第十八話 新たなる希望

「ぅ……あっ」


 と、オズは瞼をゆっくり開ける。

 すると見えてくるのは、知らない天井——状況的に、どこかのベッドに寝かせられているのがわかる。


(窓からの光源的に、時間帯は夕方くらいか。っていうかどこだ、ここ? 俺はいったいどうなったんだ?)


 寝起きのせいで、いまいち頭が働かない。

 けれどそれでも、徐々にオズの頭はまわりだす。


(そうだ。思い出してきた。たしか、俺はゴブリンの攻撃が直撃したせいで気絶したんだ)


 我ながら情けない。

 以前ならば、ゴブリンなど攻撃させる暇など与えず倒すことができたのだから。


 などなど。

 オズがそんなことを考えていた。

 まさにその時。


 ガチャ。


 と、聞こえてくる扉が開く音。

 きっと、この部屋の主に違いない。


(というか、もうだいたい誰かは想像できるけどな)


 そんなことを考えながら。

 オズはゆっくりと上半身を起こす。

 すると同時。


「あ、オズ様! もう起きていたんですね!」


 と、聞こえてくるミーシャの声。

 彼女はオズの方まで歩いてくると、そばにあった椅子へと座る。

 そして、彼女は心配そうな様子でオズへと言ってくる。


「体の調子はいかがですか? 勝手ながら、わたしがヒールをさせてもらったのですが……」


 言われて気がついた。

 そういえば、体に痛いところもなければ、件の毒で麻痺した様子もない。

 故にオズはミーシャへと言う。


「いろいろ確認してみたけど、すごいな……正直、過去一番で体の調子がいい」


「ほ、本当ですか!」


「あぁ。それに触った感じ、ゴブリンに殴られた頭の怪我とかこれ、痛みどころか傷すら残ってないみたいだけど」


「はい! 頭の怪我は見た目よりも危険だと聞いたことがあるので、強めにヒールをかけさせてもらいました!」


 と、簡単な様子で言ってくるミーシャ。

 だがしかし、これは全く簡単なことじゃない。


(一日も経たずに毒を完全に浄化し、頭部の怪我を傷も残さず治した……)


 王直属のヒーラーでもできるか怪しいレベルだ。

 故にオズはミーシャへと言う。


「ヒーラーとして相当な練度と見たけど、ひょっとしてどこか有名なパーティーのヒーラーさんだったりする?」


「あ、いえ!」


 と、手をパタパタ否定してくるミーシャ。

 彼女は照れた様子でオズへと言ってくる。


「実は訳あって、小さい頃からずっとヒール能力だけを鍛えているんです……なので、ヒールには自信があります、けど」


「けど?」


「ヒール以外は何もできないんです。戦闘に使えるスキルなどを取っていなくて……」


「なるほど、それで」


 と、オズは納得する。

 その理由は簡単だ。


 通常、ミーシャほどのヒーラーならば、攻撃魔法も使えるはずなのだ。

 ヒーラーであっても、一人でモンスターと対面するときはある。

 その時の保険というわけだ。


 けれど、ミーシャは攻撃魔法をとっていない。

 その分も回復魔法の強化に努めたに違いない。


 要するに、いわゆるピュアヒーラー。


 攻撃魔法がないのなら、ゴブリンに負けるのも納得がいく。


 などなど。

 オズはそこまで考えたところで、重大なミスをしていたことに気がつくのだった。

 それは——。


「本当にごめん、お礼がまだだった。怪我を治してくれてありがとう、それにわざわざ俺を運んでくれて助かった」

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