第39話友人にバレた!


「どうして月曜日の朝の太陽は忌々しいんだ」


 友人が呻く。


「言うなよ。俺まで嫌になってくるだろう」


 ああ嫌だ嫌だ。廊下に差し込んでくる太陽の光が気持ち悪い。

 昨日は四人で遊んで楽しかったこともあって更に嫌になる。


「おはようございます。友人君、周平君」


 下駄箱から一番遠い場所にある自分達の教室へ向かっていると眞子さんに出会った。

 爽やかな顔で近づいてくる眞子さんは俺達みたいにダルそうにはみえない。おそらく人間として俺達より数段上の存在なのだろう。


「「ウィース」」


 俺達はだらしない挨拶をする。


「あれ?湊ちゃんは一緒じゃないんですか」

「湊は今日は日直で先に行きました」


 湊は俺にベッタリのようでもそこら辺はキッチリしているんだよね。些細な誤差で済ますところをさり気なくこなすのが先生に評価され、同級生に好印象を持たれるコツらしい。

 好きでやっているなら俺は止めはしない。


「・・・二人とも顔が死んでますね。遅くまで起きていたんですか?」


 身長差でこちらを下から覗き込んでくる眞子さん。


「俺は昨日取って貰った刀が結構出来が良くて見てたら、原作を読みたくなってそのまま朝までコース」

「ああ、よくあることですね。私も本を読んでたらアニメも見たくなって全話見ますから」


 なー、ねーと賛同している二人よ。昨日の俺達と別れる前より仲良くなってますね。友達として仲良くなったの?それとももう一つの方かな?


「周平君の方は・・・」

「ノーコメントで」


 今回は黙秘だ。たとえノーコメントを腐に使用されようと言えません。


 映画で湊を泣かせていい雰囲気になったのを、そのままバタ〇アン2を見せてぶち壊しにしたなんて。

 怖がって抱きついてくる湊が可愛いなぁと悦に浸っていたなんて言えるわけない。

 その後、怖がる湊に添い寝したなんてバレたら何を描かれるかわからない。


「周平君、女はしたたかなんですよ。湊ちゃんはホラー映画は苦手みたいですけど、それを逆手に取るぐらいわけないです」

「何で知ってるー!」


 どうやら一緒に寝る前に湊は眞子さんにSNSで情報を流していたようだ。

 あと添い寝は策略だったのか!

 この怖がりやめ、と可愛く思ったのを返してくれ!


「女性も友達同士そういう話は結構するんですよ。手を出さない周平はヘタレ、が昨晩の最後に送られてきたやつですね」

「止めて、眞子ちゃん止めて下さい。周平のHPがゼロ以下になって灰になってます。このままだと風にのってバカップル菌が世界中にばら撒かれることになっちゃう」


 友人よかばうのか、馬鹿にするのかどっちかにしてくれ。


「いやぁ、おかげで昨晩は創作活動がはかどりまして一睡もしてないんですよね」


 照れる眞子さんはお肌がツヤツヤだ。

 俺達とは異なる栄養を補給しているのだろう。腐タミンや同人化物とか謎物質を。


「思い出した!周平てめぇ、勝手に俺の出演許可を売ってやがったな」


 いきなり友人が怒り始めた。


「何を言っているんだこの馬・・・あ、まさか!」


 眞子さんを見ると苦笑した。


「友達になってさすがに黙っているのは心が痛んだので、送ってもらった時に参考資料を友人君に渡したんです。出演許可を周平君にオッケーしたことも教えて」

「おおぉう」


 俺の楽しみがもろくも消え去った。


 友人は興味のある事には無駄に知識をため込んでいくが、興味の無いことには全く手を出さない。

 現時点で友人の頭の中や部屋を見た限りでは腐や同人、コスプレなどのオタク系の影はなかったのだ。


「いつかバラシて大笑いするつもりだったのに・・・」

「さすがに私も罪悪感があったので湊ちゃんに相談したら、普通に友人君に教えればいいんじゃないって言ってくれて」

「身内に裏切り者がいたか・・・」


 湊は俺に賛同してくれていると思ったんだがな。親友が悩んでいたからあっさり裏切ったんだろう。


 企みが潰えたことを嘆いていると、友人にガシッと顔をアイアンクロ―された。


「で、お前の事だ。大笑いするだけじゃなかったんだろう?吐け、吐いたら少しは温情を与えてやる」

「待て!お前のアイアンクロ―はシャレになってない。ミシッてなってる!ミシッて!」


 この中身ゴリラめ!アイタタタやばい、少しずつ力が加わっている。


「さーん、にー」


 短けえよっ!言い含めることを考える暇もない。中途半端な嘘は長年友達をしているのですぐばれてしまう。正直に言うしかなかった。


「ぐぐっ、お前の同人誌を作ってもらってお前の姉さんに十部ほど送ってどうなるか楽しみにしていました」

「それ俺が姉貴に殺されるだろうがっ!」

「周平君、流石にそんなことに私が描いたのが使われるのは・・・」


 友人は怒り、眞子さんはドン引きだ。


 ジュースを奢ることで解放されました。なぜか眞子さんの分もだが、迷惑をかけたかららしい。


「で、読んだ感想は?」

「私も聞きたいです。一応、男性向けも渡しましたから」


 興味がないものを読んだ友人にどう変化が起こるか興味がある。眞子さんも同志ができるか興味津々だ。


「あー読んでる漫画のもあって面白かったと思う。でも今の所は食指が伸びんな」

「そうですか・・・」


 友人の反応は興味が無いだった。

 眞子さんは同志が出来なくてがっかりしている。


「いや、今の時点でだぞ。そのうち興味が湧くかもしれないし」

「・・・期待しないで待ってます」


 落ち込んだ眞子さんに言い訳する友人。

 

 これは少しは脈ありなんじゃないか。

 興味が無いことにはどうでもいい態度をとる友人にしては珍しい光景だ。

 あとで湊に話してみよう。


 三人で廊下を移動していると、我らが担任のミニマムティーチャー梅ちゃん先生が前方を歩いていた。



ーーーーーーー

周平「ああ、暇潰しがひとつ減った」

湊「周平は結構友人君に酷いことするよね」

周平「信頼しているからできるんだよ(嘘)」

友人「俺も我慢の限界はあるからな」

アイアンクロー

周平「ギャアァァ!」

眞子「二徹になっちゃう♪」


おかしい・・・梅ちゃん先生の話だったはずなのに、キャラが勝手に動くとはこのことか!Σ( ̄□ ̄;)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る