44話-side② 過去渡り
【…邪魔するの?アタシのこと】
ヨリコはどす黒い瘴気を引っ込めるどころか、ますます膨らませていく。
【手がかりがなくなるって言ってるだろ?中核を破壊すれば、キョーコたちが帰ってくる経路がなくなるかもしれない】
【…!!】
幕生は言葉を交わし終わった瞬間、ヨリコの喉笛に黒剣を突き刺し、地面に縫い付けるように固定した。
彼女が握っていた女の霊の中核が手から離れると、幕生は無そのものの表情でその玉を拾う。
(外れない…!こいつ、どれだけ力込めてるの…!?)
ヨリコは黒剣を引き抜こうとするも、ヨリコですら振りほどけない強い霊力…いや、怒りによる呪力のようなものが込められていて一切の動きが取れない。
【なあるほどね…】
怒気を通り越して殺気を隠すことなく、幕生は自分で壊してはいけない、と言った女の中核を握りつぶして粉々の砂粒に変えた。
そして、ヨリコに突き刺した黒剣を引き抜き、拘束を解除する。
【アンタ、手がかりだからって…!!】
大鋏を構え、ヨリコは幕生に大振りで斬りかかる。
【こいつ、傀儡だよ。多分キョーコとお前の相方は、過去に飛ばされてる】
ガキィン…!と金属同士がぶつかり合う音が、河川敷に響いた。
だが、幕生の言葉でヨリコの頭に上っていた血が少し引いたようだ。
喉に空いた穴を修復し、流れる血を左手で拭って幕生を見る。
幕生の表情も、完全に消えている。
それは彼の怒りが沸点を超えていることの証明に他ならなかった。
伊上を一人にしたこと。ヨリコにとって植志田から目を離したことと同義だ。
霊に好かれたものは、同時に敵対する者にも目を付けられる。
その重大さを、二人は忘れていた…いや、知らなかったのだ。
【過去に…飛ばされてるって…マジ?】
【この女自体は、ただの地縛霊。誰かに<改造>されてるんだよ。霊体が在るから、そこに上乗せした…】
【霊体の改造って…そんなこと可能?そもそも干渉してはいけない領域じゃん】
幕生が言葉にしたのは、あの女は<改造>された霊体であるという、ヨリコからしても信じがたいことだった。
しかも女は地縛霊。ならばなおさら、その存在であることに固執しているのだから、他者からの改造行為など不可能に近い。
【<時渡り>…お願いできる?ヨリコ】
【どの時代に飛ばされてるか分かってんの?】
【…1985年、8月1日。時間は午後14時ちょうど】
ヨリコが持っている力の中で、異質なものがある。それが『時渡り』だ。
彼女だけは、時間の壁を乗り越えて、過去未来・行きたい場所へ行くことができる。
なんのマイナス効果もない、いわゆるチート能力だ。
(アンタの霊圧だと、ちょっと歪みが発生するかもだけど…)
【わーったし!さっさと行くよ、■■■■!!】
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