


 まあ教室まで案内する人は必要だろうし、校長が指示したのかな。うん、絶対に校長もこの一件に噛んでいるよね。

 あとショタさんは善意で来てくれているのか~。それなら普通の恰好で来てくれればいいものを。

 私も見たいけどね、生徒会室に連絡がきてそのまま三人を呼び出したから。うん、六組に行く犬耳メイドなんて原因は三人の内の一人・・・ではなく周平とすぐにわかったけどさ。


「眞子ちゃんは副会長が来たときに強引にでも教室に入って中をどうにか落ち着かせて」

「普通に犬耳メイドに喜んでいたんですけどウチのクラスメイト・・・」

「おかしいのかな?おかしいよね六組」


 具視で耐性がついたのかな?適応能力が凄すぎる。


「それでも間に入ってあげて、早く終わって帰ってもらわないと学校全体の混乱は収まらないから。友人君は副会長について廊下の生徒達に威圧して、副会長の言葉にヤジを飛ばすバカには容赦なんてしなくていいから」

「マジで?そいつしばらく使いものにならなくなるかもしれないぜ」

「いいのいいの、時間がないのをわからない奴なんて役に立たないから」


 なんなら気絶させたほうが場は収まるかもしれない。来年は生徒会で友人君を臨時で雇えないかな、要検討にしよう。

 二人は現場に小走りで向かってくれた。

 連絡をマメにとれば大丈夫だと思う。

 こちらこちらでしないといけないことがある。


「さて周平」

「・・・違反はしてないはずだ」

「うんしてないね。ギリギリだけど」

 

 私と目を合わせないのはやり過ぎたかなぐらいは感じているからだろう。


「服の没収は受け入れるようにクラスの連中を説得するから、文化祭の参加停止だけは勘弁してやってくれ」

「ん?そんなことしないよ」

「え?」


 まあ今廊下にたむろっている生徒を解散させようとしている先生達はそういう考えはあるかもしれないけど。

 別に周平達は違反はしていないのだから参加停止なんてつまらなくなることするわけないじゃない。あと私は生徒会の下っ端だからそんなこと出来ないから、しようと思えばできるけど。


「校長先生にこそこそ裏で許可取ったでしょ?」

「あ~うん、ノリノリで許可してくれた。お礼にカロリーオフのノーマルクッキーしたけど」


 最近よくクッキー焼いていたから紛れ込ませていたね。

 よし片方から言質は取った。

 

「校長先生がショタさんを校内に迎え入れた時点で罰則なんてないから」

「ならなんで俺は正座させられているんだ・・・」

「それは学校中を混乱させた罪です。うん、生徒会室に情報が伝わった時の会長の顔を見て欲しかったね。前に謝罪行脚して大人しくするという約束は周平の頭の中のどこにいったのかな?」

「・・・ショタさんが来なかったら当日サプライズで済んだのよ」

「それは聞いたよ。それでも会長は泣くかな」

「土下座で許してくれるかなぁ」

「楽しくなって忘れてたね」

「うん・・・」


 少し落ち込む正座の周平。

 周平の悪癖というか人はテンションが上がると羽目を外すことがある。周平はたまにしか外すことは無いけどその規模が大きすぎるんだよね。

 あと私が傍にいない時だけしかならない、それが彼の素なのかなと寂しく思うけど愛してくれることに集中しているともいえるから心情的には複雑だ。


「じゃあ今から周平は説明と謝罪に行こうね」


 だけどそれとこれは別です。

生徒会と職員室には行かないと混乱はまだまだやって来る。

 犬耳メイドというのは高校生には刺激が強すぎるので先生達にも動いてもらわないと明日の本番に中途半端な展示物、半壊したように見える出店、背景がない演劇なんて会長が真っ白な灰になっちゃうから。


「いやそれは、ほら俺がいないとショタさんの対処が」

「大丈夫大丈夫、眞子ちゃんも鍛えられているし、いざとなったら友人君も動くだろうし。どうにもならなかったら秋夜姉さんに電話すればいいから」


 そのくらいは姉も対処してくれるはず。しなかったら彼氏さんに苦情のメールでも送ってあげよう。


「私も付いて行ってあげるから、あと校長先生も同じ戦犯だから怖くないよ」


 え?という顔をしないの。


「校長先生が先生達にだけでも話をしておけば対処はいろいろと出来たの。裏門からこっそり入ってもらい人気が少ない教室を開放したりとかね」


 はい立って立って。


「あ、ひ、待てっ待ったっ!足が痺れてっ、はぁっ」

「このあと職員室で校長先生と二人で正座だし、生徒会室でもしてもらうよ。六組に伝えたいことがあるなら私が眞子ちゃんに連絡するからね。帰るまでは正座してもらうので」

「それ足が死ぬふぅっ」

「私と一緒に帰るから一番最後まで残ろうね」


 それくらいはしてもらう、生徒会は完全にギリギリまで居残りになったのだから。校長も同罪です。是非とも先生達に怒られてください。


 まったく私に止められると思ったのか、忙しいから遠慮したかのかはわからないけど一人だけのけ者されたのはちょっと怒っているのです。だから痺れたままで歩いてもらおう。

 強引に手を引くと、はうっや、死ぬぅっとか涙目で悶える周平。

 珍しくて良いものだ・・・うん、最近は夜によく見ているかも。



ーーーーーーー

周平&校長「「お、お、お、お、」」

湊「はい周平は生徒会室に移動して正座でチェック係をしようか」

先生ズ「校長は今回の後始末が終わるまでは帰れませんから」

周平&校長「「死ぬふっ!」」


なるべくあっさり終わって文化祭にいきます(*´∀`)

準備期間なんて書いても、ただただ周平が楽しんでいる話なので面白くないのでどっかにぶん投げです!(ノ`△´)ノ┻━┻

恋愛じれじれがほとんどない物語なので、具視にしか頼れない筆者・・・(´-ω-`)


削除したのを見られた方はわかられるでしょうがショタの登場はなくなりました。うん、あれをだすとそのあとを書くのが難しいです(-_-;)

直接出てないのにショタは全校生徒を混乱の渦に落とし込みました。あと何名か性癖を変えさせて退場です( ̄▽ ̄;)


文化祭でちゃんとラブコメしますよ!

まだぼや~としか考えていませんが(ノ´∀`*)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る