第76話試験勉強中の周平の所業
眞子視点
「はい試験は今日で終わりですよ。解放されて浮かれる気分でしょうけどそのまま制服で遊びに出かけたらダメですからねっ。遊ぶなら一度自宅に帰って着替えてからですよ、そうすれば生徒指導も八時まではできませんからね」
「「「はーい」」」
梅田先生の注意というか、普通に抜け道を教えるのが凄いと思う。バッハハーイと大きく手を振って教室を出ていくのは年齢はいくつなんだろう?たまにお父さんが言っているんだけどまさか・・・。
「お疲れー」
「あ、お疲れ様」
ちょっと梅田先生の年齢について考えていたら周平君が私の席にやって来た。
「眞子様のおかげでなんとか乗り越えられました。これはお礼の品でございます」
へへーと周平君はバッグの中からすごく綺麗にラッピングされた袋を出して私に差し出してきた。たぶんラッピングは湊ちゃん作。
「うむ、ありがたくいただきます」
少しだけ横柄にして貰う。普通に礼を言ってもらうとそうじゃないだろうという顔をされてしまうのだ。このグループはノリに微妙に厳しいのである。
うん正解みたい。周平君は満足そうな顔をしている。
放課後に試験勉強を教えていたんだけど周平君毎日お菓子を持ってくれたんだよね。それも全部手作りで美味しいの、女子として劣等感を抱きました。
「今日のは?」
「ちょっと奮発自家製ドライフルーツでございます。甘味が足りないときように粉砂糖も別途でいれておりまする」
少し言語がおかしくなりかけているよ。
「「ドライフルーツッ!?」」
「しかも自家製だとっ!」
ざわりと周囲の女子達が騒ぎ出した。
周平君が持ってくるお菓子、私は密かにカロリー減シリーズと呼んでいるのだけど、最初は私に対する地味な嫌がらせ?とも考えた。湊ちゃんに連絡したら普通に周平君が最近はまっているだけみたいでホッとする。もし私の為とかなら戦争です。暗にされると屈辱ですから。
そして遠慮なくいただいていたんだけど、それをダイエットに敏感な女子達が気づかないはずがなかった。試験勉強する私達三人の周囲に一日ごとではなく十数分ごとに増えていく女子。少し恐怖でしたね。
男子二人は気づかないで勉強するから私が対応することになったんだけど、女子達全員周平君の作るお菓子に興味があったみたい。
「私達はそのお菓子に興味がある」
「是非ともレシピがほしい」
「そのためなら科目ごとに勉強を教えることも可能」
「本人には興味なし」
「だってクラスで№2におかしい奴は無理」
「あと彼女が穂高さんだし」
「あのプロポーションは彼氏の時東君のおかげっ!?」
「「「是非ともレシピをっ!」」」
と周平君には教えてはいけない悲しい現実があって、クラスメイトが嫉妬の女神様にジュッされないよう湊ちゃんに連絡。レシピ公開は周平君に書かせて渡すこと勉強を教えるのは不可、でも周平君に興味が無いのはムカつくと返信が返ってくる。そのあと合流したときに凄く愚痴られた。
そして周平君は毎日試験勉強前にお菓子のレシピを書いて私に渡し、私が女子にレシピを渡すという変な関係が作られる。
私はクラスの女子と仲良くなり、周平君は女子に主夫と裏で呼ばれるようになった。男子にもそのあだ名は広まったみたいで同情されていることを周平君本人は知らない。湊ちゃんには私から伝わっている。凄く嬉しそうだった。湊ちゃんの感覚がたまにわからなくなるよ。
「湊に言われたから一応レシピ書いたけど眞子さん作るの?」
「え、ええこう趣味が停滞したときに気分転換に」
周平君がレシピを書いた紙を渡してくれる。言えないこのまま女子にこの紙が渡されることを。そして試験中は簡単お手軽カロリー減シリーズを作ったせいで周平君は主夫神様と呼ばれるようになったことを。
