第九話 とりあえず生きてみる

 あれから数週間、オズはゴミのように過ごしていた。

 起きては食べ、そしてまた寝る。

 考えることは、どうやって死ぬかばかり。


 だがしかし。

 それも今日までだ。


 時は早朝。

 場所はパンデモニウム——冒険者ギルド前。

 オズがここに来た理由は簡単。


(俺は『魔王の迷宮』を踏破することを夢にしていた。だけどそもそも、冒険者という職業にも憧れを持っていたんだ)


 冒険者はなにもダンジョンを踏破するだけの職業ではない。


 古きは未開拓の地を地図から無くし。

 そして、遅いくる魔物や災厄から人々を守る。


(そうだ。ダンジョンに潜れなくても、冒険者って職業までも諦める必要はない)


 話が前後したが。

 オズがここにやってきた理由は簡単。


(死ぬくらいなら、人の役に立つことを少しでもしろ……それこそが、俺の憧れた冒険者ってもんだ)


 要するに。

 オズは今の自分でもできる仕事——クエストを探しに来たのだ。


(モンスターの討伐は無理でも、薬草の採取や希少鉱物の採取——出来ることはいくらでもあるはずだ)


 今日までそんな簡単なことに気がつかなかったのは、やはりショックだったのだ。


 マイナススキルのせいで、ダンジョン探索を諦めなければならないことも。

 ライルやランカ達と、あの様な形になってしまったことも。


(出来たなら……二人と仲直りくらいはしたかったな)


 などなど。

 オズはそんなことを考えたのち、冒険者ギルドの中へと入っていくのだった。

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