第三十話 腹パンVSビギナー狩り④

「言ったはずです。オズ様を……馬鹿にしないでください!!」


 と、そんなことを言うミーシャ。

 彼女はビギナー狩りの一人の顔面を鷲掴みにし、ダンジョンの壁へと深く減り込ませている。


 パッ。


 と、ビギナー狩りの顔面から手を離すミーシャ。

 けれど、よほど深くめり込んだに違いない——ビギナー狩りは壁にめり込んだままだ。


「あなた達もオズ様を笑いましたよね?」


 と、残り二人のビギナー狩りに振り返り、そんなことを言うミーシャ。

 その直後。


「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!」


「コ、コロサレ……コロサレル!!」


 と、壁にめり込んだ仲間を放置し、全力といった様子で逃げ出すビギナー狩り二人。

 だがしかし。


 ドッ。

 ドッ!!


 と、聞こえてくる鈍い音二つ。

 同時、ダンジョン内に吹き荒れる疾風。

 

 消えた。


 またしてもビギナー狩りが消えた。

 それも今度は二人同時にだ。


(ま、まさか……)


 と、オズは周囲を見回す。

 するとオズの後ろ、やや離れた場所——。


「これに懲りたら、もう二度とオズ様の悪口は言わないでください!」


 と、そんなことを言っているミーシャ。

 彼女は両手にそれぞれビギナー狩りの顔面を鷲掴み……それをダンジョンの壁へとめり込ませている。


 要するに瞬殺だ。

 

 対人戦だからと心配していたが。

 蓋を開けてみれば、またしてもミーシャの圧勝。

 これはもうスキル『腹パン』のおかげだけとは言えない。


(ミーシャには才能がある! 戦闘時は戦闘時で、スイッチを入れ替えるように好戦的で、そして時には非情なれる天性の才が!!)


 行ける。

 ミーシャとなら、『魔王の迷宮』の奥深くまで、共に踏破していける確信がある。


 などなど。

 オズがそんなことを考えていると。


「お、オズ様……どうしましょう!!」


 と、ミーシャのそんな声が聞こえてくるのだった。

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