私の友達はカップルで神様になったみたいです。
「ふーん、そのレシピ食器洗浄乾燥機があればもっと簡単だから、設定で洗浄を止めないと酷いことになるけど」
彼女は入学式に、彼氏は日々爆弾を落としていくのはどうなものか。ほら女子がメモ取り出したよ。洗浄は止めないと悲惨なんてあとで読んだら絶対にわからないと思う。
「ところでその隣の干物は?」
周平君が私の隣の席を見ます。
「一応、敗残兵にならなかった残骸です・・・かね?」
仕方なく隣を見ると、そこには真っ白に燃え尽きた白目の友人君が机に突っ伏してました。魂が口から出てますね。色が黒そうですが。
「朝まではなんとか生きてたよね?昼までの間にここまで死にかけるとは・・・おお友人よ死んでしまうとは情けない。所持金の半分で生き返らせてやるがどうする?」
さすが友人君の親友ですね。心配しかけていたのが鞭打ちに変化している。
「記憶力を使う地理が最後にきたのが致命的だったみたいですね」
私が教えるのですから平均点以上は取ってもらわないと。昨日は放課後だけでは足りなかったから湊ちゃん宅で追加で補習もしました。鬼ぃ!と叫ばれましたけど、私はギリギリまでクオリティを高めるタイプなんです。印刷所にデータを送る六時間前に後半部分を全て書き直したのはいい思い出ですよ。
だから友人君には頑張ってもらいました。現在死にかけ・・・というより死んでいますけど。
「俺の説教より効果あるんじゃないか?これからは眞子さんに友人を任せて・・・」
「いやいや、反省させることは出来ませんからね。私もいろいろ忙しいですから試験勉強限定で」
私に問題児を預けようとしないでください。ここ最近は趣味の方が溜まってきていますから余裕はそんなにないんですよ。
「お前ら・・・頑張った俺を褒めたりできないのか・・・」
ググッと体を持ち上げていく友人君。生きていたみたいですねチッ。
「いや俺の今回のテスト眞子さんのおかげで良さそうだし」
「私は全教科80点は超えますよ」
地頭はいいんですから毎日予習復習すればいい点数を取れる人が一夜漬けみたいなことをしていて褒めたいとは思えません。
「ひでーよー、姉貴がいないから俺一人でジジイの相手をしないといけなかったのにこの仕打ちだなんて・・・」
あーまだ秋夜姉さん帰ってきてないんですね。彼氏さんに拉致されたところまでは湊ちゃんに聞きましたけど、私の事で起きたことなので連絡取ってないんですよ。あとで湊ちゃんに聞いてみましょう。
「男が落ち込んでも何の得にもならん。さっさと元に戻れよ。このあとお前要望したカラオケに行くんだろうが」
「いや、あと十分待ってくれない。マジで体がきつくて」
周平君が友人君を立たせようとする。
テスト明けでカラオケに行こうということになっていた。でもテストが午前中で終わって午後からはフリーです。そんなに急がなくても。
そう思っていると廊下から大勢の女子の声が聞こえてくる。
「馬鹿野郎、お前がカラオケとか言ったせいでテンションが上がりまくったみな・・・」
ガラララッ!
「さあっカラオケに行こうかっ!」
勢いよくドアを開けて、大人数の女子を連れた満面の笑みの湊ちゃんが私達の教室に入って来た。
「・・・頑張らなくても満点を取れる湊が体力全開でやって来るんだよ」
天を仰ぐ周平君。
なるほど天才の彼女を持つと苦労するんですね。
ーーーーーーー
眞子「例のアレです・・・」
クラスメイト女子「ありがとう。報酬は」
眞子「いえ、私のものではないてすから」
クラスメイト女子「なら貸し(菓子)一つずつで」
少し周平の料理を使いすぎ・・・(;´д`)
普通、普通の青春を書いていこう!
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